エンターテインメントソフトウェアレイティング委員会
エンターテインメントソフトウェアレイティング委員会(エンターテインメントソフトウェアレイティングいいんかい、英語:Entertainment Software Rating Boardの日本語名[1])はアメリカ合衆国及びカナダにおけるコンピュータゲームのレイティングなどの審査を行う団体で、1994年に設立された。略称・ESRB。
日本における同様の審査団体コンピュータエンターテインメントレーティング機構(CERO)を設立するにあたって模範とされた団体であるが、その審査方法はまったく異なる。
レイティング表示
ESRBによるレイティング表示は2つの要素からなる。一つは対象年齢区分を表示する1~2文字のアルファベットであり、もう1つはそのレイティングとなった要素の表記である。
- eC(Early Childhood)
- 3~6歳を対象としたもの。子供向け教育系のゲームソフトを想定しており、暴力表現などは皆無に等しいレベル。
- 同レイティングのソフトを日本国内で発売するソフトが1つもないが、前述の理由により、CEROの「A(全年齢対象)」とほぼ同等のレイティングに相当する。また、このレイティングの該当ゲームは主に教育系ソフトである点は、CEROの「教育・データベース」の性質が似通う部分もある。ただし、ゲームではないものと大人向け内容も認められている「教育・データベース」と違い、「eC」は子供向けゲームソフトのみで対象する[2]為、2者の性質は少し異なる。
- E(Everyone): ESRBレイティング別対象ソフト一覧・E (6歳以上)
- 対象年齢は6歳以上。暴力表現などの度合いは少なく、あっても極力デフォルメされており、残虐さや苦痛などを感じさせないよう配慮されている。性的な描写は皆無。1997年まではK-A(Kids to Adults)という表記であった。
- 対象年齢が6歳以上と低いため、eC同様CEROの「A(全年齢対象)」とほぼ同等のレイティングに相当するが、日本で「B(12歳以上対象)」か「C(15歳以上対象)」に指定されているソフトも少数ながら含まれている(ニード・フォー・スピード アンダーグラウンド、GTI Club ワールド シティ レース、伝説のオウガバトルなど)。
- E10+(Everyone 10+): ESRBレイティング別対象ソフト一覧・E10+ (10歳以上)
- 対象年齢は10歳以上。2005年3月2日にブランクが広かった「E」・「T」区分の中間という位置づけで追加された。
- CEROの「A 全年齢対象」~「B(12歳以上対象)」のほぼ中間に相当する。
- 同レイティングのソフトを日本国内で発売する際、表現の度合いにより、おおむねCEROの「A(全年齢対象)」~「C(15歳以上対象)」の、いずれかの区分になることがある。
- T(Teen): ESRBレイティング別対象ソフト一覧・T (13歳以上)
- 対象年齢は13歳以上とされ、年齢が満たない場合、購入時には保護者の同意が必要となる。「E」・「E10+」区分より若干表現の度合いが強い。何らかの暗示的な物が含まれている場合もある。
- CEROの「B(12歳以上対象)」~「C(15歳以上対象)」のほぼ中間に相当するが、日本では「D(17歳以上対象)」とされているソフトの一部も含まれている(ゼノギアス、BULLYなど)。また、INFAMOUS〜悪名高き男〜は「T」区分だが、日本では「Z(18歳以上のみ対象)」に指定された。
- 日本製のソフトがCEROの「A(全年齢対象)」であっても、程度の低い暴力や戦闘の表現、思想にまつわる表現などによって「T」区分となる場合もある(アーマード・コアシリーズ、大神、大乱闘スマッシュブラザーズX、魔界戦記ディスガイアシリーズ、勇者のくせになまいきだ。など)。
- M(Mature):ESRBレイティング別対象ソフト一覧・M (17歳以上)
- 対象年齢は17歳以上とされ、年齢が満たない場合、購入には保護者の同意が必要となる。強い暴力表現や非直接的な性的表現などが含まれている場合。
- CEROの「D(17歳以上対象)」か「Z(18歳以上のみ対象)」に相当するが、一部「C(15歳以上対象)」、「B(12歳以上対象)」、「A(全年齢対象)」に相当するソフトが含まれる場合もある(CONAN、サイレントヒル、バイオハザード アウトブレイク、バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ、RESISTANCE〜人類没落の日〜、GOD HAND、ペルソナ3・4、メタルギアソリッド バンドデシネ、真・女神転生III-NOCTURNEなど)。
- AO(Adults Only): ESRBレイティング別対象ソフト一覧・AO (18歳未満提供禁止)
- 成人指定、18歳未満は購入禁止。直接的な性的/暴力表現を含む。
- CEROの「Z(18歳以上のみ対象)」に相当するが、アメリカ製の家庭用ゲームソフトでは性的な表現も認められているのもある。
- しかし、マイクロソフト、任天堂、SCEといった各メーカーは、「AO」区分と判定された対応ソフトの制作・販売は原則として認めず、大手流通のベスト・バイ、ウォルマートなどは「AO」区分と判定されたソフトを販売しない方針を採っており、アメリカ国内で流通および販売の上で不利となるため、開発側が修正のうえ再審査を経てレイティングを「M」区分に引き下げたものが多い(PS2・PSP・Wii版のマンハント2は一例)。
- そのため、「AO」区分のまま流通されるソフトは非常に少ない、ESRBの発足以来、その評定と判定されたソフトはわずか28本だった(2012年現在、販売中止の1本を含み実質には27本)。家庭用ゲームソフトでは、流通された「AO」区分のゲームは初期ロット分の『グランド・セフト・オート・サンアンドレアス』にしか存在しない(ただし、こちらは再審査時のレイティング。詳しくは当該項目参照)。
- NR(Not Rated):
- ESRBの発足以前に発売されたソフトか、非常に稀ではあるがESRBが評価を行わなかったケースに対してなされる表示。
- RP(Rating Pending):
- 発売前のタイトルについて、広報資料(ウェブサイトや雑誌広告)などで審査予定または審査中であることを示すときに使用される場合がある。
- CEROの「審査予定」に相当する。
- 「T」区分以上のレイティングを受ける可能性があるソフトについては、子供には不適切な表現が含まれている可能性があることを示す注意文("May contain content inappropriate for children.")が併記される。
要素の表示部分には、審査員の間で含まれているとの認識で一致した要素が列挙される。以下にその一例を挙げる。
- ギャンブル関係
- 飲酒関連
- Alcohol Reference - 酒類に関する描写がある。
- Use of Alcohol - 飲酒描写がある(成人の飲酒に対しても表示される)。
- 性的表現
- 暴力表現
- Violence - 暴力シーンがある。
- Animated Violence - アニメのような感じの暴力行為。
- Cartoon Violence - マンガっぽい感じのキャラクターがなす暴力行為。
- Fantasy Violence - ファンタジー世界での、人間、または非人間キャラクターの暴力行為。
- Intense Violence - リアルな暴力行為。生々しい血や切断された部位の表現、人を傷つけたり死に追いやったりする行為などが表される。
- Blood - 流血シーンがある。
- Animated Blood - アニメのような感じで血が出る。
- Blood and Gore - 激しい流血シーンや、人体切断シーンがある。
- この内、Violence、Cartoon Violence、Fantasy Violence、Bloodについては、表現が軽い場合「Mild ~」と表示される。
- 発言
- Suggestive Themes - 何かをそそのかしたり、叩きつけるような表現が見られる。表現が弱い場合は「Mild Suggestive Themes」と表示される。
- Language - スラングや汚い言葉遣いが含まれている。表現が軽い場合は「Mild Language」と表示される。
- Strong Language - The Seven Dirty Wordsが含まれている。
- Comic Mischief - きわどいユーモアを含んでいるシーンがある。
- その他
- Lyrics - ゲーム中に使われている曲の歌詞にきわどい表現が含まれている。表現の度合いによっては「Mild Lyrics」または「Strong Lyrics」と表示されることがある。
- Some Adult Assistance May Be Needed - 子供向けのコンテンツに付けられる。
- Informational - 役立つ情報(データ、事実、リソースなど)が含まれている。
キャラクターのカスタマイズが可能なオンラインゲームにおいては、これらとは別にその旨を示す注意文("Games Experience May Change During Online Play"など)が追加されている。また、審査通過後に問題が発覚した場合にはレイティングを引き上げるケースもある。
ちなみに、レイティングとは無関係に、社会情勢などの理由で発売禁止を勧告されたゲームも稀ながら存在する(Postal、The Guy Gameなど)。
審査方法
まず、メーカー側から提出された、特に重要な部分の映像と内容に関するアンケートを、3人の評価者がそれぞれ個別に確認してレイティングの推奨値を算定し、全員が含まれていると判定した表現内容を添えてメーカーに対し返答する。
その後、完成したソフトをメーカー側から受け取り、実際にプレイしてそのレイティング判定が正当だったかを評価するというシステムになっている。
ESRBによる審査は任意となってはいるが、ほとんどの販売店において審査を通っていない製品を販売しない方針を取っていることから流通がほぼ不可能となるため、一般の流通に乗せ、販売店にて発売する場合はESRBによる審査は事実上必須となっている。また店舗によっては「AO」区分だけでなく「M」区分の製品も取り扱わない場合があるため、ESRBの審査による流通への影響は大きい。
尚、あくまでも業界内の自主規制であるため、Steamなどのデジタル配信(特に独立系開発会社によるもの)や、スマートフォン向けの販売網などではレーティング自体が要項でない場合も多く、これらの流通においては未審査の作品も多い。
審査後のマーク表示は
の計4箇所に表示される(CEROではパッケージ表のどこかに最低1箇所の表示があればよい)。パッケージには表面にはレイティング表示のみ、裏面にはレイティング表示とその原因要素の表記がされる。
脚注
関連項目
- コンピュータゲームのレイティングシステム
- Pan European Game Information - ヨーロッパ29ヶ国におけるゲームソフトのレイティングを行っている機関。
- Unterhaltungssoftware Selbstkontrolle - ドイツの公的審査団体。
- Office of Film and Literature Classification - オーストラリア・ニュージーランドにそれぞれ設置されている審査機関。
- コンピュータソフトウェア倫理機構 - 日本国内で主にアダルトゲームを対象に審査を行っている。
- コンテンツ・ソフト協同組合 - 日本国内で主にアダルトゲームを対象に審査を行っている。