高尿酸血症

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テンプレート:Infobox Disease 高尿酸血症こうにょうさんけっしょう)とは、ヒトの血中に存在する物質尿酸の血中濃度が異常に高い状態を言う。

解説

具体的数値としては、血中尿酸濃度が7mg/dLを超えると高尿酸血症とする。DNAの合成に不可欠な物質であるプリン体の産生過剰あるいは排泄低下がその原因である。

生活習慣病として誰にでも起こりうる。体が合成する尿酸は食物由来の尿酸より数倍多いとされ、肥満が決定的な危険因子となる。プリン体の多い煮干しレバー白子などは長期にわたって大量に摂取すれば危険因子である。

グルコースリン酸化されてグルコース-6-リン酸となって細胞内に一時的に留まりゆっくりと解糖されるのに対して、アルコール果糖の代謝にあたっては急速に解糖が進み乳酸の生成が急速に進みアシドーシスが進む場合があり[1]、尿酸の排泄や析出に影響を与え、痛風を起こすきっかけとなることがある。果糖は果物を常識的な量で摂っている分には問題ないが、工業的に作られた果糖を清涼飲料水から大量に飲むと問題が発生する懸念が否定できない。

特殊例には、先天性の原因としては、HGPRT欠損症レッシュ・ナイハン症候群)やAPRT(アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)欠損症が知られている。APRT欠損症は、後天性の原因としては、薬物(利尿薬アスピリン)、悪性腫瘍などがある

詳細に検討すると、高尿酸血症をおこす患者は、尿酸の排泄が低下している患者と産生が亢進している患者にわけられる。日本では尿酸排泄低下型が60%、産生亢進型が20%、混合型が20%をしめる。

ヒトを含めたヒト上科は尿酸をアラントインに分解する酵素である尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ)が失活している[2]ことから高尿酸血症をひきおこす(下流をせき止められた川の状態である)。霊長類ヒト上科を除く多くのほ乳類はウリカーゼを有しており、尿酸5-ヒドロキシイソ尿酸に酸化し、さらにアラントインに酸化・代謝することができるため先天性の原因がないかぎり高尿酸血症がおこることはない。

尿酸オキシダーゼによる代謝反応)
尿酸+O2+H2O→5-ヒドロキシイソ尿酸+H2O2→アラントイン+CO2 

なぜヒトを含む霊長類ヒト上科がウリカーゼを失ってしまったかは明らかではないが、進化の途中において突然変異によりウリカーゼを失ってしまった霊長類ヒト上科がその環境に適していた可能性はある。あるいは、ある時代の霊長類は肉・魚を主なエネルギー摂取源としなかったため体内へのプリン体の蓄積がなく、ウリカーゼがないことが生存について問題がなかったというのもありうる仮説である。

ヒト上科の共通の祖先が旧世界のサルから分枝した際に、尿酸オキシダーゼ活性が消失したものと推定される[3]

原因

尿酸は産生と排泄のバランスが保たれているので、正常では一定の範囲の値をとる。このバランスが崩れることによって高尿酸血症になる。バランスの崩れ方で二通りに分類される。

産生過剰型

排泄低下型

合併症

痛風
激痛を伴う関節炎 で、足の親指側の中足趾関節というところに好発する。初発で50%、2回目以降で90%がそこに発症する。
痛風結節
手足、耳介の皮下に生じることが多い。関節周囲にも生じる。高尿酸血症の治療ができなかった時代には多くみられたらしい。今では、医療機関への受診が不十分な患者でまれに見る程度である。
尿酸結石
尿路結石症の一つであり、背中に激烈な痛みを引き起こす。
腎障害
尿細管への尿酸の沈着がその原因であり、間質性腎炎の形態をとる。進行すると腎不全を引き起こすこともある。
尿酸は酸性尿で析出しやすく、血清尿酸値の上昇は腎機能の低下を伴う。高尿酸血症の治療において尿pH は6から7 に保つことが適切とされており、尿pH6-7が尿酸が最も析出しにくい範囲で腎機能が良好であった[4]
動脈硬化症
尿酸は抗酸化物質であると同時に、炎症惹起物質である。血管では、尿酸により炎症が起こり、血管平滑筋細胞を中心とした動脈硬化が進み、心血管イベントを引き起こすと考えられている。
高血圧
国立病院機構九州医療センターの研究によると、尿酸値の閾値を男性で7.0mg/dL以上、女性で6.2mg/dL以上としたとき高血圧症患者が高尿酸血症を合併症とする率は男性34.1%、女性16.0%で認められ、約9割は排泄低下型の高尿酸血症であった[5]

検査

  • 血清尿酸値>7.0mg/dLが、性別や年齢を問わない診断基準。但し、女性では >6.2mg/dLを心血管リスク増大の観点から採用する場合もある。
  • 病型分類のため、血中及び尿中の尿酸値を測定する。また、白血病などの悪性腫瘍がないか、腎障害や尿路結石がないか、糖尿病など他の生活習慣病がないかなどをチェックする必要がある。

治療

  • 食餌療法
    • アルコールや清涼飲料水の摂取量の節制をする。特にビールなどのアルコール飲料の摂取量は少ないほうが好ましい。
    • 食事の影響はそれほど強くはないものの、動物性食品に多いプリン体の摂取を控えめにする。
    • 十分な量の水分を摂取し、尿酸を尿として排出する。
    • 野菜類などを多く摂取し、尿をアルカリ性に保つ。
    • 運動、ストレスの解消もすすめられている。
以上、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(10年)』[6]より。
  • 薬物療法
    • 米国のガイドラインが、痛風発作をおこしていない高尿酸血症患者に対する治療を推奨していないことから、やや現場に混乱がある。ただ、米国の考え方にはコストの考えが強く働くため慎重に見極める必要がある。日本では、2010年のガイドライン改定により、無症状であっても血清尿酸値7.0mg/dL(従来は、9.0mg/dL)以上を薬物療法の適応とした。尿酸産生亢進型の患者には尿酸合成阻害薬(アロプリノール)、尿酸排泄低下型の患者には尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロンプロベネシド)を使用するのが原則である。
    • 高尿酸血症は痛風のみならず尿酸結石のリスクでもある。尿中pHが5以下の患者では、尿をアルカリ化するためウラリット(クエン酸ナトリウム・クエン酸カリウム製剤)の内服、尿量を増やすために水分を多く摂ることが尿酸結石の予防・治療に重要である。(クエン酸#利用参照)

脚注

  1. 高橋隆一高カロリー輸液施行中に認められるアシドーシス
  2. テンプレート:Cite journal
  3. テンプレート:Cite journal
  4. 健康診断受診者の血清尿酸値と尿中pHが腎機能に及ぼす検討、桑原 政成ほか、痛風と核酸代謝、痛風と核酸代謝 Vol. 36 (2012) No. 1
  5. 高血圧患者の高尿酸血症合併 日経メディカルオンライン 2008年10月13日
  6. 日本痛風・核酸代謝学会編/医療・GL(10年)/ガイドライン 医療情報サービス Minds(マインズ)

外部リンク