サブスタンダード船

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

サブスタンダード船(さぶすたんだーどせん、テンプレート:Lang-en-short)とは、SOLAS条約などの国際条約に定められた基準を満たしていないのことである。

SUMMARY OF PORT STATE INSPECTION DATA
BLACK LIST
[1][2]
Flag
(2004-2006)
Rank
悪い順
Flag
(2010-2012)
Rank
悪い順
テンプレート:Flag 1 テンプレート:Flag 1
テンプレート:Flag 2 テンプレート:Flag 2
テンプレート:Flag 3 テンプレート:Flag 3
テンプレート:Flag 4 テンプレート:Flag 4
テンプレート:Flag 5 テンプレート:Flag 5
テンプレート:Flag 6 テンプレート:Flag 6
テンプレート:Flag 7 テンプレート:Flag 7
テンプレート:Flag 8 テンプレート:Flag 8
テンプレート:Flag 9 テンプレート:Flag 9
テンプレート:Flag 10 テンプレート:Flag 10
テンプレート:Flag 11 テンプレート:Flag 11
テンプレート:Flag 12 テンプレート:Flag 12
テンプレート:Flag 13 テンプレート:Flag 13
14 テンプレート:Flag 14
15 テンプレート:Flag 15



概要

不十分な装備が原因で、しばしば座礁海難事故を引き起こすことから国際的に問題視されており、日本でもポートステートコントロール(PSC)を行い、外国船舶監督官による立入り検査改善を指導しているが、いまだに多くの船が改善されないまま世界中の海を航行している[3]

サブスタンダード船は基本的に2種類のカテゴリーに分類される。

  • 国際条約を満たすように建造された船舶であるが、古くなり適切な維持管理をおこなわないため鉄の構造部分が腐食したり、修理が必要な箇所がある、又は機器が作動しなくなった船舶や、既存船であっても満足しなければならない新しい規則を満足していない船舶。
  • 国際航海に従事しないため国際条約を満足するように建造されていない内航船が外売や外国籍に登録された後に、国際航海をする船舶。輸出許可を受けた後、又は船の国籍が変わった後に、国際条約に満足するような工事や艤装を行わずに出港という形で事実上のサブスタンダード船となる。[4]

過去に日本の内航船が日本の税関から輸出許可を受けた後に、日本の港から出港し日本の領海内で座礁し放置されたケースが多々ある(放置座礁外国船)。税関、海上保安庁、及びポートステートコントロール(PSC)の協力が必要であるが、根本的解決に至っていない。

サブスタンダード船は船舶が登録されている国及び船舶に証書を発給する検査会社と深い関係がある。この2つでサブスタンダード船である可能性が高いか判断できる。


問題

サブスタンダード船とはサブスタンダード船だけでなく、サブシッピングを行う海運会社に運航される船舶も含まれると考えられる。船舶に問題がなくとも、運航する会社や操船する船員の教育、経験及び訓練に問題があれば海難を起こす可能性が高いからである。

造船所には「ドック入りの時には、船級協会や船籍国政府の検査を受けて合格しないと、『船級』が維持できずに、船体保険や貨物保険が掛けられなくなる。稀に船級を持たないまま運航する船があり、これらは『サブスタンダード船』と呼ばれ、海難リスクの高い船として注意が払われる[出典 1][出典 2]。」とされている。

船舶油濁損害賠償保障法の改正後、国際船級協会連合以外の検査に問題がある検査会社が発給した証書でも保険(P&I)を受ける保険会社が現れ、『サブスタンダード船』であっても保険に加入できるようになった。しかし、このような船が座礁した場合、放置されたり、撤去がスムーズに行われないケースが起きている[5] 放置座礁外国船問題として困っている自治体も存在する[6][7]


中古売船後、日本から出港した放置・座礁

「日本船籍船以上に厳しい条件を外国船に対して求める場合が多い。特に中古船輸出のPSC検査では輸出通関の直前まで日本で有効な検査証書を具備していた船舶であっても、PSC検査では問題船として改善命令が出される場合が多く、ダブルスタンダードが問題視されている。」[8]と記載されているが、これは国際航海に従事する船舶に要求される国際条約を理解していない人達の間違った意見である。中古船を「国際航海に従事する船舶として建造された外航船」と「国際条約が適用されない海事六法[9]の規則で建造された内航船」と区別して判断するべきである。区別しないでダブルスタンダードとして問題視している人間達は、原付きの免許で免許を持っているのになぜ大型バイクに乗れないのかと主張しているのと同じである。問題船として改善命令が出される元日本船籍船は、非国際内航船と判断される。海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)[10]から判断しても問題があることがわかる。国際航海に従事する船舶が守るべき国際条約の基準を満たしていない内航船が外国籍船外航船として登録された時点で、国際条約に定められた基準を満たしていない、つまりサブスタンダード船となる。

非国際内航船

  • 非国際日本船籍内航船SOLAS条約などの国際条約を満足しない。よって、基本的に日本国内海域内のみ航行できる。しかしながら特別な協定が韓国と結ばれているのか、非国際沿海区域及び限定近海区域を運航できる内航船は韓国へ行ける[11]。日本では船舶の航行する水域を「平水区域、沿海区域、近海区域、遠洋区域」の4つに区分している[12]。平水区域のみしか運航できない日本船籍内航船は船舶に係る設備・構造の基準や船体の強度及び水密を保持に問題があるので国際航海は出来ない。そして沿海区域[13]又は/及び限定近海水域図[14]のみしか運航できない日本船籍内航船は指定された水域以外の国際航海には従事できない。よって限定近海水域以内のみ航行できる日本船籍内航船が有効な検査証書を具備した船舶であっても目的地が外国の港(韓国やロシアの一部を除く)であれば国際航海となり国際条約を満足しないサブスタンダード船となる。[15]
  • 非国際日本船籍内航船SOLAS条約で要求される無線設備(GMDSS)の問題がある[16]。無線設備(GMDSS)にはお金がかかるので船が運行される区域で要求される無線設備以外は設置しない。(GMDSSのA1+A2+A3をカバーしている無線設備を搭載した非国際内航船は存在しない。電話と同じように電話機だけあっても契約しないと使えないようにアカウントを開設しないと使えない無線機器もある。アカウントを開設しても無線機器を再設定しないと使えない。
  • 非国際日本船籍内航船に対して発給されるトン数証書の総トン数は日本トン数の数値であるが、国際航海に従事する船舶が保持するトン数証書の総トン数は国際トン数である[17]。国際トン数証書は「1969年の船舶のトン数の測度に関する国際条約(ITC)」[18]に従って算出される。日本の総トン数499型内航貨物船の日本トン数が499トンであれば、国際トン数では1,000トンを軽く超える。国際条約の要求は基本的に国際トン数の数値で決まる。よって総トン数が499トンである内航船は外国船籍になった時点で、国際トン数1,000トン以上の船舶として国際条約の要求を満たす必要があるのでサブスタンダード船となる。[19][20][21]
  • 外国人が乗船することを想定されて建造された外航船とは違い、非国際日本船籍内航船の計器、計器のマニュアル、そしてその他の書類には日本語が使用されている。多くの外国人船員は日本語が理解できない。外国人船員が元非国際日本船籍内航中古船を操船して外国の港に行く場合、外航船と比べて人的要因に係るソフト面での安全対策や船舶の安全運航に関して問題が起きる可能性が高い。[22][23]

ポートステートコントロール:Port State Control (PSC)

中古売船後に日本から出港した放置座礁外国船のほとんどはPI保険に加入していなかった。PI保険に加入していても問題のある船舶との理由から海難後に保険会社が支払いを拒否したケースもあった[24]。平成22年12月23日に宮崎市折生迫で座礁したベリーズ船籍浚渫船「豊栄」に対して改正船舶油濁損害賠償保障法で要求される保障契約証明書が北海道運輸局から発給されたが2014年1月現在も放置されている[25]。 これらの問題はポートステートコントロールが上記の問題及びサブスタンダード船問題に対して適切に対応していれば防止出来たケースもある。しかしながら過去の対応が甘かったのか、素人に対する説明不足のために、PSCの「ダブルスタンダード」として問題視されているようである[26]。沿海区域又は/及び限定近海水域図のみしか運航できない日本船籍内航船が外国籍船となった時点でほぼ自動的にサブスタンダード船となる。サブスタンダード船であることを理由に保険会社が支払いを拒否すればPI加入している証明である保障契約証明書が発給されても意味をなさない。つまり放置されるリスクがある。ポートステートコントロール放置座礁外国船及びサブスタンダード船問題改善のために中古売船されて出港する前に元日本船籍内航外国船を検査する必要がある。寄港国政府として外国船籍船を検査する権利は国際的に認められている。国際条約を満足しない元内航船を簡単に出港させて、船が座礁して放置されたら船が登録されている国や所有者が悪いと非難しても、船が放置された場所の地方自治体が困るだけである[27][28]。座礁船の撤去費用を考えると国際航海に必要な最低限の装備にかかる費用は非常に小さい。しかしこの最低限のコストをかけないために管理・監督が甘いブラック・リストとして公表されている便宜置籍船国に中古船を登録するのである。結果としてポートステートコントロール が検査に来なかったり、検査を行っても検査が甘い場合には、サブスタンダード船の状態で出港して座礁し、放置されるのである。

便宜置籍船国との関係

TOKYO MOUPARIS MOUでブラック・リストとして「The Annual Report on Port State Control」に公表されている便宜置籍船国に登録されている船舶はサブスタンダード船である確率が高い。[29] これはブラック・リストの便宜置籍船国が海洋法に関する国際連合条約:1982 Convention on the Law of the Sea (UNCLOS)の第94条 旗国の義務を順守していない結果である。[30]

国際条約や規則を守らずに船を運航するために管理・監督が甘く海洋法に関する国際連合条約を順守していない便宜置籍船国を船主が選ぶため、特定の便宜置籍船はサブスタンダード船である確率が高く、海難を頻繁に起こす。国際条約を満足しないだけでなく、犯罪にも使用される確率が高い。










MOU及びPSC


脚注

テンプレート:Reflist


出典

  1. 池田良穂著 『船の最新知識』 ソフトバンク クリエイティブ(株) 2008年11月24日初版第一刷発行 ISBN 9784797350081
  2. 池田良穂著 『船のすべてがわかる本』 ナツメ社 2009年2月9日発行 ISBN 9784816346408


サブスタンダード船の写真


関連項目


外部リンク

IACS、サブスタンダード船に厳しく 2000-2-22 日本船主責任相互保険組合


テンプレート:Ship-stub
  1. ANNUAL REPORT ON PORT STATE CONTROL IN THE ASIA-PACIFIC REGION 2006(TOKYO MOU)
  2. ANNUAL REPORT ON PORT STATE CONTROL IN THE ASIA-PACIFIC REGION 2012(TOKYO MOU)
  3. 問題船舶の規制をめぐる動き―国際条約の改正を中心に― ISSUE BRIEF NUMBER 438 (Feb.25.2004) 国立国会図書館
  4. 元日本籍内航船サブスタンダード船 サブスタンダード船
  5. 放置船 サブスタンダード船
  6. 座礁貨物船撤去されず 青森・深浦の海岸放置9ヵ月 2013-12-16 河北新報
  7. 「国にも撤去責任」 座礁船放置で宮崎市漁協が損賠提訴 2013年10月25日 宮崎日日新聞
  8. ポートステートコントロール
  9. 実用海事六法 成山堂書店
  10. 1974年の海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約) 国土交通省
  11. 内航海運の危機と構造転換 限定近海水域図 OPRF 海洋政策研究財団
  12. 満載喫水線規則等の一部改正について 国土交通省
  13. 沿岸区域図 国土交通省
  14. 限定近海水域図 国土交通省
  15. 内航船舶を海外で運航させる際の法令の遵守について 国土交通省 神戸運輸監理部
  16. SOLASの安全・救命設備 サブスタンダード船
  17. 船舶のトン数の測度に関する法律 日本財団図書館
  18. International Convention on Tonnage Measurement of Ships IMO
  19. 内航船舶を海外で運航させる際の手続き 国土交通省 神戸運輸監理部
  20. 内航船舶を海外で運航させる際の法令の遵守について 国土交通省海事局検査測度課登録測度室 国土交通省
  21. 「国際総トン数」について 国土交通省
  22. (1)外航海運の安全対策 ~ISMコードの導入~ 国土交通省
  23. 第4節 船舶の安全性の確保 内閣府
  24. パナマ船籍の「マリナ アイリス」の事故は偶然か?? サブスタンダード船
  25. 「国にも撤去責任」 座礁船放置で宮崎市漁協が損賠提訴 2013年10月25日 宮崎日日新聞
  26. ポートステートコントロール
  27. 「国にも撤去責任」 座礁船放置で宮崎市漁協が損賠提訴 2013年10月25日 宮崎日日新聞
  28. 放置座礁船問題への取組み(運輸政策研究機構ホームページ)
  29. The Annual Report on Port State Control TOKYO MOUウェブサイト
  30. PART VII HIGH SEAS (The United Nations)