アヴェスター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テンプレート:Zoroastrianism 『アヴェスター』(Avestā)とは、ゾロアスター教の根本教典である。
なお「アヴェスター」というのは現代ペルシア語読みで、中世ペルシア語ではアパスターク(Apastāk)、或いはアベスターグ(Abestāg)と呼ばれていた。
概要
アヴェスター語という言語で記されている。口承伝持で長らく伝えられた後、3世紀頃に発明されたアヴェスタ文字で書物に記された。しかし、イスラム教の迫害などを受けて散逸し、現存するテキストは、当時の1/4に過ぎないという。
構成
その内容は、善悪二元論の神学、神話、神々への讃歌、呪文等から成り、大きく分けて以下の5部からなる。
- ヤスナ(Yasna)
- 祭儀書。全72章からなる。そのうち17章は、開祖ザラスシュトラ自身の作と考えられている『テンプレート:仮リンク』(Gāθā)と呼ばれる韻文詩で、言語学的に一番古層を示し、特にガーサー語(Gathic Avestan, 古代アヴェスター語 - Old Avestanとも)と呼ばれる。
- ウィスプ・ラト(Visp-rat)
- 『ヤスナ』に手を加えた補遺的小祭儀書。「ウィスプ・ラト」とはアヴェスター語のウィースペ・ラタウォー(vīspe ratavō)が転訛した物で「全ての権威者」を意味する。「権威者」とはここでは神々を指し、内容も神々を召喚し讃えるものとなっている。
- ウィーデーウ・ダート(Vīdēv-dāt)
- 除魔書。『ヴェンディダード』(Vendidād)ともいう。『レビ記』にも比される宗教法の書で、清めの儀式次第などを説く。
聖王イマ(Yima インド神話のヤマに相当)とその黄金時代に関する神話などを含む。 - ヤシュト(Yašt)
- 21の神々に捧げられた頌神書。言語的には『ガーサー』より新しいが、内容はより古いものと考えられている。ゾロアスター教神学完成以前のインド・イラン共通時代の神話が見られる。
第19章にはイラン最古の英雄伝説が描かれており、後の『シャー・ナーメ』にも多くが取り入れられている。 - ホゥワルタク・アパスターク(Xvartak Apastāk)
- 『アヴェスター』の簡易版。『ホルダ・アヴェスター』(Xordah Avestā)とも言う。日常的に使用する比較的短い祈祷文を集めたもの。
参考文献
- 伊藤義教訳『原典訳 アヴェスター』ちくま学芸文庫、2012年6月、ISBN 4480094601