慣性
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慣性(かんせい、英語:inertia)とは、ある物体が 外力 を受けないとき、その物体の運動状態は 慣性系 に対して変わらないという性質のことである。
静止した物体に 力 が働かないとき、その物体は慣性系に対し静止を続ける。運動する物体に力が働かないとき、その物体は慣性系に対し運動状態を変えず、 等速直線運動 を続ける。これは 慣性の法則(運動の第1法則)として知られている。
力が働いているときではニュートンの運動方程式より
- <math>\vec{a}=\frac{\vec{F}}{m}</math>
慣性が大きければ、同じ力 <math>\vec{F}</math> を加えても加速度 <math>\vec{a}</math> は小さくなる。これは質量 <math> \boldsymbol{m} </math> が大きいということである。この 質量 <math> \boldsymbol{m} </math> は、各物体の慣性の大小を表す量であり、慣性質量と呼ばれる。
物体の回転を考えるときにも、回転のし易さの大小(慣性モーメント)として、広い意味での慣性を定義することが出来る。
アイザック・ニュートンが慣性を定式化することにより、鳥が何故取り残されないのか、地球が何故止まらないで動き続けているのか、という地動説の疑問に答え正しさを証明させた。
慣性力
「慣性力」には2つの用法がある。
- 観測者が慣性系に対して加速もしくは回転もしくはこの両方をしているとき、実際に働いている力だけを考慮した場合はニュートンの運動方程式は成り立たない。ここで「仮想の力」を仮定すれば運動方程式を成立させることができる。この仮想の力を慣性力と呼ぶ。この慣性力は、観測者の座標系の、慣性系に対する並進的な加速によるものと、慣性系に対する回転によるものとに分けて考察することができる。
- 観測者の座標系の並進的な加速によるもの
- 座標系の加速度と反対方向に、この加速度の大きさと各物体の質量との積の大きさの慣性力が観測される。
- 観測者の座標系の回転によるもの
- これはさらに3つに分類できる。
- 遠心力
- 座標の回転の中心から離れる向きに働く力として観測される。大きさは、物体の質量をm、座標系の回転の角速度をω、物体と回転の中心との距離をr、観測者から見た物体の速さをvとすると、mrω2もしくはmv2/rと表される。
- コリオリの力
- 観測者が観測する物体の運動と直角をなす方向(回転が反時計回りなら物体の速度ベクトルに対して右向き、時計回りなら左向き)に働く力として観測される。大きさは、文字は上記と同じ物理量を表すとして、2mωvである。
- 座標の回転の角速度の変化による慣性力
- 回転の中心から見た物体の位置ベクトルと垂直な方向に働く力として観測される。反時計回りに加速すると中心から見て右向きに、時計回りに加速すると左向きに働く。角速度の変化が大きいほど大きい慣性力が観測される。
- 質点や物体に外力が作用するとき、見かけの力を仮定し全体の力がつり合ったとみなしたとき、この見かけの力を慣性力という。運動の問題を力のつり合いの問題に帰着させることを、ダランベールの原理という。
参考文献
理学工学基礎物理