柔道整復師
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柔道整復師(じゅうどうせいふくし、テンプレート:Lang-en-short)は、業として柔道整復を行うことができる国家資格、あるいはその国家資格を持つ者。柔道整復師法においては第二条で「厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者」と定義される。
柔道整復術は医業類似行為のひとつで、日本古来固有の伝統医療である。柔道整復師は、骨折・脱臼・打撲・捻挫の治療を行うことができる[1]。柔道整復師は業務独占資格であり、医師と柔道整復師以外のものが柔道整復を行うことは許されない。
法律
免許
免許の取得については、現行の柔道整復師法で以下のように定められている。
- 柔道整復師は国家資格であり、その免許は厚生労働大臣が与える。[3]
- 1989年(平成元年)の柔道整復師法改正までは、都道府県知事が試験を行っていた。1993年(平成5年)に第1回の柔道整復師国家試験が実施され、毎年1回の試験が行われている。
- 受験資格を得るには、次のいずれかにおいて3年以上、解剖学、生理学などを学ばなければならない。[4]必修単位数は85単位以上[5]。
- 文部科学大臣の指定した学校
- 厚生労働大臣の指定した柔道整復師養成施設
- 柔道整復師国家試験の試験科目は以下の通り。
その他の関係法令
- 柔道整復師が業務する施設を施術所といい[6]、開設後十日以内に施術所の所在地の保健所を通じて都道府県知事に届け出ることを要する[7]。施術所の構造基準はについては柔道整復師法施行規則第十八条に定められており、届け出内容については同第十七条に定められている。
- 柔道整復師は、その業務範囲内で自ら負傷の状態を把握し自らが施術できる疾病又は負傷であるか否か等を判断して施術を行うことができる。この点で看護師や理学療法士など、業務の開始に医師の指示が必要とされる職種と異なる。ただし、医業を行うことができるのは医師に限定されており[8]、また、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第十二条に「何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔道整復を業とする場合については、柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)の定めるところによる。」とあり、医業類似行為とされる鍼灸按摩に対し、柔道整復は「柔道整復業」である。厚労省は柔道整復を、医師が行う「診療」とは区別して「施術」と呼んでいる。医師の「初診料」に相当する用語も「初検料」と呼ばれる。
- 外科手術、X線撮影や画像診断(読影)[9]、薬品の処方、注射、病気の診断等の医療行為を行うことは禁止されている[10]。しかし、湿布のように業務に伴い当然必要なものであれば例外として認められている。また、頸部捻挫に伴う頭部への影響などがあった場合、予測される影響を見落とさぬよう必要に応じて専門医に紹介する必要があるように、柔道整復師は施術に際して一定の責任を負う。それに従い、一般臨床学(内科疾患の診断方法の1つ)や病理学の他、外科学についても履修が義務づけられており、国家試験の出題範囲となっている。また、「医師の同意を得た場合のほか脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない」が、「応急手当をする場合は、この限りでない」とされる[11]。
- 医師は、「柔道整復師から、脱臼又は骨折の患部に施術するにつき同意を求められた場合、故なくこれを拒否」してはならない[12]。
- 柔道整復師はその業務に関し、柔道整復師法に基づいた守秘義務を負う[13]。
養成施設・教員
- 養成施設には、専門学校、短大、大学、各種学校など多様な形態がある。詳しくは柔道整復養成施設を参照。
- 柔道整復師学校養成施設指定規則により、養成施設の満たすべき要件、柔道整復師教員の資格が定められている。
- 養成施設数は1998年の14校から2011年には108校に急増した。養成定員は約1000人から7000人に増加したが、多くの養成校が定員割れ[14]となっている。
日本における柔道整復師数
- 厚労省の「平成24年保健・衛生行政業務報告」によると、就業柔道整復師は58,573人、接骨院(施術所)数は42,431であった。柔道整復師数、接骨院(施術所)数ともに近年急増している。[15]
- 直近の柔道整復師数・施術所数については外部リンク参照。
柔道整復師の施術に係わる療養費
- 骨折、脱臼、打撲、捻挫で柔道整復を受けた場合には、健康保険から療養費の給付を受けることができる。
関連団体
日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本栄養士会、日本理学療法士会、日本作業療法士会のような、業界を統一する職能団体は存在しない。以下の諸団体が分立する。
- 財団法人柔道整復研修試験財団
- 公益社団法人全国柔道整復学校協会
- 社団法人日本柔道整復師会 (1万7000名の会員を持ち最大勢力と目される)
- 全国柔整鍼灸協同組合
- 協同組合日本接骨師会
- 協同組合近畿整骨師会
- 協同組合日本柔整総研
- 協同組合千住柔整師会
ほか
注)第二組合団体もしくは第三組合団体等に分ける根拠はない。
関連項目
脚注
- ↑ 骨折・打撲の治療については医師の同意が必要である。ただし応急手当の場合は同意不要とされる。捻挫・打撲の治療は医師の同意なく柔道整復師の判断で行うことができる。
- ↑ 医療法、薬事法、あはき法、その他の法律に抵触してはならない柔道整復は「医業類似行為」であるが、広義の「医行為」であると解釈される。この考え方によると、柔道整復師法は医師法の除外規定という性格を持つ。
- ↑ 柔道整復師法第三条
- ↑ 柔道整復師法第十二条
- ↑ 単位数は85単位とされているが、看護師資格などと異なり履修時間の定めはないため、実際の授業時間は各学校ごとのばらつきが大きい。いまだに午前中2コマ3時間程度の授業しか行わない専門学校も存在する。
- ↑ 柔道整復師法第二条第二項
- ↑ 柔道整復師法第十九条
- ↑ 医師法第十七条
- ↑ 最高裁はX線撮影は診療放射線技師法違反、読影は医師法違反と判断している。テンプレート:Cite journal
- ↑ 柔道整復師法第十六条
- ↑ 柔道整復師法第十七条
- ↑ 厚生省医発第六二七号、同保険発第一四〇号
- ↑ 柔道整復師法第十七条の二
- ↑ 柔道整復師試験の新卒受験者数は毎年5000人強であり、2割以上の定員割れがあると推定される。
- ↑ 平成24年の就業柔道整復師は58,573人、直近の増加数は年間4.073人であった。平成12年(2000年)から24年までに柔道整復師数は1.9倍に増加している。年間増加数は平成12年の5倍の水準で、柔道整復師養成校の定員削減がなければ、今後も毎年同程度の増加が見込まれる。平成24年の接骨院(施術所)数は42,431で、平成12年の1.73倍である。接骨院数の増加は年間2217件と引き続き高水準ではあるものの、増加数は頭打ちの傾向がある。柔道整復師と接骨院数の比率である開業率は低下しており、平成24年には72.4と平成12年と比較して7ポイント低下した。接骨院の過剰が自営開業を困難にしている傾向が見て取れる。