スラブ軌道
スラブ軌道(スラブきどう)は、鉄道の線路あるいは軌道に使われる道床の一種。新幹線、高架線路などに多く採用されている。
概要
旧来のバラスト軌道では路盤上に砕石による道床を設け枕木・レールを敷設する。これに対し、スラブ軌道はコンクリート路盤上に軌道スラブと呼ばれるコンクリート製の板を設置し、その上にレールを敷く構造である。コンクリートによる軌道構造であることから、軌道狂いが発生しにくい省力化軌道の一つである。
同様に省力化軌道である直結軌道では、コンクリートを場所打ちとしているが、スラブ軌道では工場で製作されたプレキャストコンクリートによる軌道スラブを現場に搬入、設置を行う。軌道スラブの設置には、路盤とスラブとの隙間を埋めることと、緩衝材にすることとを兼ねて、モルタルを注入する。樋口芳郎(東京大学名誉教授、コンクリート工学)が開発した。 また国鉄の取得した特許のなかで、もっとも収益に貢献した例といわれている。
特徴
バラスト軌道は列車の重量・振動などによる軌道の狂いが生じやすいため、定期的な保守管理を必要とするが、スラブ軌道は強固なスラブを用いるため軌道の狂いが起こりにくく、保守管理の手間が軽減される。また構造重量も軽いため、高架橋に用いた場合の高架橋への負荷も低減できる。ただし、バラスト軌道と比べると、路盤とレールの間に減衰効果を生む隙間がなく、さらに表面で反射する音も加わるため、列車走行時は車両の内外ともに騒音や振動が大きくなるので、2000年代以降は市街地の地上区間にはあまり採用されなくなってきている。同様に、スラブ軌道を採用している京葉線や片町線、関西本線(大和路線)今宮-JR難波間などでは騒音軽減のため、レール間にバラスト(砂利)を敷いている。
降雪期の鉄道車両下部には氷柱や氷塊が生じやすいが、バラスト軌道の場合にはこれらが車両から軌道に落ちてバラストが飛散し、車両本体や窓ガラスなどを損傷することがあるのに対し、スラブ軌道ではこの問題は発生しない。
一方で、スラブ軌道はバラスト軌道よりも設置費用が高いだけでなく、自然災害などで軌道に狂いが生じた際、これを修正するための時間と費用も増える。
降雪区間の実例
東海道新幹線は、建設当時まだスラブ軌道の技術が確立しておらず、全線バラスト軌道である。このため、同線の降雪区間である関ヶ原では、開通直後の冬以来雪対策に頭を悩ませているが、長期間の運休を伴う大規模な改修工事は事実上不可能であり、現在もそのまま運用されている。未対策の冬季には、関が原通過後、長距離にわたって氷塊の落下による石跳ねで窓ガラスの破損事故が多発したため、初期には前後の駅で氷雪のかき落としを行った。現在は、過去の被害状況を元にバラスト飛散防止シートが敷設されている。
なお、後年に建設された山陽新幹線以降はスラブ軌道である。雪国を走る東北・上越新幹線はスラブ軌道で建設された上、融雪用の温水スプリンクラーも完備している。