シュトラッセンのアルゴリズム
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シュトラッセンのアルゴリズム(Strassen algorithm)は、行列の積を高速に計算するアルゴリズムである。通常、n×n行列同士の積を計算するにはO(n3)の時間が必要だが、このアルゴリズムを用いると、<math>O(n^{\log_2 7}) \approx O(n^{2.807})</math>の時間で計算できる[1]。1969年、フォルカー・シュトラッセン(Volker Strassen)が開発した[1][2]。
便宜上、nを偶数と考えて、以下のようにn/2×n/2部分行列に分解する。
- <math>
\begin{pmatrix} C_{11} & C_{12} \\ C_{21} & C_{22} \\ \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} A_{11} & A_{12} \\ A_{21} & A_{22} \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} B_{11} & B_{12} \\ B_{21} & B_{22} \\ \end{pmatrix} </math>
そして、以下の七つの行列をつくる。
- <math>P_1 = (A_{11} + A_{22})(B_{11} + B_{22})</math>
- <math>P_2 = (A_{21} + A_{22})B_{11}</math>
- <math>P_3 = A_{11}(B_{12} - B_{22})</math>
- <math>P_4 = A_{22}(B_{21} - B_{11})</math>
- <math>P_5 = (A_{11} + A_{12})B_{22}</math>
- <math>P_6 = (A_{21} - A_{11})(B_{11} + B_{12})</math>
- <math>P_7 = (A_{12} - A_{22})(B_{21} + B_{22})</math>
このとき、
- <math>C_{11} = P_1 + P_4 - P_5 + P_7</math>
- <math>C_{12} = P_3 + P_5</math>
- <math>C_{21} = P_2 + P_4</math>
- <math>C_{22} = P_1 + P_3 - P_2 + P_6</math>
の関係が成り立つ。
この関係を利用して計算すると、部分行列同士の乗算が、通常の方法では8回必要なのに、この方法では7回ですむようになり、計算時間が削減される。部分行列への分割を再帰的に行うことにより、さらに計算時間を削減することができる。
脚注
テンプレート:Reflist- ↑ 1.0 1.1 テンプレート:Cite book
- ↑ Strassen, Volker, Gaussian Elimination is not Optimal, Numer. Math. 13, p. 354-356, 1969