一場事件
一場事件(いちばじけん)は、2004年にプロ野球の複数球団がドラフト自由枠での獲得を目指していた一場靖弘(明治大学硬式野球部)に対し、日本学生野球憲章に反して現金を渡していたことが発覚した事件である。
球界再編問題の一部分としても扱われることが多い。
概要
読売ジャイアンツ
テンプレート:By8月13日、読売ジャイアンツが2003年12月からの7ヶ月間、一場に対して“食事代” “交通費” “小遣い”などの名目で数回にわたり総額約200万円の現金を渡していたことを明らかにし、社長の土井誠、球団代表の三山秀昭を始めとする編成に関与した幹部4人を解任、渡邉恒雄と会長の堀川吉則も引責辞任すると発表した。渡邉はオーナー辞任後、会長に就任した。
日本学生野球憲章は、第13条2項で「プロ野球球団への入団を条件とする金品の支給または貸与を受けることを禁ずる」と書かれているが、全国高校野球選手権大会・全日本大学野球選手権大会・国民体育大会などで活躍した選手の獲得を巡って、同憲章に抵触する裏金が飛び交っているとの噂は従来から伝わっていた。読売ジャイアンツの発表はこの噂が事実であったことを意味し、社会に大きな衝撃を与えた。この事件を受けて、一場と野球部総監督だった別府隆彦は金銭授受の事実を認め、一場が8月14日に退部届を提出[1]。別府も8月16日に監督辞任を表明した。
これに対し、コミッショナーの根來泰周は8月16日、「事態には厳正に対処する」と表明したものの、過去に遡及しての調査は「各球団の自浄能力に委ねる」と消極的な態度を示し、日本学生野球協会も同日「当該選手は野球部退部によって連盟の傘下から外れており、学生野球憲章に基づく処分の対象とはしない」とした。根來は、9月7日に読売ジャイアンツを戒告と、現金500万円または同額の野球用具を野球育成関係団体に寄付させるように命令した。
横浜ベイスターズと阪神タイガース
朝日新聞(2004年10月22日付)によると、一場が先に読売ジャイアンツから現金を受け取った以外に、横浜ベイスターズからも現金を受け取っていたと報じた[2]。さらに同日、阪神タイガースからも金銭を受けていたことを別府が明らかにし、問題は他球団にも波及した。
横浜は、2003年12月 - 2004年5月までの間に総額約60万円を一場に渡したほか、8月下旬に担当スカウトが球団の事情聴取に対し「現金は渡していない」と虚偽の報告を行っていた。また阪神も、2003年12月 - 2004年3月までの間に総額約25万円を一場に渡していた。阪神社長の野崎勝義は、事件が発覚した際に「うち(阪神)ではそのようなこと(裏金を渡したこと)はない」と虚偽の報告をした。この結果、横浜は球団オーナーの砂原幸雄(TBS会長)がオーナーを辞任したほか、阪神オーナーの久万俊二郎が辞任したが[2]、当初は辞意を表明していた野崎は球団幹部に降格しただけで残った。
広島東洋カープ
広島東洋カープでも一場に対する金銭の授受が発覚したが、オーナーの松田元は「適正な額」と発言し、オーナー辞任には発展しなかった。なお、一場に支払った金銭は交通費の2000円(実費補償)だったといわれる。
その後
この事件が影響して、金銭を授受しなかった他球団も一場のドラフト指名には消極的だった(事件が発覚した時期がドラフト会議前だっただけに、各球団が戦略を見直す時間が無かったことも一因)。そのため、一場は日本プロ野球入りを断念し、メジャーリーグや中華職業棒球大聯盟に入団することを検討したが、2005年に創設された東北楽天ゴールデンイーグルスが即戦力の投手の補強を目指していたため、一場は自由獲得枠で楽天へ入団することになった。