シャムシール
シャムシール (شمشیر shamshīr) は、刀剣の一種。中近東に見られる、わずかに曲がった細身の片刃刀。
名称
「シャムシール」とは英語のソード (sword) などと同じく、本来ペルシア語で「刀剣」を意味する普通名詞であり、名称そのものに刀や剣、刀身の曲がりなどの形状についての意味は有しない。アラビア語のサイフ (سيف sayf/saif)、マフムード・カーシュガリーの『テュルク語集成』などに見られるセルジューク朝時代からイルハン朝時代にかけての中央アジアから中東一帯のテュルク語ではキリチ(قليج qilič)や、チャガタイ語、オスマン語ではクルチ (قليچ qïlïč)(現代トルコ語ではクルチ (kılıç) も、本来は刀剣一般を、通常は曲刀を意味する。
ペルシア語で「ライオン ( شير shīr) の鉤爪 (sham)」を意味するといわれるが、語源俗解である。日本語の文献で「獅子の尾という意味を持つ」と説明される場合があるが、これは誤りである。
エジプトやアラビアなどではシャムシール、西洋ではシミター(scimitar)と呼ばれ、西洋のサーベルなどに影響を与えたといわれる。
これら曲刀を意味する各国語は、新月刀、半月刀、偃月刀(偃月は半月と同じ)などと和訳されることがある。ただし、偃月刀は本来は中国の曲刀で、シャムシール等とは形状もやや異なり頑丈なつくりをしている。
歴史
パルティア語やパフラヴィー語(中期ペルシア語)でいう「シャムセール」 šmšyl / šamšēr の近世ペルシア語形で、サーサーン朝時代は直剣であった。アッバース朝以降の刀剣もおおむね直剣であった。
『集史』などの絵画資料や考古学の研究からセルジューク朝やモンゴル帝国(およびイルハン朝)などテュルク・モンゴル系の遊牧戦士の刀剣の影響で、この地域の刀剣は現在のような曲刀になったと考えられている。
形状
非常に刃の薄い湾曲した片刃の刀身を持ち、その先端の角度は15度から30度程となる。
柄頭は小指側にカーブを描いており、獅子の頭になぞらえられる。