カニムシ

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カニムシは、節足動物門鋏角亜門クモ綱カニムシ目に属する動物の総称である。触肢が大きな鋏となる。ほとんどは数mm程度以下の小型の虫である。[1]

特徴

四対の歩脚、一対の状の触肢を持ち、体は円筒形、楕円形で、頭胸部腹部の間がくびれない。全身の外形は、しっぽのないサソリという感じである。 カニムシの目立った特徴は、よく発達した、鋏の形の触肢である。大きいものでは体長と同じくらいの長さがあり、先端近くには感覚毛がはえている。この鋏を前方に延ばしてそろそろと歩き、何かにぶつかると、鋏を体に引き付けて、すっ飛ぶように後退する。その姿が印象的なためか、”アトビサリ”等の別名がある。

中には鋏角から糸を出せるものがあり、それを用いてを作る。

外部形態

体は大きく前体部と後体部に分かれる。前者が頭胸部、後者が腹部に当たる。両者の間には、はっきりした節はあるが、狭まらない。

頭胸部はおおよそ長方形から三角形の背甲に覆われる。その前方側面にがある。眼は単眼で、本来は2対あったものらしいが、現生種では、1対のもの、無眼のものも多い。腹面には独立した胸板がない。頭胸部の腹面は、触肢と歩脚の基部によって占められ、左右のそれが正中線で合わさっている。

体の前端には鋏角がある。鋏角は2節で、鋏を構成する。鋏は縦に動き、第1指(固定指)は背面側、第2指(可動指)は腹側にある。大きさは様々で、ツチカニムシ類では頭胸部とほとんど同長なくらいに大きいが、他のものでははるかに小さい。鋏角には毒腺と紡績腺があるものが多いが、その位置は様々である。

触肢はよく発達した鋏になり、この動物のとても目立つ特徴となっている。触肢は左右に広がり、その先で前に曲がって、先端に大きな鋏を持つ。この鋏には、長い感覚毛があり、これを触角のように用いると同時に、獲物を捕獲するのにも用いる。この触肢には毒腺があり、捕えた獲物を麻痺させる他、性的二形があり、雌のものが大きいとも言われるが、その差は大きくない。

触肢の後方には四対の歩脚が配置する。前の二対は前を、後方の二対は後ろを向く。その構造は前二対、後ろ二対がそれぞれに似ていて、いずれも後方の方がよく発達している。

腹部はほぼ卵形で、12節からなるが、最後の体節は腹面に曲がって肛門周辺を構成する。背面と腹面は、それぞれに独立した背板と腹板に覆われるが、それぞれが正中線で左右に分かれるのが普通。生殖腺は腹面の第2節に開く。

内部形態

消化系は、から肛門に至る管であるが、その側面に伸びる腸腺が最も大きい。その先端は鋏角の間に開き、その最前方は口前部といわれる。その中に真の口が開く。その内側に咽頭があり、そこから後方に細い食道が続く。その後方で左右に広がる腸腺がある。腸腺はキチン質の裏打ちがあって、左右に分かれて後方に伸び、さらに外側にいくつもの膨らみを持つ。腹部の背板の下は、ほぼこの腸腺に占められる。この後方には、細い小腸が伸び、体内で一度折り返して前に伸び、さらにもう一度折り返して、肛門に続く。

神経系は、前体部に大きな集中部があり、これは食道上神経塊と食道下神経塊からなる。

呼吸系としては、気管系があり、その開口である気門は、腹部前方の特定の体節にある。クモ綱に広く見られる書肺はこの類では存在しない。

排出器としては、基節腺、腎嚢などがある。

生息環境

カニムシは、主として土の中に生息する。やや大柄なものは、石をめくればその裏面にいるのが見られる。小型のものは、野外で採集するのはほとんど不可能で、土壌動物を採集するための装置が必要になる。イソカニムシは、海岸性の大型種で、岩礁海岸潮上帯で、岩のすき間や割れ目の間に住んでいる。

鋏が目立つことでもわかるように、捕食性の動物であり、より小型の動物、トビムシなどを餌にしている。土壌動物としては、密度はさほど高くないが、重要な肉食者である。餌を求めて歩くのではなく、鋏状の触肢に獲物が触れるまで待つ。

出典

  1. 以下、全般的には内田監(1966)、p.61-90.による。

参考文献

テンプレート:参照方法

  • 内田亨監修 『動物系統分類学』第7巻(中A)「真正蜘蛛類」、中山書店。

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