差額室料
差額室料(さがくしつりょう)とは、健康保険適用の範囲外で患者に請求される病室の費用のことをいう。差額ベッド代ともいう。差額室料を要する病室を特別療養環境室(通称「特別室」)といい、より良い医療を受けるための健康保険適用外の費用を特別の料金という。差額室料も特別の料金の一種である。
概要
2004年7月の日本厚生労働省のまとめでは、差額ベッドは1日最低50円から最高21万円の23万床余りが日本に存在し、料金別に見ると、10,500円以下が9割近くを占める[1]が、首都圏では倍以上となる。一人部屋が6割を占めるが、2 - 4人部屋もある。
保険診療報酬は診療行為ごとに一律に設定されているため、病院にとって、差額ベッドは数少ない増収策の一つである。東京大学医学部附属病院では、国立大学の法人化に伴い増収の必要に迫られ、数年前に完成した入院棟について高額な差額ベッドは値下げし、医療現場でも差額ベッドを積極的に勧めてきた結果、差額ベッドの稼働率を大幅に増加させた[2]。
差額ベッド代の高額な病院
差額ベッド代(1日、最高料金)の高額な上位10病院。差額ベッド代を取らない全日本民主医療機関連合会発表(2004年)[3]。
- 慈恵医大病院 - 210,000円 131平方メートル
- NTT東日本関東病院 - 126,000円 63平方メートル
- 北野病院 - 105,000円 47平方メートル
- 聖路加国際病院 - 105,000円 36平方メートル
- 慶應義塾大学病院 - 84,000円 76平方メートル
- 大阪警察病院 - 84,000円 41平方メートル
- 住友病院 - 73,500円 57平方メートル
- 東京医大病院 - 68,250円 20平方メートル
- 東京女子医大病院 - 68,250円 30平方メートル
- 日赤医療センター - 68,250円 40平方メートル
問題点
差額室料について、厚生省(現「厚生労働省」)の通知「特定療養費に係る療養の基準の一部改正に伴う実施上の留意事項について(平成9年3月14日 保険発第30号)」では、下記のように定められている。
- 患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意に基づいて行われる必要があり、患者の意に反して特別療養環境室に入院させられることのないようにしなければならないこと。したがって、特別療養環境室へ入院させ、患者に特別の料金を求めることができるのは、患者側の希望がある場合に限られるものであり、救急患者、術後患者等、治療上の必要から特別療養環境室へ入院させたような場合には、患者負担を求めてはならず、患者の病状の経過を観察しつつ、一般病床が空床となるのを待って、当該病床に移す等適切な措置を講ずるものであること。
- 特別療養環境室への入院を希望する患者に対しては、特別療養環境室の設備構造、料金等について明確かつ懇切に説明し、患者側の同意を確認のうえ入院させること。この同意の確認は、料金等を明示した文書に患者側の署名を受けることにより行うものであること。
さらに保医発第0328001号(平成20年3月28日)では、患者に特別療養環境室に係る特別の料金を求めてはならない場合として具体的に以下3つの例を挙げている[4]。
上記通知そのものに法的拘束力がなく、差額室料を請求できる要件を示す判例がないこともあり、特別療養環境室へ患者の希望でなく治療上の必要性により入院させたり、十分な説明なく入院させたにもかかわらず、差額室料を患者に請求している医療機関が多く、トラブルが頻発している[5]。また、入院希望先に差額ベッドしか空きがなければ他の病院を探すことを余儀なくされることもあり[6]、患者の医療を受ける機会の平等を担保する方策について論議すべきとの主張がある[2]。
一方で差額ベッドを徴収しない病院組織も存在する[7][8]。
脚注
関連項目
外部リンク
- 特別療養環境室に関する基準、差額室料(「特別の料金」)の扱い等について定められている。
- 参議院での特別療養環境室に関する質問、答弁