希望 (旅客船)
希望[1] | ||
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概歴 | ||
竣工 | 1994年7月 | |
建造所 | 三菱重工業長崎造船所 | |
現況 | 解体済み | |
要目 | ||
船種 | 貨客船 | |
総トン数 | 2,785t | |
全長 | 74.0m | |
全幅 | 18.6m | |
深さ | ||
機関 | 32,000ps | |
速力 | 40.0kt(最大43.1kt) | |
乗客定員 | 260名 | |
積載貨物 | 普通車30台(または大型バス5台、普通車10台) | |
船籍港 | ||
信号符字 |
希望(きぼう)は、静岡県所管の財団法人静岡県総合管理公社が運航していたテクノスーパーライナー(フェリー)で東海地震などの非常時に備えた防災船。2005年の運用廃止後、売却を模索するも廃船となった。
概要
テクノスーパーライナーの実験船「飛翔」[2]を同船の実験終了後、静岡県が防災船に購入し「希望」と命名した。平時はカーフェリーとして使用されていたほか、東海地震発生など非常時の活用が期待されていた。
航海速力は時速40.0kt(約75km)と、船舶としては速い。旅客定員260人、普通車30台(または大型バス5台、普通車10台)。
燃費は軽油1リットルで8メートル [3]。
運航当時の状況
伊豆半島は道路事情が悪く、特に観光シーズンは渋滞が発生しやすい。また、半島ゆえの地形から海路を短絡できる船舶航路は有用とされてきた。このため、従来より静岡市清水区(旧:清水市)と伊豆市(旧:土肥町)を65分で結ぶエスパルスドリームフェリー(駿河湾フェリー)が運航されてきた。
本船は県が購入後の2005年9月まで、清水港と下田港を結ぶフェリーとして利用されていたが、同年10月以降は原油価格高騰のため、運航が休止された。その後、海上自衛隊による災害時の輸送体制が確立されたことにより、本船は多額の経費をかけて維持[4]する必要がなくなった[5]ことから売却されることになったため、同年度中に航路は廃止された。
廃船の顛末
テンプレート:出典の明記 航路廃止後の2006年3月24日、清水港から係留先である横浜港に向かった。その後しばらくの間、同港に係留され売却先を探すことになった。
しかし県は、三菱重工業[6]と締結していたガスタービンエンジンのリース契約を解除することで合意[7]したため事実上、廃船が決定した。2007年2月19日、船体の売却先を決めるための入札[8]が行われたが、参加した2者とも入札金額が予定価格の4,000万円に満たず、落札されなかった。その後、同年3月12日に落札予定価格を2,000万円に引き下げたうえで改めて入札が行われ、横浜市中区の不動産会社が落札[9]した。
一方、同船のエンジンについては、県がアメリカの会社へ売却のための契約交渉を行っていた。しかし、船体の落札者は同月29日、エンジンの「買い戻し」が確認できるまでは購入契約を延期したいとの申し入れを行ったため、県は落札を無効[10]とした。こののち県は、同船を中古船舶としてではなく廃船(資源)として処理することとなった。
同年5月、県は三菱重工業に対し本船を約658万円で売却した。県は、技術流失防止対策のほか解体費用の面などを総合的に判断した結果、同社への売却が最良の選択としていたが、同社は売却発表から5日後、同船を解体しないまま神奈川県内の産業廃棄物(産廃)処理業者に約4,000万円で転売した。これに対し、解体条件付で入札を実施しなかった県の対応に疑問を呈する声や、産廃処理業者の手に渡ったことで技術流出防止の目的が失われたとする指摘もある。
航路
- 休止まで、運航時は1日1往復、所要時間1時間40分。
船内
客室は普通席のみ設置(モノクラス制)されていた。なお、船内後方に売店とトイレが設置されていた。
脚注
- ↑ 参考:日本船舶明細書I 2008年版 - 社団法人 日本海運集会所(2007年12月30日発行)
- ↑ 三菱重工業が保有していた。
- ↑ みのもんたの朝ズバッ!(TBS、2007年4月4日放送)より。
- ↑ 県が維持費として計上した金額は、総額は100億円といわれる。(参考:終わりなき備え <8>(東海地震説30年 第1部) - 読売新聞)
- ↑ 2005年11月14日、石川嘉延知事が記者会見で表明。
- ↑ 三菱重工業は従来より、本船の保守を行っていた。
- ↑ 読売新聞(2006年8月5日付)
- ↑ 静岡県庁にて実施。
- ↑ 落札金額は、2,000万1円。
- ↑ 財務規則や入札参加心得書の基準に基づいて協議した結果、契約の延期は認められないとされた。
外部リンク
- 日本一速いカーフェリーTSL(テクノスーパーライナー)防災船「希望」 - 静岡県(2005年2月1日更新)
- 第2部第1章第3節 災害に対する取り組み(平成12年度運輸白書、運輸省) - 国土交通省