人間の盾
人間の盾(にんげんのたて、Human Shield)は、軍事および政治用語。
概要
敵に目標物の内部あるいは周囲に民間人がいることを敵に知らせることにより攻撃を思いとどまらせることをいう。また人海戦術による軍事作戦において民間人に兵士の前を進むことを強制し兵士の安全を図ることもこれにあてはまる。傷病者の状態改善に関する第4回赤十字条約(ジュネーヴ条約)の締結国において禁止されている。
国際法では人間の盾を使って軍事目標を守ることは戦争犯罪であるとみなされている。しかし最近では一般市民や標的にされる市民を守るための反戦戦略として一般市民の志願者(ボランティア)が人間の盾を利用するということが増えている。
実施例
- 第二次世界大戦中にソ連が使用したという実例がいくつかある。
- 沖縄戦の際、日本兵はアメリカ軍に対する人間の盾として民間人を使用した[1][2][3][4]。
- 1950年〜1953年、朝鮮戦争において、北朝鮮軍に加担していた中国人民志願軍がアメリカ空軍からの空爆を避ける為、占領地から強制連行していた婦女子を一列に並ばせ、自軍の行軍に加わらせていた。[5]
- イスラエル軍は2002年のジェニンの侵攻でこの戦術を著しく使っていたということが報告されている[6][7]。
- 1994年、ボスニアのセルビア人による。
- 1990年、湾岸戦争による。
- 2003年のイラク侵攻の前に、人間の盾になるために志願して標的区域に入った者がいた。
- 2009年、スリランカ内戦の最終局面では反政府勢力タミル・イーラム解放のトラが北部地域に追いやられ、事実上10万人以上の一般市民が人間の盾状態となった。これら市民の多くは停戦期間中(4月中旬)にスリランカ側へ脱出している。
- 2013年9月9日、フィリピンのサンボアンガを襲撃したモロ民族解放戦線は、占領した村の住人を人間の盾として利用し、フィリピン軍と戦った[8]。
問題点
パレスチナ自治区ではNGOの国際連帯運動 (International Solidarity Movement, ISM) のメンバーが「人間の盾」として様々な活動に従事している。ISMは、パレスチナ人の家々がイスラエルのブルドーザーで破壊されるのを身体を張って阻止し、またパレスチナ人の子供たちの通学へ同行したりしている、と主張している。しかし、ISMのメンバーの中には、志願して盾となり一般市民を守ることと、イスラエル国防軍 (IDF) が、自らの軍事標的を守るために、捕らえられたパレスチナ人を盾として使用することを、両方とも人間の盾という言葉を使って表現することは不適切であると主張している者もいる。
盾が個人ではなく全住民である場合、集団的な「人間の盾」として非合法の武装集団が利用する。武装集団は基地を非戦闘員の居住区におくことで敵からの攻撃を防ぐのである。また、敵からの攻撃で非戦闘員が巻き添えを食って死傷した場合、これを宣伝(プロパガンダ)に利用する。
人間の盾を破ることは、ヒューミントによって人質たる民間人の位置を特定すると同時に、テロ組織のみを殺傷する精密爆撃もってすれば不可能ではなくなった(十分なヒューミントが実施できなければコラテラル・ダメージを被ることとなる)。
また、事前に目標を攻撃する日時を相手側に予告し、その予告通りに攻撃をすることで「事前に日時を知らせて攻撃しているのだから、その攻撃目標に民間人がいて犠牲になるのはそちらの責任だ」と主張できるため、現在では人間の盾は意味がない。このためイラク戦争にてイラクは、人間の盾になるため入国した人間をスパイと見なした。(人間の盾にはなれないと知りつつ、「イラク戦争を間近で見たいという」という欲求のために人間の盾に志願して入国する者もいた。)