サルバルサン
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サルバルサン (Salvarsan) は歴史的な梅毒治療薬のひとつ。名称は救世主を意味する "Salvator" と、ヒ素を意味する "arsenic" から取られており、ドイツのIG・ファルベン社の商標登録である。
ドイツのパウル・エールリヒと日本の秦佐八郎が合成した有機ヒ素化合物で、スピロヘータ感染症の特効薬。毒性を持つヒ素を含む化合物であり副作用が強いため、今日では医療用としては使用されない。
発見の経緯
1910年、エールリヒと秦は共同で、同薬をアニリン系色素から合成し、動物実験により梅毒の病原菌であるトレポネーマ (Treponema pallidum) に有効であることを証明した。これは合成物質による世界最初の化学療法剤で、後に鼠咬症・ワイル病・イチゴ腫に対しても有効であることが確認された。
性質・製法
淡黄色の粉末状固体で、組成式は C6H6AsNO、式量は183.04である[1]。
フェノールを出発物質として3-アミノ-4-オキシフェニルヒ素とし、これを還元することで合成される。
構造
従来はヒ素-ヒ素の二重結合を含む上図Aのような2量体構造であると考えられていたが、ヒ素は二重結合を作りにくいことが知られており、この構造式には疑問が持たれていた。2005年に上図BやCのようなヒ素3員環や5員環を含む多量体構造が正しいとの説が発表された[1]。生体内では酸化されて分解し、単量体として作用することが知られている。
参考文献
テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflistテンプレート:Pharm-stub
テンプレート:Asbox- ↑ 1.0 1.1 Lloyd, N. C.; Morgan, H. W.; Nicholson, B. K.; Ronimus, R. S. (2005). "The Composition of Ehrlich's Salvarsan: Resolution of a Century-Old Debate". Angew. Chem., Int. Ed. 44: 941–944. テンプレート:Doi