カッシーニ (探査機)
テンプレート:宇宙機 カッシーニ (Cassini-Huygens) は、アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)によって開発され、1997年に打上げられた土星探査機である。
カッシーニは、金星→金星→地球→木星の順にスイングバイを行なって土星軌道に到着した。カッシーニには惑星探査機ホイヘンス・プローブ (2.7 m、320 kg) が搭載されており、タイタンでカッシーニより切り離されてタイタンに着陸し、大気の組成・風速・気温・気圧等を直接観測した。
カッシーニとホイヘンスよりなる土星探査はカッシーニ・ホイヘンス・ミッションと呼ばれ、欧米18カ国の科学者約260人が参画している。
カッシーニの名は、天文学者ジョヴァンニ・カッシーニに、ホイヘンスの名は同じく天文学者クリスティアーン・ホイヘンスに由来する。
当初はガリレオ同様に小惑星に接近する計画であったが、予算の都合により断念された。
経過
詳細についてはCassini-Huygens timelineを参照。
- 1997年10月15日 アメリカ合衆国フロリダ州ケープカナベラル空軍基地LC40発射台からタイタンIV型ロケットによって打上げられた。
- 1998年4月26日 金星に接近し1回目のスイングバイ。
- 1999年6月24日 金星に接近し2回目のスイングバイ。
- 1999年8月18日 地球をスイングバイして木星への軌道にのる。
- 2000年1月23日 小惑星帯を通過し、(2685) マサースキーの点状の写真を撮影。
- 2000年12月30日 木星をスイングバイ、土星への軌道へ。
- 2004年6月16日 主エンジンを38分間噴射、軌道修正(飛行速度を約3.6 m/sに減速)
- 2004年6月30日 土星軌道に投入。
- 2004年8月16日 土星の衛星2個の発見を公表 (メトネ、パレネ)。
- 2004年9月9日 土星の衛星2個 (仮符号 S/2004 S 3、S/2004 S 4)、環 (仮符号 R/2004 S1) を発見。
- 2004年10月21日 土星の衛星2個 (ポリュデウケス、仮名称 S/2004 S 6)を発見。
- 2004年12月24日 タイタンにホイヘンス探査機を放出。
- 2005年1月14日 ホイヘンスがタイタンに着陸し、機能停止するまでの3時間40分、カッシーニ経由で地球へ探査データを送った。
- 2008年4月15日 探査計画の2010年9月までの延長が決定。
- 2009年8月11日 土星の輪の"消失現象"を観測。
- 2010年2月3日 探査計画の2017年5月までの延長を発表[1]。
- 2013年4月29日 土星の北極にハリケーンのような大気の渦の姿を観測[2][3]。渦は北極を中心として目だけで約2千キロ[2][3]、地球の平均的なハリケーンの約20倍[3]。
- 2013年7月19日 14億4000万キロ離れた土星上空から地球を撮影[4]。
- 2014年4月3日、米航空宇宙局(NASA)は、カッシーニの観測によって土星の衛星エンケラドゥスに液体の水の大規模な地下海の証拠が発見されたと報告した[5]。地下の海の証拠はエンケラドゥスは「微生物が生息する太陽系で最も可能性の高い場所」の一つであることを示唆している[6][7]。
- 2014年6月30日、土星軌道投入から10周年を達成。2016年から始まる最後のミッションとして「グランドフィナーレ」と呼ぶミッションフェーズに移行することが発表された。このミッションでは土星の北極上空を通過してFリングのすぐ外を通過する軌道を繰り返し周回しながら観測を行う計画[8]。
成果
カッシーニが土星軌道に投入されてからの10年間の成果は、以下の通り。また、この間に200万回コマンドを実行し、科学データを514GB収集、土星の衛星を7つ発見、土星の衛星に132回フライバイし、26ヶ国からの科学者が計画に参加、科学論文を3039件発行、土星を206周回実施、写真を33万2,000枚撮影、エンジン噴射を291回実施した[9]。
- ホイヘンスプローブをタイタンに着陸させた。
- エンケラドゥスが氷のプルームを活発に吹き上げていることを発見
- 土星のリングが活発で動的であることを明らかにし、惑星形成の研究に寄与
- タイタンが地球のように雨や川、湖、海を持つ世界であることを発見
- 2010-2011年にかけて土星の北側で起きた大規模な嵐を調査
- 土星からの電波パターンは従来考えられていた土星内部の回転とは関係性がないことを確認
- リングの垂直構造を明らかにする画像を初めて取得
- タイタンの前生物的な化学研究
- イアペトゥス表面で見られる2重の明暗域の謎を解明
- 北極の6角形(ヘキサゴン)の様子を初めて完全に観察し、土星両極の巨大なハリケーンを発見
カッシーニの探査の成果(判明したこと)として、衛星や環の発見以外に、次のようなことが挙げられる。
木星
木星には独立した嵐が存在し、小さな斑点となって現れることが分かった。
一般相対論の検証
木星付近で、一般相対性理論を検証する実験の再現に成功した。すなわち、太陽の近くをかすめるように電波を発射し、太陽の近くを通らない場合より到達に時間がかかることを証明した。これは、重い天体の近くで時空が歪むというアインシュタインの理論と整合する。
タイタン
タイタンには、液体が流れたことによる流路があることが分かった。大気からの降雨があることが確認された、太陽系では地球以外の唯一の天体となっている。タイタンの濃密な大気は、メタンが分解され、それが再結合した炭化水素のような大きな有機分子ができることで作られたことが分かった。タイタンのメタンが、生物由来でないことが強く推測された。
諸元
カッシーニの総費用は約34億米ドルと、近年の惑星探査においては最大規模の探査機となった。カッシーニ以降、NASAはディスカバリー計画のように低予算・軽量の探査機を打ち上げるようになっている。
- 高さ: 6.8 m
- 幅:約4 m
- 重さ:5.8 t
- 動力:原子力電池3基(放射性同位体熱電対)
カッシーニ動画(CG) カッシーニ 動画(CG) |
積載機器
レーダー・マッパー、CCD撮像カメラ、可視光線・赤外線マッピング分光計、宇宙塵分析器、電波・プラズマ波測定器、プラズマ分光計、紫外線撮像カメラ、磁力計、イオン・中立質量分光計など。
脚注
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 2.0 2.1 テンプレート:Cite news
- ↑ 3.0 3.1 3.2 テンプレート:Cite news
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ テンプレート:Cite news
参考文献
- 「太陽系はここまでわかった」リチャード・コーフィールド著、水谷淳訳、文芸春秋、2008年
外部リンク
- Cassini Solstice Mission(NASA公式サイト)
- Cassini-Huygens(ESA公式サイト)
- カッシーニ/ホイヘンス (世界の惑星探査 - 月探査情報ステーション)
テンプレート:Venus spacecraft テンプレート:Jupiter spacecraft テンプレート:土星探査機 テンプレート:小惑星探査機