コバルト60

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テンプレート:Infobox 同位体 コバルト60は、コバルト同位体の一種である。放射性同位体であり、半減期は5.27年である[1]。医療用、工業用のガンマ線源として利用される。

生成

コバルト59(普通のコバルト)の原子核が1個の中性子を捕獲することにより、コバルト60の原子核となる[1]

ガンマ線源として利用されるコバルト60は、コバルト59に原子炉で中性子を照射することにより人工的に生産される[1]。主な生産国はカナダである[2]

崩壊

ファイル:Cobalt-60m-decay.svg
コバルト60の崩壊図

コバルト60は、ベータ崩壊をしてニッケル60になる[3]。このとき放出されるベータ線のエネルギーは0.318 MeVである[3]。そして、崩壊生成物のニッケル60がガンマ崩壊をして1.17 MeVと1.33 MeVの2本のガンマ線を放出する[3]

<math>\mathrm{^{60}_{27}Co \longrightarrow\ ^{60}_{28}Ni\ +\ e^-\ +\ \gamma}</math>

事故

身元不明線源となったコバルト60が鉄屑に混入してリサイクルされ、一般人が被曝する事故がしばしば起こっている。台湾では、コバルト60の混入した鉄屑から鉄筋が生産され、その鉄筋を使って建てられた台北市および周辺の鉄筋アパートの住民らが被曝したことが1992年に発覚した[4]。約1万人が1983年以降に年平均20ミリシーベルト被曝し、平均累積線量は400ミリシーベルトであった。その後20年の調査で住民約1万人のがん死亡率が激減したことが報告されたが、台湾国立陽明大学による詳細な調査(2008年)では、がん発症の減少傾向は観察されなかった[5]。タイでは、2000年に、廃品処理場にコバルト60が放置され、廃品処理場の作業員や近隣住民が被曝した[6]。メキシコとアメリカ合衆国では、1983年から1984年にかけて、コバルト60を含む医療機器が盗まれてスクラップ業者に売り払われ、鋼材に再生される過程で、数千人以上が被曝した[7]。2012年にはブリヂストンサイクルが販売した自転車の中国製前カゴから微量の放射線を検出。ステンレスに、コバルト60が混入されていることが分かり、リコールが行われた[8]

参考文献

  1. 1.0 1.1 1.2 古川路明「放射能ミニ知識 コバルト-60(60Co)」『原子力資料情報室』(2011年4月20日閲覧)
  2. カナダ型重水炉(CANDU炉)」『原子力百科事典ATOMICA』(2011年1月更新、2011年4月20日閲覧)
  3. 3.0 3.1 3.2 四本圭一「工業用Co-60γ線照射装置の設置」『放射線利用技術データベース』(1999年10月13日作成、2011年4月21日閲覧)
  4. 放射能探知システム」『原子力百科事典ATOMICA』(2007年7月更新、2011年4月20日閲覧)
  5. コバルト60が鉄筋に混入したアパート住民の健康影響調査」『原子力技術研究所放射線安全センター』
  6. タイ王国におけるコバルト60による放射線被ばく事故」『原子力百科事典ATOMICA』(2003年1月更新、2011年4月20日閲覧)
  7. メキシコ/米国におけるコバルト60で汚染された製品による市民の被ばく」『原子力百科事典ATOMICA』(1999年3月更新、2011年4月20日閲覧)
  8. 重要なお知らせ-「自転車用ステンレス製バスケット」無償交換のお知らせブリヂストンサイクルホームページ 2012年12月2日閲覧

関連項目