からし種
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からし種(からしたね)は、からしの種、粒のことである。新約聖書の語句。
聖書
聖書にイエス・キリストのことばとしてこのように書かれている。
- 「また、ほかの譬を彼らに示して言われた、『天国は、一粒のからし種のようなものである。ある人がそれをとって畑にまくと、それはどんな種よりも小さいが、成長すると、野菜の中でいちばん大きくなり、空の鳥がきて、その枝に宿るほどの木になる』」(マタイによる福音書13章31- 32節 口語訳聖書 (c)日本聖書協会)
このようなことから、キリスト教文化圏では「からし種」は、信仰心や真理をあらわす宗教的な言葉としても使われる。 また、西洋諸国では一般に、小型の豆本タイプの聖書を「からし種」(独: Senfkorn 英: mustard seed)と通称している。
聖書や西洋文学では、最小の単位、最も小さいものをあらわし、そこから大きな成果が育つことの喩えとして好んで使われる。
植物
聖書のからし種の同定については議論がある。
エラスムス、ゼゼルス、グロティウス、ヒラー、セルシウス、ローゼンミュラーはシロガラシ属Sinapisが聖書のからしだと考えてきた。
洋からし(マスタード)の木(カラシナ、正確には草)は北米、中東、地中海に生育し、エジプト時代から香辛料や薬草、あるいは防腐剤としても使われた。うちブラック・マスタードの種は極めて小粒。これらはインド原産の和からしとは別種である。南インド料理においては、香りのベースとして欠かさず用いられている。
カラシナ説を否定する立場では、鳥が巣を作れるかが問題にされるが、ギリシャ語のカタスケーノオーが巣を作るという意味でないとする解釈もある。
からし種がサルヴァドラ科のSalvadora persicaだとする説も唱えられている[1]。
脚注
- ↑ 『王立アジア協会雑誌』No.xv 1844年
参考文献
- 『聖書植物大事典』