ウォート

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ウォート(新王国暦442年 - )は、水野良小説ロードス島戦記』・『ロードス島伝説』に登場する魔術師で、架空の人物。「荒野の賢者」や「モスの大賢者」と呼ばれ、六英雄の一人に数えられる。

人物

父親は都市国家ローランで私塾を開いていた魔術師であり、母親は父の魔法によって言うがまま従うようにされた女性。父から魔術を学んだ彼は、ロードス島唯一の魔術師ギルドであるアラニア国「賢者の学院」に属さない魔術師だった。正式な機関での教育は受けていないが「賢者の学院」の院長ラルカスに匹敵する高位魔術師でもあり、魔法文明の最盛期を生きたカーラでさえ実力を認めるほど。本人も「自分が500年早く生まれていたらと考えたことがある」と述べている。

魔術に限らず広く知略に富み、さまざまな地を転々としたこともあって机上の知識に寄らぬ深い見識を持つ。天才肌で独特の価値観の元に生きており、また皮肉屋な一面があるが、内面には繊細な心を秘めている。

戦乱の絶えぬロードスにあって実戦経験も豊富で、「メテオ・ストライク」や「ディスインテグレート(分解消去)」など極めて高度かつ危険な魔術の使い手。破壊魔法を「禁忌」とする賢者の学院に属していないため、必要とあらば強力な破壊魔法を躊躇無く使用する一方で民衆が抱く「魔術師に対する畏怖と恐怖」に対しては常に注意を払っている。魔神戦争にて派手な破壊魔法が大っぴらに使われているのを危惧する反面、「これだけ使われていれば、一つぐらい加わっても大差ない」とばかりに派手な魔法を使うなど、茶目っ気も多分に有している(戦いを通じて信頼できる友を得たことも大きく影響していると推察される)。

しかし、あまりにも優秀、かつ国家や権勢に縛られない彼の考えは他者に理解されることが殆どなく、魔神戦争まで各国を転々としながらどこに仕えても長続きしなかった。「荒野の賢者」とは元はそれゆえつけられた蔑称である(当人が気に入って、自ら名乗るようになった)。本人はそういった風評を気にしないような素振りをとっていたが、本心では誰かが自分を正しく評価(もしくは理解)してくれることを願っていた。そんな彼をコンプレックスから解放したのがスカード国王子ナシェルである。魔神戦争を通じてナシェルを導く中で、ナシェルだけが自分を完璧に使いこなせる人物だと確信し、『ナシェルによるロードス統一』とその隣に賢者として侍る自分を強く夢見るようになる。

魔神戦争を通じ、互いに秘めた心の弱さを察したニースと惹かれあうようになったが、互いにそれを表に出すことはなく、生涯独身を貫いた。ニースがその生涯を終える際は密かに彼女の元を訪れている。

魔神戦争終結後、戦いの中で失ったものや灰色の魔女の暗躍に対し思いつめていたが、隠遁生活に入り、後の時代に姿を現した際には少なからず茶目っ気を取り戻している。

経歴

魔神戦争まで

カノン王国宮廷魔術師や自由都市ライデンの顧問を勤め、その後モス諸国の魔術指導やヴァリス王国にも一時期仕えていたこともあり、若くしてロードスを代表する賢者として広く知られていた。その後「静寂の湖」ルノアナ湖畔の塔に住む(このルノアナ湖畔に移った時期に「荒野の賢者」と呼ばれるようになる)。

魔神戦争勃発直前までその発端となったスカード王国に宮廷魔術師として招かれており、学問の教え子として王子ナシェルと出会う(スカード国王ブルークが彼を招いた目的は独立のための内政強化の他、息子ナシェルの才覚を開花させることにあった)。「戦乱続くこの島に千年の平和をもたらす英雄王」を求めていた彼は、ナシェルの才覚に大器の片鱗を感じ、その縁から後に「百の勇者」において彼の軍師的な存在となる。

魔神戦争

473年、ウォートが解読した「魔神王の書」の内容を聞いたブルーク王は、ウォートを「赤毛の傭兵」ベルドとともに牢に幽閉。2人は幻影を残して脱獄し、以降はベルドを伴って古代遺跡の発掘に邁進した。ベルドの友、また抑えることができる数少ない存在となった。

後に自身の行いが魔神開放へと繋がったことを知った彼は、少なからぬ自責の念から戦争終結に尽力する。自由都市国家ライデンの評議会に働きかけ、魔神の首に賞金をかけることで「百の勇者」を成立させ、また戦場においては強力な魔術師として活躍するなど賢者の名に恥じぬめざましい功績を上げる。

謎の魔法戦士の正体にいち早く気付いていたが、排除に伴う危険性も熟知していたため対決を避け、一時的な協力関係を選択する(作中の言動から、排除は可能と考えていたが確信を持てないでいたと思われる)。それが結果的に、彼にとって生涯を賭した野望の体現者であるナシェルを、破滅へと至らせる遠因となってしまう。

「最も深き迷宮」での最終決戦では、ナシェルを失った失意を押し殺しつつ最下層まで辿り着き、魔神王と対決した。戦いを通して得た仲間の一人フラウスを失いながらも魔神王を討ち、戦争後は六英雄の一人大賢者ウォートとして、ロードスの歴史にその名を刻むことになる。

魔神戦争後

六英雄として最上の名声を得たが「千年の平和をもたらす英雄王」に足ると判断したナシェルを失った失望感は大きく、『魔法の恐ろしさを人々に知らしめ、愚かな魔術師が過ちを繰り返さないようにする』ことを自らの役割とし、二度と誰も魔神を呼び出すことが出来ないようにモスにある「もっとも深き迷宮」の上に塔を建て、迷宮を監視するという実質的な隠遁生活に入る。このためモスの大賢者とも呼ばれる様になる。基本的に諸国間の抗争には不干渉の立場を貫いていたが、その影に暗躍する「灰色の魔女」カーラの動向には常に注意を払っており、それ故に俗世と関わりを断ちながら各国の情勢にも通じている(情報の収集には、秘蔵の魔法の宝物「遠見の水晶球」などを使用しているようである)。後、スレインがウォートの後を継ぐ事を自らに任じている。

なお『ロードス島戦記』第1巻でファーン王が、一時的にではあるもののヴァリスの先王がウォートを仕えさせたことに敬意を抱くと語るが、先王については詳細不明[1]

英雄戦争

510年の英雄戦争ではドワーフの大トンネルを越えて訪ねてきたパーンらに魔力をうち消すワンド()を授け、灰色の魔女カーラを倒す事に協力する。

邪神戦争

525年の邪神戦争においてはカーラとの最終決着を決意し、旧友の「鉄の王」フレーベと共にカシュー王率いるフレイム軍に協力し、メテオストライクの呪文でアラニアのラスター軍を壊滅させマーモ島への道を開いた。

その後

その後も「もっとも深き迷宮」の監視を続け、マーモ公王として訪問したスパークに対して、迷宮で行われた戦闘を幻覚の魔法で再現して見せた。

TRPGキャラクターとしてのウォート

ウォート・スペシャルと称して自作の魔法を使うことができた。ソードワールドRPGのロードス島ワールドガイドでは、超英雄ポイント10点の超英雄とされた。

その他

『スペル・コレクション』(ISBN 4-8291-4220-0)には、「大魔術師ウォート」が呪文の解説役(狂言回し)として登場している。

担当声優

脚注

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  1. これには小説はリプレイ連載版をベースに書かれたのに対して、現在の公式設定が『ロードス島伝説』や『ロードス島ワールドガイド』により先王に関する設定が大きく異なるものになったという事情がある。
    リプレイ連載では、ミノタウロスに王子を殺されてミノタウロスと王子を混同する狂気に陥ったヴァリス王はファーンの1代前の先王であり、ウォートは六英雄のファーンとだけでなくこの先王とも旧友であった。当時、ヴァリスの先王に仕えて宮廷魔術師を務めていたウォートは王命によりミノタウロスを捕らえ王子の離宮として迷宮を作ったが、ヴァリスのとある大臣が王の狂気を野望に利用し始めたため、やむなく王と大臣を打ち倒した(PCゲーム版によると、この先王の名前はアウラーノス王で、ウォートにより忘却界に封印された)。そしてウォートは野に下り、ヴァリスではファーンが次の王になった。後にファーン王がフィアンナ姫を助けたパーン達に、ウォートの元に派遣する前の試練として迷宮のミノタウロス退治を課しており、その背景としてこれらは語られた。
    しかし『ロードス島伝説』と『ロードス島ワールドガイド』にて、狂気の王は先々代のワーレン王(ファーンの2代前)であり、若き頃の聖騎士ファーンと聖女フラウスがミノタウロスを退治したという事になった。ワーレン王が老死した後、選王会議は二派に分かれて魔神との戦いで最も戦功を挙げた聖騎士が王として選ばれることになったが、ジェナート司祭らが推す騎士隊長ファーンは騎士資格を返上、大司祭らが推す近衛騎士隊長ドルロスは独断行動によるモス連合軍との戦いで死亡。六英雄が魔神王を倒した後も、魔神王の支配から解き放たれた魔神たちとの戦いが2年間続いたが詳細は描かれておらず、何という聖騎士が戦功を挙げてヴァリス国王になったのかも明らかにされていない。