インマルサット
インマルサット(Inmarsat)は、通信衛星による移動体通信を提供する民間企業(Inmarsat plc)、及び、その商標である。
1979年に設立された国際機関である国際海事衛星機構(INMARSAT:International Maritime Satellite Organization、国際移動通信衛星機構の前身)の事業部分を引き継いだ企業であり、社名も同機関の略称に由来している。商標権は同機構にある(日本の商標登録番号は第4117102号)。
概要
現在運用中の衛星は、合計11基。内訳は、第2世代のInmarsat-2が3基(うち1基は予備機。当初4基が打ち上げられたが1基は運用を終了)、第3世代のInmarsat-3が5基(うち1基は予備機)、第4世代のInmarsat-4が3基。
Inmarsat-3 は、1996-1998年に打ち上げられたもので、赤道上空35,786kmの軌道上に位置し、4基(太平洋、インド洋、大西洋-西、大西洋-東)で世界をカバーしている。Inmarsat-4は、2006年以降、3基(太平洋、インド洋、大西洋)が打ち上げられている。
これらの衛星と地上設備(端末)の間で、音声通話、FAX通信、データ通信、テレックス,インターネット等の送受信が可能。この場合の地上設備とは、船舶電話、陸上可搬電話、航空機電話などを指す。これらの端末はアンテナの大きさや利用出来る機能によりインマルサットA/B/C/D/M/ミニM/Fleet/Aero/BGANの9種類に分類されている。
歴史
- 1979年7月 - 海上の安全を確保するため静止衛星を利用して、海事用途の音声通話とデータ通信サービスを提供するために設立された国際機関で、「国際海事衛星機構(インマルサット)に関する条約」の発効に合わせて、国際海事衛星機構 (INMARSAT:International Maritime Satellite Organization)として設立された。KDDI(当時、KDD)は、日本の署名当事者として機構に参加。
- 1994年12月 - 小型の通信装置が開発されたのを受けて、サービスの対象を陸上・航空機へもサービスを拡大したため、機関の名称を国際移動通信衛星機構(IMSO:International Mobile Satellite Organization)に変更。
- 1999年4月 - 独自の衛星を所有する民間企業の移動体通信への参入に対応するため、イギリスの会社法により設立された民間企業であるInmarsat plcに事業部門を移管した。なお、KDDIは4,85%出資している主要株主である[1]。
- 2002年11月 - パケット交換方式で64kbit/secの速度を発揮するインターネット接続サービス「インマルサットMPDS(Mobile Packet Data Service)」を開始。
- 2005年11月 - パケット交換方式で492kbit/secの速度のデータ通信と音声通信が同時に利用可能な「インマルサットBGAN(Broadband Global Area Network)」を開始。インターネットに接続されている。
- 2007年12月 - 初代サービスである、インマルサットAサービス終了。
海運業界に与えた影響
テンプレート:出典の明記 インマルサットの登場により、海運業界に多大な影響があったとも言われている。例えば、海上での機関の故障などにおいてモールス信号などの通信にて連絡を取り合いながら修理を進めたりしていたものが、電話だけでなくインターネットなども利用できるようになったため、短期間での修理が可能となり、機関故障による漂流事故の危険性が少なくなったとも言われている。この他、図面での情報交換が船舶と陸上基地でのやり取りが容易になり、運行計画そのものも楽に組めるようになったとも言われている。
遭難などについては別に非常用位置指示無線標識装置(イーパブ:E-PIRB - Emergency Position Indicate Radio Beacon)が義務化されている。
日本での展開
日本ではKDDI、日本デジコム(ミニM型及びBGAN型、GSPS型のみ)、JSAT MOBILE Communications(BGAN型,GSPS型のみ)がサービスの提供や通信機器の販売、レンタルを行っている。