プーカ
プーカ は、ケルトの神話・伝説に伝わる妖精(フェアリー)あるいは妖魔の一種。
アイルランドの伝承のプーカ(テンプレート:Lang-ga, pooka, phouka, púka)もあるが、 ウェールズの伝承でもプーカ(テンプレート:Lang-cy or pwwka)という妖精が信仰されてきた。カナ表記は同じでも、これらはいちおう区別される。</br>
コーンウォル語にもこれらに相当するブッカ(英語版)の言い伝えがある。マン島のバゲーン (英語版)(またはボゲードン)も同じ系統である。[1]。
チャンネル諸島でも、プーク(テンプレート:仮リンク、テンプレート:仮リンク: pouque)と呼ばれている。そのため、この地元ではクロムレックのことを pouquelée, pouquelay(e) と呼ぶ風習がある。 ブルターニュ地方では、プールピケ(?) poulpiquetあるいはpolpeganの呼び名が相当するようである[2][3]。
ウィリアム・シェイクスピア作の戯曲夏の夜の夢でも有名なパック(Puck)は、このプーカに由来するとされるが、ウェールズ伝承のものを原型とみる説が有力である[4]。
性悪・性善説
プーカは、人間に害をもたらす存在とも、恩恵をもたらす存在とも伝わる。妖精学の大家テンプレート:仮リンクも、「プーカについての認識はじつにあやふやなものである」[5]としており、多くを語らないが、同志のテンプレート:仮リンクが、キラーニー近くの山に住む少年から採集した、次のような話を紹介している:
- 「年寄りの人は、プーカは昔いっぱいいたもんだ、とよく言っていました。.. プーカは性悪で、見た目が黒く、悪いモノでした。..鎖をまわりに垂れ下げた野生の若い牡馬の姿でやってくるんです。で、うとい旅人にずいぶん悪さをするんです」[6]</br>
また、子供たちには、熟れ爛れたブラックベリーはもう食べちゃだめよ、プーカがばっちくした(糞を垂らした?)実だから、と教える風習があったという。
しかし逆にプーカが人間を手助けする伝承もあると、テンプレート:仮リンク(オスカー・ワイルドの母親)の著作ではされており、次のような物語が収録される:
- ある農夫の息子パドリグ(Phadraig。パトリックのアイルランド形)が、ある日、目に見えないプーカが通り過ぎるのを感じ取り、外套(コート)をさしあげたいから、こちらにおいで、と呼びかける。プーカは若い牡牛の姿でやってきて、供物を受け取り、今晩、古びた粉ひき小屋までやって来な、といいつける。そのとき以来、プーカたちが夜中ひそかにやってきて、穀物の袋を置いておくと、いつのまにか粉に挽いておいてくれるようになった。パトリックは、最初の晩は寝てしまい、起きてからプーカの仕業に気が付いのだが、のちに、櫃の中に隠れてプーカの仕事ぶりを目にした。ある日、パトリックは、ぼろをまとうプーカが不憫になって、シルクのスーツをあつらえて置き残してやった。そうすると、思いのほか、プーカはこんな紳士の格好をしたからにゃ、少し世界を見て回らなにゃ、と言って、それ以降、仕事はせずにいなくなってしまった。しかしプーカのおかげでかなりの蓄財をした農夫は楽隠居し、パトリックは学問を修めさせ、めでたく結婚した。その式の日に、ひそかに黄金の杯を置かれてあったが、それがプーカの贈り物と何の疑いもなく飲み干すと、幸福にめぐまれたという。[7][8]
プーカの変身
プーカは変身が巧みで、さまざまな恐るべき形態をとると考えられていた。最も多くの場合、流れるようなたてがみと輝く黄の眼を持つ、つやつやとした黒馬の姿をとったが、他にも鷲の姿になることもあれば、大きな黒山羊の姿を借りることもあった。この名の語源は初期のアイルランド語poc(牡山羊)と同じである。</br> マン島のグラシュティンは、水馬もであり人間の姿にも扮するという妖魔であり、プーカとの共通点がみられるが、ただし馬の耳を隠すことができないという[9]。スコットランドの水馬ケルピーも人間の姿で現れる[10]。一方、アイルランド伝承の水馬オヒシュキは、もっぱら馬の姿で目撃される。
プーカの魔力
プーカはフェアリーの中でも最も恐ろしいものと考えられている。姿の恐ろしさなどというのは序の口で、恐れられた最大の理由はこのフェアリーの持つ力である。プーカは夜、旅人達を待ち伏せると言われている。もしその背中に放り上げられると、最良の場合でもそれは命をかけた乗馬になる。戻って来た時、旅人達は別の姿に変わっており、二度と元の姿に戻ることはできない。プーカには人間の言葉を話す能力があり、プーカをないがしろにした、あるいは怒らせようとしたと思う相手を家から誘い出し、獲物として背中に乗せると言われている。うまく出現することができない場合は、柵を破る、家畜を切り裂くなどの破壊行為に及ぶ。
プーカと暮らし
伝統的にプーカは農事歴と関係づけられている。プーカはケルトにおける異教的な(←キリスト教からみて。ペイガニズム参照)収穫を感謝する三番目の祭、すなわち作物を収穫し終えたときの祭と結びついている。農場に残ったものはすべて puka (フェアリーによってしおれさせられたもの)と考えられ、だからこそ食べられないのである。土地によっては、飢えたプーカを宥めるために若干の作物を残しておくこともある。ともあれ、11月1日はプーカの日で、その日だけはプーカもおとなしくしていると思われている。
地域によっては、プーカは恐怖より尊敬の対象として扱われている。しかるべく敬意を払えば、出会った人に幸運をもたらすという。プーカは山や丘のフェアリーだが、それらの地域では11月1日になると姿を現し、予言や警告を与えてくれるという。
プーカの落日
他の多くの強力な神話上の生物と同じく、21世紀になると、プーカも骨抜きの目にあってしまった。今日のメディアの手にかかると、恐るべきプーカも無害で恥ずかしがりで薄ら馬鹿な庭の精になってしまう。ゾウムシ食い.
アメリカ合衆国の人々はこの種の腑抜けなプーカにしか親しんでいないらしい。脚本家テンプレート:仮リンクのブロードウェイ舞台作『ハーヴェイ』(1944年。1950年にハリウッドで映画化)では、プーカは目に見えない6フィート3.5インチのウサギの姿をしている[11][12]。プーカは往年の日本製テレビゲーム『ディグダグ(Dig Dug)』のキャラクターでもある。また、妖精ネタのロールプレイングゲームChangeling: The Dreamingのキャラクターにおけるクラスにもなった。
脚注
参考文献
- テンプレート:Citation
- Katharine Briggs, An Encyclopedia of Fairies, Hobgoblins, Brownies, Boogies, and Other Supernatural Creatures, "Pwca", p 337. ISBN 0-394-73467-X.
- テンプレート:Citation
- テンプレート:Citation, p.371
- "Chapter: Fairy Help (The Phouka)", テンプレート:Citation, p.48 (Boston, Ticknor, 1888)