サブリース
サブリース(sublease)とは、又貸し、転貸のことである。特に不動産賃貸においては、転貸を目的とした一括借上(いっかつかりあげ)のことを、サブリースと言うことが多い。
概要
サブリースとは物件を一括賃借し(マスターリースともいう)、それを分割またはそのままの規模で第三者に転貸する事業形態である。物件の所有者が運用ノウハウ、運用体制をもたない場合などに、サブリーサーにフィーを支払って運営代行を委託し、サブリーサーは自社の持つノウハウ、人員を用いて物件を円滑に運営する。
一括借上
一括借上とは、不動産会社が大家(オーナー)から土地・建物・付帯施設をサブリースで借り上げ、運営・管理を一気に引き受ける賃貸システムである。住居系不動産、事業系不動産それぞれ特色があるが、ここでは主に住居系不動産のサブリースについて述べる。
オーナーが賃貸物件を営む場合、収益は入居している部屋の分の家賃しか入らないため、空き物件が多かったり家賃滞納が多いと経営がおぼつかなくなってしまう。また、賃借人に対してのトラブルや対応なども行なわなければならず、管理面についても煩わしさがつく。一方、不動産会社も独自に賃貸物件を建てる場合、土地を購入した上で物件を建てなければならないため土地購入や建物建設・資産税などの税金など多額の費用がかかる。そこで、オーナーが不動産会社に土地や建物などを託して管理を行ってもらうとともに、不動産会社から一定の保証金(賃料の80% - 90%程度)を得るという仕組みが出来上がった。つまり、オーナーには後述のようなメリットがあり、不動産会社は土地購入や建物建設などの負担が軽減されるわけである。
大手不動産会社のほとんどが、このシステムを導入している。
オーナーにおけるメリット
- 不動産会社が一括管理してくれるため、知識がなくとも賃貸物件を建てる事ができる。
- 賃借人に対しての対応は全て不動産会社が行なうため、オーナーが対応しなくてもよい。
- 空室があっても空室分も保証され、オーナーに支払われる。
- 賃借人の原状回復は不動産会社または提携・管轄する管理会社側が責任を持つ。
一括借上における問題点
- 一括借り上げの条件として不動産会社が指定した建物を建築する必要がある。
- 建物管理、修繕などについて不動産会社が指定した業者、仕様となる場合がある。
- 転借人の審査は不動産会社が行うため、外国人など生活習慣の違う賃借人が入居すると地域住民とトラブルとなる場合がある。
- 賃料は必ずしも長期間一定ではない。(詳細は後述)
- 転借人(=借上げ会社)は近年の人口減少、大都市への移転などで急速に空室、家賃下落が起きており、これを避けるため5年毎に見直す条項を入れており、超長期(10~15年)の家賃保証を避ける体制をとっている。
- 家賃保証の場合は、実家賃(実際入居者が支払う家賃)と転貸家賃(オ-ナ-から一括借上げる家賃)の差額(保証料)は、10~15%であるが、転貸開始後数年(3~4年)で空室発生が激しく、家賃を下げざるを得ずこの差額が逆転するケ-スが発生している。このため後述のオ-ナ-と借上げ会社との見直しでトラブルが多発しているが、殆どオーナー側が譲歩せざるを得ない場合が多い。
- 「長期一括借上げ方式」のビジネスモデルで、アパート専業会社が大きい利益を上げたため、他のハウスメーカーや建設会社などが一斉にこれに参入したため、人口減少の中でアパートの乱立が激しく、既存のアパートの空室率は年々高くなり、特に、地方の物件は空室50%以上も珍しくない。
- 大手専業会社も、「一括借上げ方式」は利益を大きく上げていなく、利益の80%は建物の建築で大きく利益を稼いでいる。(上場会社のセグメント情報で実態が判る。)
オーナーが不動産会社から受け取る金額は賃借人が支払った賃料から不動産会社の手数料、管理費などを差し引いた金額を保証賃料として、一定金額を支払う。 また、建物が竣工して引き渡された当初の2 - 3か月間は家賃収入が不安定であることから募集期間とされ、この期間内はオーナーに対して保証賃料が支払われない。(免責期間)
不動産会社の中では、「家賃10年保証」など賃料が長期にわたり固定されると謳われている場合があるが、周辺環境、経済環境の変化などを理由として不動産会社、オーナー双方、賃料の減額、増額を要求することができる。これは借地借家法32条1項に定められており、最高裁判例(金融法務事情1700-88、2003年10月21日判決)でも示されているものの、現実的には値上げ、値下げともによほど大規模の物件でない限り裁判の費用対効果を考慮すると双方にメリットが無く、貸主、借主協議の上で据え置きとなるケースも多い。