アメリカ映画協会 (業界団体)

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アメリカ映画協会[1](テンプレート:EnMPAA) は、アメリカ合衆国映画産業の業界団体である。ハリウッドのメジャースタジオなどをメンバーとする。本部はワシントンD.C.

もともとは、1922年にアメリカ映画製作配給業者協会(MPPDA)として出発したが、1945年に改名された。

歴史

MPPDAは、アメリカ映画産業のイメージを脅かしたファッティ・アーバックル事件のようなスキャンダルにメジャー・スタジオが対応できるように組織されたものだった。また、州政府や地方政府が映画を検閲するかも知れないという危険性に対応するためでもあった。

それゆえ、(前郵政長官ウィル・ヘイズの指導下にありヘイズ・オフィスとして知られていた)MPPDAの設立は、検閲権を映画産業の下におこうとする試みだった。モラルにかかわる新たな難題とサウンドに対応して、MPPDAは、ダニエル・ロードとマーティン・クィグリーの2人のカトリック教徒の指導を受けつつ、1930年に(ヘイズ・コードとしても知られている)映画製作倫理規定を成立させた。

それにもかかわらず、あからさまな性描写が続き、カトリック矯風団(Catholic Legion of Decency)が圧力をかけた後の1934年にヘイズ・コードは義務として厳格に運用されることになった。この映画製作倫理規定委員会の委員長がカトリック教徒のジョセフ・プリーンであった(ので、プリーン・コードとも呼ばれる)。この時点で、メジャー・スタジオの映画にはすべて映画製作倫理規定の承認印が必要とされ、遵守しない場合には罰金が課せられることとなった。

MPPDAは、台本からファイナル・カットにいたる製作のあらゆる段階において、プロデューサーに何が容認可能なのかについて助言した。性や犯罪の描写に関する細かい規則が目的としていたのは、健全なイメージを維持していくことだった。

映画製作基準は、観客の減少やその他の問題に直面していたスタジオの圧力によって1956年と1966年に改正された。1966年の改正では現在の格付け諮問レイティング・システムに取って代わられ、映画製作倫理規定はその後廃止された。

映画製作倫理規定はMPPDAの仕事の中で最も良く知られた一面であるが、他にも、中央配役局(Central Casting Bureau)や、タイトルにまつわる論争を調停するタイトル登録局(Titles Registration Bureau)など、様々な職務があった。

1945年、MPPDAはアメリカ映画協会(MPAA)となり、エリック・ジョンストン会長のもとでジョンストン・オフィスとして知られるようになった。このMPAAは発足まもなく、パラマウント判決の余波(→スタジオ・システム)、観客の減少、映画製作倫理規定のなし崩し的な崩壊、海外展開の必要性などの問題に直面した。海外展開への対応として1945年にアメリカ映画輸出協会(MPEA)が設立された。

1966年からリンドン・ジョンソン大統領の元補佐官であり、1966年からMPAAとMPEAの会長となったジャック・ヴァレンティは、特にハリウッドの作品を海外市場に売り込むために、映画産業と政府の間により親密な関係を作り上げた。ヴァレンティは1968年のレイティング・システムの責任者であった。

メンバーが現在のすべてのメジャー・スタジオ出身者からなるMPEAとMPAAは、アメリカ映画産業において主要な勢力であり続けている。近年はビデオDVDの発達でますます重要になっている著作権や著作権侵害行為という問題に特に積極的に取り組んでいる。

2006年に制作されたアメリカの「ノット・レイテッド アメリカ映倫のウソを暴け!」(原題 テンプレート:Interlang)というドキュメンタリー映画の中で、MPAAの極端な秘密主義が批判された。映画の中で、レーティングを行う審査員に関する一切の情報が秘匿されている点、レーティングの基準が不明瞭である点、そしてレーティングされる予定の映画と過去にレーティングされた映画との比較自体が禁止されている点などが指摘がなされた。この映画の公開後、MPAAはレーティングの審査員の情報公開を行い、過去の作品との比較を認めるようになった。なお、この映画はMPAAからNC-17(18禁)としてレーティングされたため、この映画の監督を勤めたカービー・ディックはレーティングを拒否した。その結果、この映画はアメリカにある多くの映画館で上映されなかった。これは、アメリカの多くの映画館は劇場連盟に加盟しており、そこの規定で、MPAAがレーティングした映画しか上映できないからである。

批判

MPAAは以下のように批判されている。ただし、1と3の点については改善されている。

  1. レーティングを行う審査員に関する一切の情報の秘匿
  2. レーティングの基準が不明瞭
  3. レーティングされる予定の映画と過去にレーティングされた映画との比較自体の禁止
  4. MPAAと米軍との繋がり[2]
  5. 映画のレーティングを利用した興行会社優遇政策(独立系の映画プロダクションの作品には、厳しいレーティングをする)

脚注

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関連項目

外部リンク

  • 日本国際映画著作権協会 / JIMCA / MPA(MPAA)
  • 米兵を良く描いた映画は人が死ぬシーンがあってもPGとレーティングされる。しかし、イラクにおける米兵の活動状況の実態を描いた映画「ガナー・パレス」は、暴力シーンが少ないにもかかわらず、当初、NC-17とレーティングされた。