エンゼルフィッシュ
エンゼルフィッシュ(テンプレート:Lang-en-short)は、南アメリカ・アマゾン川水系原産の淡水魚であり、観賞用熱帯魚の代名詞の一つともいえるシクリッドである。分類上ではスズキ目ベラ亜目シクリッド科エンゼルフィッシュ属(Pterophyllum属)に分類される4種類の魚を総称して「エンゼルフィッシュ」とよぶ。
特徴
全長12 - 15cmほどで、体は木の葉のように左右に平たい。さらに背びれと腹びれ、尻びれが長く発達していて、特徴的な縦長の体型をしている。品種改良された飼育個体の体色は変異に富むが、野生個体は銀白色で、体側に褐色の3本の横しまがある。
名前は大きなひれでゆったりと泳ぐさまが天使に例えられたものである。最近は"Angel"を「エンジェル」と読むのが一般的だが、この魚は現在に至るまで「エンゼル」が通用する。また、英語の"Angelfish"は、エンゼルフィッシュの他にもチョウチョウウオに似た海水魚・キンチャクダイ類を意味することがある。英語ではエンゼルフィッシュを"Freshwater angelfish"、キンチャクダイを"Marine angelfish"として区別する。
アマゾン川流域を中心とした南アメリカ北部に分布し、水の流れがあまりない水域に生息する。水中では水草や樹木の陰に留まっていることが多い。食性は肉食性で、昆虫、貝類、甲殻類、イトミミズ、魚卵、小魚などを捕食する。よって、飼育する時も口に入るようなタンクメイトと一緒に飼うのは避けるべきである。
産卵は岩、水草、水中に垂れ下がった木の葉などでおこなわれ、1ヶ所に1000個ほどの小さな卵を円状に並べて産卵する。オスとメスは産卵後も残り、卵と稚魚の世話をする。ただし親が稚魚を食べてしまうこともある。
また、シクリッドとしては温和な種ではあるが、縄張り意識がやや強く、自分の縄張りを主張して他の魚を攻撃してしまうことがあるので、飼育する際は注意する必要がある。
種類
エンゼルフィッシュは、次の4種類が原種とされている。
- アルタム・エンゼル P.altum Pellegrin, 1903
- 英名:Altum Angelfish
- 伸長するヒレとやや褐色がかかる体色が特徴。
- デュメリリィ・エンゼル P.dumerilii (Castelnau, 1855)
- 英名:Dumerilii Angelfish
- ブラジル南部に生息する。スカラレ・エンゼルと同種とされることもある。
- レオポルディ・エンゼル P.leopoldi (J. P. Gosse, 1963)
- 英名:Teardrop Angelfish
- ペルー、コロンビアに分布する。
- スカラレ・エンゼル P.scalare (Schultze, 1823)
- 英名:Freshwater Angelfish
- アマゾン川流域に広範囲に棲息している。もっとも普通種。
日本にエンゼルフィッシュが初めて輸入されたのは1930年頃といわれ、それ以後、多くの改良品種が作出された。特にスカラレ種は多くのバリエーションがあり、改良品種の基となった。
おもな改良品種
ダイヤモンドマーブルエンゼルのように、複数の品種の特徴を併せ持つ場合もある。
- マーブル・エンゼル
- 縞模様の代わりに大理石のような黒い模様が入る改良品種。通常のマーブルエンゼルは黒と表皮の銀色のみであるが、トリカラーエンゼルと呼ばれる黒と黄色の模様の入る品種も存在する。
- ゴールデン・エンゼル
- 縞模様が消失し、頭部から背中にかけて金色の発色のある改良品種。
- ダイヤモンド・エンゼル
- 鱗の形状が変化して光沢を持った皺のような状態になった改良品種。
- アルビノ・エンゼル
- アルビノのエンゼルフィッシュ。体色はゴールデンエンゼルに近い。
- ブラック・エンゼル
- 体が黒一色になる改良品種。眼の虹彩が赤くなるのが特徴。
- レッドトップ・エンゼル
- ゴールデンエンゼルのような頭部に発色を持つタイプの改良品種の中で、特に赤に近い色彩を持ったもの。
- グラスエンゼル
- 鱗が透明になり、体に透明感を持った改良品種。ブラッシングとも。
- ベールテールエンゼル
- 背びれと尻びれが非常に長く発達する改良品種。
関連項目