ボーイング929

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テンプレート:Double image aside ボーイング929 (Boeing 929) は、米国ボーイング社によって開発された水中翼船。旅客用はジェットフォイル (Jetfoil) という愛称を持つ。

構造

水中翼船としては全没翼型に属し、が全て水中にある。ガスタービンを動力としたウォータージェット推進である。

停止時および低速では通常の船と同様、船体の浮力で浮いて航行し、「艇走」と呼ばれる。速度が上がると翼に揚力が発生し、しだいに船体が浮上し離水、最終的には翼だけで航行する、「翼走」という状態になる。

船体の安定は Automatic Control System(ACS、自動姿勢制御装置)により制御された翼のフラップにより行われる。進行方向を変える場合もフラップを使うため航空機さながらに船体を傾けながら旋回する。翼走状態では、水面の波の影響を受けにくく高速でも半没翼式水中翼船に比べ乗り心地がよい。

翼は跳ね上げ式になっており、停止・低速時の吃水を抑えることができる。また半没翼型と異なり翼の左右への張り出しもないため港に特別の設備なしに着岸できる。また翼にはショックアブソーバーが付いており、材木など多少の障害物への衝突に耐えることができる。

姿勢制御はACSと油圧アクチュエータに依存するので、推進用のタービン共々、航空機なみのメンテナンスが必要である。

歴史

ファイル:PHM-3.jpg
軍用929(米海軍のペガサス級水中翼ミサイル艇の三番艇トーラスPHM-3)

航空機メーカーであるボーイングがその技術を水上に対して適用する研究を始めたのは1962年頃で、当初は軍事目的であった。1967年にパトロール用の小型艇が実用化された。これがベトナム戦争で有用であったため、その後NATOの依頼によりミサイル艇が開発された。このときに929の型番となった。

これを基に旅客用が開発されたのは1974年である。型番は929-100型となり、ジェットフォイルの名前もこのとき付けられた。ボーイングとしては初期型929-100型を10隻、前方フォイル及び乗船口付近の改良を施した929-115/117型を13隻、軍用の929-320、929-119、929-120型5隻の合計28隻を製造した後、ライセンス川崎重工業に提供し、1989年に日本製1号艇が就航した。現在は川崎重工(神戸工場)に全面的に移管されており、川崎ジェットフォイル929-117として製造されている。川崎重工では1989年から1995年までに15隻が製造された。ボーイング、川崎重工の両社で旅客型として製造されたジェットフォイル(軍用-320型からの改造1隻含む)は29隻にのぼる。

同じくボーイングのライセンスを基にイタリアフィンカンティエーリ社が建造して1983年に就役したイタリア海軍のスパルヴィエロ級ミサイル艇は海上自衛隊の目を引き、住友重機械工業がライセンスを受けて1993年-1995年1号型ミサイル艇を3隻建造している。

また、日本国内の定期航路に本格的に投入されたのは佐渡汽船新潟港 - 両津港間航路で、1977年のこと。当時国内ではメンテナンスが困難だったことから、佐渡汽船の整備担当者はボーイングで長期研修を受けてメンテナンスのノウハウを学んだ。その後川崎重工がジェットフォイルのライセンスを得た際には佐渡汽船からもノウハウの提供を受けている。また運航開始当初、新潟港が河口部にあるという構造上、水と共にごみなどの異物・浮遊物を吸入して運航不能となるトラブルが頻発したことから、ボーイングは急遽社内に対策チームを設け、吸入口に特殊な構造のグリルを設置する対策を講じた。これが奏功して異物吸入のトラブルは減少し、その後製造されたジェットフォイルの設計にも反映された。

水中翼は頑丈ではあるが、2002年1月に神戸港-関西国際空港間航路(神戸マリンルート)での復路出発後に船底に穴が開き、沈没寸前に至る事故が発生している。原因は公表されていないが、当時は空港連絡橋が閉鎖される程の悪天候であった。この事故が直接の原因ではないが、同航路は慢性的な乗客低迷に伴い同年休止・廃業された。(2006年に神戸-関空ベイ・シャトルとして事実上復活しているが、高速双胴船で運用されている。)

海上浮遊物への対策が採られているものの、衝突事故が数回起きている。1992年1995年には新潟-佐渡間航路で、2004年末ごろからは、福岡-釜山間航路(対馬海峡)においてクジラと見られる生物に衝突、前部水中翼が破損して高速航行が不能になる事故が数回発生している。2006年4月9日には、屋久島-鹿児島間航路の佐多岬沖合で流木に衝突、100名以上の重軽傷者を出す事故が起きている。このような事故後は運航会社ではシートベルトを着用するよう乗客に促していた。特に佐多岬沖の事故後は、国土交通省から事業者に対して見張りの強化やシートベルトの着用を徹底するよう指導されている[1]

諸元(旅客用・ジェットフォイル)

  • 速度: 約45ノット(時速約83km)
  • 航続距離: 約450km
  • 船体材料: アルミニウム合金
  • 全長: 27.4m
  • 水線長: 23.93m
  • 全幅: 8.53m
  • 吃水: 5.40m(艇走状態でストラットを完全に下げた時)
  • 吃水: 1.83m(艇走状態でストラットを完全に上げた時)
  • 型深さ: 2.59m
  • 総トン数: 267トン
  • 純トン数: 97-98トン
  • 旅客定員: 約260名
  • 機関: アリソン501-KF ガスタービン×2基(2767kW×2)
  • 推進器: ロックウェルR10-0002-501 ウォータージェット×2基

主な定期航路

日本国内を結ぶ航路

航路(寄港状況)や船舶運用の詳細は、各社項目などを参照。

日本と国外を結ぶ航路

日本国外

  • 香港 - マカオ
    • 船名 : 水星、木星、土星、金星、銀星、鐵星、東星、錫星 、天皇星、帝皇星、海皇星、幸運星、帝后星
    • 運航会社 : 信徳中旅船務管理
    同社による高速旅客船網は「TurboJET」(噴射飛航)と呼ばれている。

脚注

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参考文献

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関連項目

外部リンク

テンプレート:Commons category

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  1. 2009年9月には種子島久海域に流木900本が大量に漂った為、トッピー及びロケットが全便欠航する事態も起きている。http://canyon.air-nifty.com/forest/2009/09/post-8d7f.html
  2. 種子屋久高速船が開業 2社統合、安定経営誓う - 南日本新聞 2012年4月23日閲覧。