クラインの壺
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クラインの壺
クラインの壺(くらいんのつぼ、テンプレート:Lang-en)は、境界も表裏の区別も持たない(2次元)曲面の一種で、主に位相幾何学で扱われる。
ユークリッド空間に埋め込むには4次元、曲率0とすると5次元が必要である。3次元空間には通常の方法では埋め込み不可能だが、射影して強引に埋め込むと、自己交差する3次元空間内の曲面になる。その形を壺になぞらえたものである。
ドイツの数学者フェリックス・クラインにより考案された。クラインの管、クラインの瓶とも呼ばれる。この通称は英語に翻訳する際の錯誤によるものである。原語であるドイツ語では「Kleinsche Fläche(クラインの面)」であり、これが英語に翻訳される際、Fläche(面)がFlasche(瓶)と取り違えられ、bottleと訳された。現在ではドイツ語圏でも、Kleinsche Flascheのほうで定着している。
クラインの壺は正方形の対辺を矢印の向きが合うように貼り合わせることで得られる(下図)。
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前述のように3次元空間内に実現するためには自己交差が必要であるが、クラインの壺そのものに交差はない。そのことを強調するために自己交差の部分をぼかして図示されることがある。
表裏の区別を持たない2次元曲面には他にメビウスの帯がある。メビウスの帯が2次元のテープ状のものをひねり表をたどっていくとそのまま裏に行き着くようにしたのに対し、クラインの壺は3次元のチューブをひねり内部をたどると外部に行き着くようにしたものである。また二つのメビウスの帯をそのふちに沿って貼り合わせるとクラインの壺ができる(上の図で、ここで示した順序とは逆に、青いほうの辺を先に貼り合わせるとメビウスの帯になる)。
関連項目
- クライン体 - クラインの壷を境界として持つ3次元多様体。
外部リンク
- テンプレート:MathWorld
- 参考画像
- The Adventures of the Klein Bottle - 小さな壺のアニメーション、壺の中を車で走る。フェリックス・クラインによるオリジナルの描写。ベルリン自由大学での製作。
- トーラス・ゲームズ - 「トーラス」「クラインの壺」「射影平面」のそれぞれで、上下左右が繋がった面上で遊ぶことができるゲーム・ソフト(日本語)。四角形の上下の辺と左右の辺を、向きを揃えてつなげるとトーラスに、片方を逆向きにつなげると(上図参照)クラインの壺になる。どちらも逆向きにすると射影平面になる。
- 浅田彰『構造と力』の《クラインの壺》モデルは間違っていない ~ 一トポロジストの異論 - クラインの壺を巡る思想家の論争に対する数学者・菊池和徳からの反論、2002-03-28