ウイルス治療

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テンプレート:出典の明記 テンプレート:参照方法 ウイルス治療(ウイルスちりょう)とは、病原性関連遺伝子やウイルス自身の合成に必要な遺伝子を欠失させたり不活化させたりして、患部の細胞組織で特異的に感染増殖させることによって、改善または完治を目指す治療である。がんウイルス療法の研究は20世紀の初めまでさかのぼることができる。

なお、病原性のウイルス感染に対する治療は、抗ウイルス治療という。しかし、「抗」をつけ忘れて、単にウイルス治療ということがある。 テンプレート:See also

ウイルス(ビールス)療法

ウイルス療法(oncolytic virus therapy)とは、ウイルスが腫瘍内で感染と増幅を繰り返しがん細胞を殺しながら増殖することを利用することを発想の基本としており、病原性関連遺伝子やウイルス自身の合成に必要な遺伝子を欠失させたり不活化させたりして、腫瘍細胞内でのみ選択的に複製されるようにウイルスゲノムに遺伝子操作を加えた変異型の治療用の制限増殖型ウイルスを作り、そのウイルスを腫瘍細胞に感染さて、ウイルスが細胞内で複製され、その過程で感染細胞が破壊されることによる、増殖に伴うウイルスそのものの直接的な殺細胞効果によりがんの治癒を図る治療法である[1]。ウイルス療法は、手術、放射線、化学療法などとも併用が可能であり、さらに、特異的抗腫瘍免疫を惹起することから、免疫療法との相乗効果も期待できる。反面、基本的に抗ウイルス薬が存在しないウイルスでのウィルス治療は考えられないとはいえ、ウイルスは常に変異を繰り返すため、当初のがん細胞のみでの選択的な感染と増殖をもつウイルスから、別の新たな感染力と毒性を持ちかねないため、その開発施設から厳重に管理されるなど、ウイルス療法特有の危険性や困難さも指摘されている[2]

主に用いられるウィルスは、遺伝子組換えアデノウィルス、遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスなどである。その他、レオウィルス、ピコルナウイルス、パラミクソウイルス、ポックスウイルスなどの遺伝子組替ウイルスが利用される。

「テロメライシン」は日本で最初の制限増殖型腫瘍溶解ウイルスとされるが、単独での効果は確立されていないため、腫瘍を選択的に融解する可能性が高いとして、2013年以降に頭頚部、胸部悪性腫瘍に対して放射線療法と併用で「遺伝子治療臨床実践研究」の一環として臨床試験が計画されている。

引用

  1. 東京大学医科学研究所付属病院 脳腫瘍外科HP 「悪性脳腫瘍(グリオーマ/神経膠腫、膠芽腫)の治療」
  2. 日本医学会シンポジウム記録集第127回/吉倉廣「 医学・医療安全の科学―[ I ]医学研究における安全性 」医学・医療安全の科学6~10/日本医学会 2005.2

外部リンク