連句

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連句(れんく)とは、歴史的には、俳諧の連歌のことであった。連歌に対して俳諧という趣旨の精神とその内容、また俗語をも使用する形式で、それが、連歌の形式を踏襲した為に「俳諧の連歌」と称せられた。連歌とは複数の吟者が吟ずる短句で、前句に後句を付け合いし続ける形式の文芸をいう。付け合いする句々は独立性のあるものが原則である。しかもその隣接二句が調和することが特徴である。座の文芸の所以である。

俳諧は江戸時代、松尾芭蕉を始め多くの秀吟者を輩出し、庶民にも親近するため、連歌より好まれ、文芸の主流を為した。のちに、川柳と発句(のち俳句)の、一句形式の分離と流行を誕生せしめたので、狭義には俳諧より一句形式を除いたものは連句と呼称される。この用語を、明治37年に連歌や俳句と区別するため高浜虚子が提唱してから定着したとする説もあるが、「連句」の名称はしかし随分以前から巷間あった。

形としては連歌の様式を踏襲して、五七五の句の後に七七の句を、さらに五七五・・・と交互に付けていき、三十六句(歌仙)、五十句(五十韻)、百句(百韻)等よりならしめ、総数の違いで数十種に別して名称がある。

連句の様式、式目

総数の違いと、それを数ブロックに分ける数と量の違いにより、伝統的な連句の形式には、それぞれの名称があり、よく作られるものは、歌仙(36句)と半歌仙(18句)であるが、総数のみいう形式とは別に様式という場合、作する方法や句の取捨する規範など(式目と称するもの)まで含めていうことが出来る。ただしこうした伝統的連句は、いずれも殆ど様式(式目)に大きな区別はない。主なる式目は、春夏秋冬の季の句数で、春秋三句以上連ねること、夏冬句は一、二句なこと、各ブロックに月の句ないし花の句を配り置くこと、前句の前(これを打越という)と同趣意や用語を禁じたり嫌ったりすること、遠くに詠んだ句であってもそれはきつく忌避される(輪廻という)。その他心得的なものは一通りでない。

伝統的連句

正岡子規にはじまる近代俳句の隆盛のなかで、連句に注目した早い時期のものとして、寺田寅彦の随筆があげられる。また、幸田露伴は、芭蕉七部集の評釈を行い、芭蕉の歌仙の構造を明らかにした。

こうした戦前の業績をうけて、現代の作家、詩人たちによる連句の試みが、1960年代後半からはじまった。その中心になったのが、大岡信丸谷才一安東次男石川淳たちによる歌仙の興行であった。歌仙を巻いて、その後で付け合いの雰囲気や意図について解説対談を行うという形式によって、連句の可能性が追求された。大岡は、〈連詩〉という概念をここから発展させて、外国語での詩作の可能性も追求している。石川・安東・丸谷は亡くなったが、大岡、岡野弘彦を中心に雑誌『すばる』や『図書』誌上を中心に連句興行が続けられている。

現代連句

しかし現代に至るまで主流のこうした伝統的なものに飽き足らず、近代から現代には、様々な形式のものが工夫されつつある。

伝統的連句を脱する現代連句では、非定型、非定律、無式目のものから、句の独立・非独立性のものまで容認し始めている。それは現代詩に似たもののように一見できるが、飽くまで、複数の吟者が、短い句章の付け合いに、触発の文芸的意義を見出すのであるから連句の部門に留まる。よって意図された、結語への計画性ある(予定調和への)作法の、個人の詩や、複数吟者の連詩(長い句章も含む、また単に[賦]の並べ)とは異なる。勿論、用語やリズムは従来の、五七調や文語調のみならず、破調や口語も用いられる。

連句の文学的意義は、一つは調和(先述)、一つはその漂泊性にある。後者は極論すれば、隣接する二句にのみ責任があり、二句の付合が生命であるから、小説のようには筋がなく、或いは意図された詩のような合目的的でもなく、全体の運行は即興・自在に進められ、結末も意図されない、つまり、全てに於いて予定調和しないことにて、それでいて表現の綾や通奏低音の響きの浮揚による巧みな表現性などをもって文学作品となることを特徴とする。この観点から伝統的連句を顧みると、浮揚・漂泊性の姿はほぼ充足するといえど、その本質の、予定調和しない完全漂泊という重要な意義に対しては、その式目や定座の取り決めなど厳しく習慣するので、つまり型に嵌った規制・マンネリ化の姿の為、満足されていないといえよう。

現代連句 の現状と将来

俳句人口が3 - 500万人と言われるテンプレート:要出典のに対して、連句人口は数千人と規模が小さいとされている。テンプレート:要出典或る程度の経験を積めば、その即興性や緊張感、また複数吟者の吟ずる相乗効果などから、連句の面白さの虜となり得るが、複数人が集まって座を形成しなければならないことや、俳句に比べて伝統連句の場合、ルール的なものが複雑なこと等からくるハードルの高さやマンネリ傾向の嫌いなどが、連句人口の増加を妨げていると推測される。

上述の文学的意義の充足を目して、連句文芸の復興(連句ルネッサンス)に賭けるならば、現代連句が目指している式目離脱の完全自由なものにならざるを得ない。またそれこそ、日本のみならず、世界の人々も楽しみ普及もする文芸としての連句の姿であろう。

現代連句の参考文献

  • 現代連句入門(連句ルネッサンス)併せて俳諧新歳時記 俳諧文芸考究会 中尾青宵 ISBN 978-4-9905980-0-6

関連項目

外部リンク