マイクロメータ
マイクロメータ (micrometer) とは、精密なねじ機構を使って、ねじの回転角に変位を置き換えることによって拡大し、精密な長さの測定に用いる測定器。ノギスよりも精度の高い測定に用いられる。
一般的なものは目盛は0.01mm。マイクロメータヘッドと呼ばれる基本構造部がネジ機構のため、測定圧力の差が測定値のばらつきや個人差となって現れる。これを是正し、より一定の圧力で測定を行えるよう考案されたのが定圧機構。定圧機構の中で現在最も普及しているのがラチェットストップ式と呼ばれるタイプである。
いろいろな用途に合わせて、測定先端(アンビルなどと呼ぶ)の形状などの異なるマイクロメータがある。
その機構は2つのねじを組み合わせた差動装置によっており、ピッチの差を利用した微細な動作が可能となっている。
測定対象別のマイクロメータの例
- 平マイクロメータ(円筒外径の測定)
- 両球マイクロメータ(板厚の測定)
- 内側マイクロメータ(穴の内径の測定)
- 3点式内側マイクロメータ
- 棒形内側マイクロメータ(大きな内径の測定)
- デプスマイクロメータ(深さ、段差の測定)
- 歯厚マイクロメータ(歯車のまたぎ歯厚の測定)
- ねじマイクロメータ(おねじの有効径の測定)
名称と歴史
"micrometer" という単語は、ギリシア語の "micros"(小さい)と "metron"(測定)を組み合わせた造語である。Merriam-Webster Collegiate Dictionary によれば[1]、この単語はフランス語から英語に取り入れられたもので、1670年に初めて用いられたとされている。そのころメートル法もマイクロメートルという単位も存在しなかった。しかし、当時の人々は細かいものを測定する必要に迫られ、またそのような測定法に興味を持っていた。
マイクロメータの原型となるねじの原理を使った測定器具は、ウィリアム・ガスコイン(1612年 - 1644年)がノギスの改良版として発明した。ガスコインは、これを望遠鏡で星と星の角距離や惑星の直径を測定するのに使った。しかし、イングランド内戦が勃発するとガスコインは国王軍に参加し、マーストン・ムーアの戦いで若くして戦死した。
ジェームズ・ワットは1772年、自分用にマイクロメータのような測定器具を作った[2]。ヘンリー・モーズリーは初の実用的なねじ切り旋盤を開発し、マイクロメータの発達に寄与している。また、1805年に自らもマイクロメータ的な器具を発明し「大法官 (Lord Chancellor)」と名付けた[2]。
現在の形のマイクロメータは、パリのジャン・ローラン・パルメール (Jean Laurent Palmer) が1848年に発明している[3]。このため、フランス語ではマイクロメータを palmer、スペイン語では tornillo de Palmer(Palmerのねじ)とも呼ぶ。英語圏では、1867年に Brown & Sharpe がマイクロメータを発売し[4]、広く普及するようになった。1888年、エドワード・モーリーがマイクロメータの精度をさらに高め、複雑な実験でその測定値が正確であることを証明した。
脚注・出典
参考文献
- Roe, Joseph Wickham (1916), English and American Tool Builders, New Haven, Connecticut, USA: Yale University Press, LCCN 16-011753. Reprinted by McGraw-Hill, New York and London, 1926 (LCCN 27-024075); and by Lindsay Publications, Inc., Bradley, IL, USA (ISBN 978-0-917914-73-7).
- 元の位置に戻る ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 以下の位置に戻る: 2.0 2.1 Micrometer VernierMicrometer.com、2007年5月14日
- 元の位置に戻る ↑ Roe 1916:212.
- 元の位置に戻る ↑ Roe 1916:210-213, 215.