薬剤師国家試験
薬剤師国家試験(やくざいしこっかしけん)とは、薬剤師法に規定される国家試験である。
目次
概要
薬剤師国家試験は、薬剤師として必要な知識及び技能の確認を目的とするものであり[1]、少なくとも年1回行われる[2]。1987年の第71回までは年2回行われていたが、1988年の第72回より現行の年1回方式に改められた。受験料は6800円[3]。試験に合格した者は厚生労働大臣より合格証書の交付を受け(薬剤師法施行令第11条)、薬剤師法第7条の規定により申請を行い薬剤師名簿に登録することによって薬剤師の免許を厚生労働大臣より与えられる。なお、合格証書がないと免許の交付手続ができない。厚生労働省医薬食品局の監修の下に、薬剤師試験委員が問題を作成する[4]。
2012年(平成24年)3月より新6年制課程を修めた学生が受験する新薬剤師国家試験がスタートした。それに先立ち2008年新国家試験の概要が厚生労働省薬剤師国家試験出題制度検討会によりまとめられた[5]。
沿革
- 1949年(1回) 薬剤師国家試験開始
- 1985年 第1次薬剤師国家試験出題基準策定
- 1990年(75回) 受験者数10,000名突破
- 1990年 第2次薬剤師国家試験出題基準策定
- 1994年 第3次薬剤師国家試験出題基準策定
- 1998年 第4次薬剤師国家試験出題基準策定
- 生活習慣病や介護保険制度などに関する出題が明示されたほか、労働基準法が削除となった。
- 2006年 薬学部6年制課程設置
- 2004年 第5次薬剤師国家試験出題基準策定
- 個人情報保護法や内分泌かく乱物質、シックハウス症候群といった項目が追加された。
- 2008年(93回) 合格者数10,000名突破
- 2009年(94回) 薬学部旧4年制課程新卒者最後の国家試験
- 2011年(96回) 薬学部旧4年制課程最後の国家試験
- 2011年 薬剤師国家試験出題基準改定
- 6年制課程修了者向けの出題基準が策定された。
- 2012年(97回) 薬学部6年制課程卒業者初の国家試験
受験資格
主に次のいずれかに該当する者でなければ受験することができない。
- 大学(短期大学を除く)において、6年制又は旧4年制の薬学の正規の課程を修めて卒業した者
- 外国の薬学校を卒業し、又は外国の薬剤師免許を受けた者で、厚生労働大臣が1.に掲げる者と同等以上の学力及び技能を有すると認定した者
- 平成18~29年度までの間に大学(短期大学を除く)に入学し、新4年制課程の薬学の正規の課程を修めて卒業し、かつ、大学院において薬学の修士又は博士の課程を修了した者であって、以下の条件を満たし厚生労働大臣の認定を受けた者
- 大学院における薬学の課程の在学期間が2年以上あること。
- 4年制課程入学から12年以内に、医療薬学に係わる科目など6年制との差分となる単位の取得していること(これには薬局病院実務実習が含まれ、専念義務が有る)。
試験日・合格発表日
- 試験日
- 例年3月上旬の土曜・日曜
- 合格発表日
- 例年は4月上旬であったが、4月からの就職に対する配慮から、現在は3月末の発表となっている。
試験地
試験内容
全問マークシート方式の筆記試験。出題基準は学術の進歩及び薬剤師業務の変化に伴い、おおむね4年を目途に見直しを行うこととされている。現行の新国家試験の詳細については次を参照の事[6]。
2012年(97回)より
問題数は345問で、2日間の日程で行われる。
領域 | 必須問題 | 薬学理論問題 | 薬学実践問題 | 合計 |
---|---|---|---|---|
物理・化学・生物 | 15問 | 30問 | 15問 | 60問 |
衛生 | 10問 | 20問 | 10問 | 40問 |
薬理 | 15問 | 15問 | 10問 | 40問 |
薬剤 | 15問 | 15問 | 10問 | 40問 |
病態・薬物治療 | 15問 | 15問 | 10問 | 40問 |
法規・制度・倫理 | 10問 | 10問 | 10問 | 30問 |
実務 | 10問 | - | 85問 | 95問 |
2011年(96回)まで
日程は2日間(1日目午前に基礎薬学、午後に衛生薬学と薬事法規・制度、2日目午前・午後に医療薬学)で実施され、問題数は以下の通りだった。必ずしも各分野の範囲内から出題される訳ではなく、複合的な問題が出題されることもあった。これは第5次薬剤師国家試験出題基準に基づき、第90回(2005年)より施行されたものである。
合格基準は①問題の難易を補正し、計算して得た総得点312点(65%)に対応する実際の総得点(試験毎に異なる)以上の得点の者②各科目全てが35%以上の得点の者とされた。
- 基礎薬学 60問
- 衛生薬学 40問
- 薬事関係法規及び薬事関係制度 20問
- 医療薬学 120問
合格率
第97回の国家試験から薬学部6年制課程の卒業者が受験する新国家試験がスタートした[7]。この回は約9,800人が受験し、約8,600人が合格。合格率は88%だった[8]。第98回薬剤師国家試験は約11,300人が受験し、約9,000人が合格。合格率は79%だった[9]。第99回薬剤師国家試験は約12,000人が受験し、約7,300人が合格。合格率は61%だった[10]。
なお、第95回と第96回の国家試験は薬学部4年制課程と6年制課程の移行期にあたり、受験者は薬学部4年制課程の既卒者(所謂卒延者を含む)に限られ、合格率は低迷した[11],[12]。
回 | 試験実施年 | 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|---|
第75回 | 1990 | 1989(平成元) | 10,298 | 8,780 | 85.3% |
第76回 | 1991 | 1990(平成2) | 10,288 | 8,196 | 79.7% |
第77回 | 1992 | 1991(平成3) | 10,447 | 7,497 | 71.8% |
第78回 | 1993 | 1992(平成4) | 11,307 | 9,051 | 80.1% |
第79回 | 1994 | 1993(平成5) | 10,875 | 7,872 | 72.4% |
第80回 | 1995 | 1994(平成6) | 11,982 | 8,514 | 71.2% |
第81回 | 1996 | 1995(平成7) | 11,937 | 9,154 | 76.7% |
第82回 | 1997 | 1996(平成8) | 11,582 | 8,729 | 75.4% |
第83回 | 1998 | 1997(平成9) | 11,530 | 8,387 | 72.7% |
第84回 | 1999 | 1998(平成10) | 11,739 | 9,051 | 77.1% |
第85回 | 2000 | 1999(平成11) | 11,529 | 9,213 | 79.9% |
第86回 | 2001 | 2000(平成12) | 10,683 | 8,108 | 75.9% |
第87回 | 2002 | 2001(平成13) | 11,148 | 9,009 | 80.8% |
第88回 | 2003 | 2002(平成14) | 10,850 | 8,802 | 81.1% |
第89回 | 2004 | 2003(平成15) | 11,048 | 8,653 | 78.3% |
第90回 | 2005 | 2004(平成16) | 11,590 | 9,781 | 84.4% |
第91回 | 2006 | 2005(平成17) | 11,046 | 8,202 | 74.3% |
第92回 | 2007 | 2006(平成18) | 12,112 | 9,154 | 75.6% |
第93回 | 2008 | 2007(平成19) | 13,773 | 10,487 | 76.1% |
第94回 | 2009 | 2008(平成20) | 15,189 | 11,301 | 74.4% |
第95回 | 2010 | 2009(平成21) | 6,720 | 3,787 | 56.4% |
第96回 | 2011 | 2010(平成22) | 3,274 | 1,455 | 44.4% |
第97回 | 2012 | 2011(平成23) | 9,785 | 8,641 | 88.3% |
第98回 | 2013 | 2012(平成24) | 11,288 | 8,929 | 79.1% |
第99回 | 2014 | 2013(平成25) | 12,019 | 7,312 | 60.8% |
各大学の国家試験対策
大学によっては薬剤師国家試験予備校の講師を招いて授業を行う例も知られている。
出典
- ↑ 薬剤師法第11条
- ↑ 薬剤師法第12条
- ↑ 薬剤師法第16条1項、薬剤師法施行令第10条
- ↑ 薬剤師法第13条、薬剤師法施行令第9条
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