インドラ

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ファイル:Indra deva.jpg
インドラ。アイラーヴァタに乗っている
ファイル:Thagyamin at Shwedagon Pagoda.jpg
ミャンマー、タヂャーミン寺院のインドラ(サッカ)。どこか中性的な表情である

テンプレート:Sidebar with collapsible lists インドラテンプレート:Lang-sa-short)はバラモン教ヒンドゥー教の神の名称である。雷を操る雷霆神である。ディヤウスプリティヴィーの息子。漢訳では帝釈天とされ仏教に取り入れられる。特に『リグ・ヴェーダ』においてはヴァーユとともに中心的な神であり、また、『ラーマーヤナ』には天空の神として出てくる。ゾロアスター教では魔王とされる。絵の通りインドラは茶褐色の皮膚、一面四臂で、二本の槍を手にしている。アイラーヴァタという聖獣の象に乗る。

ルーツは古く、紀元前14世紀のヒッタイト条文の中にも名前があることから、小アジアやメソポタミアなどでも信仰されていただったことが確認されている。茶褐色の天と地を満たすほどの巨躯で、髪や髭は赤く、豪放磊落な性格。千年間母親の胎内に宿っていたが、生まれてすぐに他の神々からの嫉妬を恐れた母に捨てられ、更に父からは敵意を向けられていた。彼は一人旅に出て、ヴィシュヌからの友情を得るまで世界を放浪した。好色が祟り、ガウタマ聖仙の妻アハリヤーを誘惑して呪いを受けるような失敗もする。後にティロッタマーとの出会いにより全身に千の目を持つ。神酒ソーマを好み、強大な力を発揮する武器・ヴァジュラ金剛杵)を持つ。配下は暴風神マルト神群。戦う相手は、人々を苦しめる凶暴にして尊大な魔竜ヴリトラなどである。別名ヴリトラハンはヴリトラ殺しに由来する。またトヴァシュトリ神の生み出した3つの頭を持つ怪物・ヴィスヴァルパや、ヴァラ(洞窟)、ナムチヴィローチャナメーガナーダといったアスラ族やラークシャサ族と戦う。

しかし、全戦全勝の将というには程遠い。例えばアスラ王マハーバリには敗北し、インドラは天界追放の憂き目にあっている。ヴィシュヌヴァーマナ)の力を借りて取り戻すも、またもアスラ王マヒシャースラに破れ天界を追放されている。この時は女神ドゥルガーがマヒシャースラを殺したおかげでインドラらは天界に戻った。インドラはラークシャサ族ラーヴァナ王の子メーガナーダにも負け、メーガナーダには「インドラジット」(インドラに打ち勝つものという意味)を名乗られる屈辱まで味わっている。「ヴリトラハン」とは言うもののヴリトラにも当初は敗北し、なんと神々の世界の半分をヴリトラへ分け与えることで一旦は和睦し、その後不意打ちによってインドラはヴリトラに勝利したにすぎない[1]

それでも最初の神々への讃歌集『リグ・ヴェーダ』においては最も多くの讃歌が捧げられ、全体の約4分の1を占めるほどの人気のある神であったが、時代を経るに従い、徐々に人気を失った。しかし、その後の神話世界でも、神々の王である彼の権威は保持されており、神都アマーラヴァティーのナンダナの園で天女たちに囲まれている。アスラ神族から強奪し、陵辱までしたシャチーという神妃との間には息子もあり、御者マータリの操る戦車に乗って出陣する。またインドラの武器ヴァジュラは、依然として雷を象徴する威力ある武器と考えられている。

マハーバーラタ(紀元前10世紀頃に起きた大戦争を語り伝えた「バラタ族の戦争を物語る大叙事詩」)」に登場する英雄たちの超兵器の一つが「インドラの炎」「インドラの矢」等という名で呼ばれている。太古のインドでインドラが、アスラ族またはラークシャサ(羅刹)の王ラーヴァナの大軍を一撃で死滅させたという。

ヒンドゥー教の時代

リグ・ヴェーダの時代には神々の中心とも言える絶大な人気を誇ったインドラも、時代が下り、ヒンドゥー教が成立した時代になれば影が薄くなる。変わらず重要な立場にある神であることは間違いないが、神々の中心の座はシヴァやヴィシュヌなどに譲ってしまい、代わって世界を守護するローカパーラ(世界守護神)の地位に落ち着いている。

四方にそれぞれ神が配置され、インドラはその中でももっとも重要とされる東方の守護神の地位に位置づけられた。

ゾロアスター教のインドラ

テンプレート:Zoroastrianism インドではデーヴァが善神でアスラが悪神だが、イランではダエーワが悪神で、アフラ・マズダーが善神と入れ替わっている。ゆえに、インドのデーヴァ(神々)が悪神として登場しており、インドラも魔王の一人となっている。ヴェンディダードとは除魔書という意味である。

「ヴェンディダード」の7大魔王

あるいは

  • ナース
  • インドラ
  • サウルワ
  • ノーンハスヤ
  • タウルウィー
  • ザイリチャー
  • アンリ・マンユ

その他、アエーシュマ、アカタシュ、ワルニヤ を指す。「ブンダヒシュン」ではアフレマンが、

  • アコマン(アカ・マナフ)
  • アンダル(インドラ)
  • ソウァル(サウルワ)
  • ナカヘド(ノーンハスヤ)
  • タイレウ(タウルウィー)
  • ザイリク(ザイリチャー)

を創造したとしている。オフルマズドのアムシャ・スプンタに神性が対応しており敗れることになっている。ここではインドラは、文字通り帝釈天のインドラ、サウルワはルドラ神の異称シャルヴァ、ノーンハスヤはナサーティヤのことである。悪魔アンダルはインドラの別名である。

脚注

  1. この時、ヴリトラの妻として送り込んだラムバーがヴリトラを酩酊状態にし、喉貫き殺した。もうひとつの説話パターンはヴリトラに勝負を挑むも勝てない。そこで昼も夜も攻撃しないこと、木、鉄、石でできた武器で攻撃しないことを条件に和睦し、そこで黄昏時に泡でヴリトラを殺したという。詳細はヴリトラの項を参照の事。

参考文献

  • ヴェロニカ・イオンズ著、酒井傳六訳「インド神話」青土社、1990.
  • マッソン・ウルセル、ルイーズ・モラン著、美田稔訳「インドの神話」みすず書房、1975.

関連項目

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