百葉箱
百葉箱(ひゃくようそう、ひゃくようばこ)とは、温度計や湿度計を入れ、正確な気温を計測するために設置された(屋根付きの)箱の事である。気温は世界共通の条件の下で計測されるためこの条件を満たすために作られた。呼称については現在においては「ひゃくようばこ」の読みが定着しているが、本来は「百葉窓」であって「ひゃくようそう」と読むのが正しいともいわれ[1]、呼称は統一されていない。百葉箱や雨量計などを設置した気象観測のための場所を「露場」と言う。
歴史
19世紀中頃、イギリスで研究されはじめた。開発初期の百葉箱は箱型ではなく屋根付きの板であり、今に見る箱型の百葉箱(スティーブンソン型百葉箱)が使われ始めたのは1873年からである。日本の場合、1874年7月に内務省測量司がイギリスより導入したのが始まりである。当初は「板簾」と訳され、1886年に制定公布された気象観測法で「百葉箱」という言葉が初めて使われた。全国の小学校の校庭にも設置されるようになったのは1953年に理科教育振興法が施行されてからで文部省の奨励もあったからといわれているが、第二次世界大戦前から小学校に百葉箱は設置されており、気象観測が行われていた。
長い間気象観測に重要な役割を果たしてきたが、1993年1月、気象庁は自動観測機器の普及に伴い百葉箱での観測を廃止した。廃止後は職員がボランティアで補修や維持、管理に当たってきた。しかし、老朽化が進むにつれて維持、管理が難しくなっていき、次々と百葉箱が撤廃されていった。小中学校では百葉箱を設置している学校はまだ多いが、こちらも老朽化が進むにつれて維持、管理が難しくなっていき、百葉箱が撤廃されていっている状況である。近年、若い教員の中には百葉箱そのものを知らない人が増えている。
2007年現在、気象台・アメダス観測点では、地上高1.5mのファン付きの通風筒に入れられた電気式温度計(白金抵抗温度計)・電気式湿度計(静電容量湿度計)により測定している。これらを設置した場所も同様に露場と呼ばれる。
変わったところでは、大阪市営地下鉄の地下にあるプラットホーム上にも百葉箱が設置されていた。列車が風を起こす環境下で温度・湿度を測定するために、最初の区間が開業した翌年の1934年(昭和9年)に初めて設置され、冷房整備などの計画立案にも貢献してきたが、技術の進歩により測定機器を百葉箱に収める必要がなくなり、2012年(平成24年)に姿を消した[2]。
仕様
より正確な気温を計測するため、以下のような工夫がなされている。
- 太陽光を反射し、熱を中へとじこめないよう白のペンキで塗られている。
- 熱を中へ伝えにくくするために木で作られている。
- 風通しを良くし、日光や雨の侵入を防ぐために鎧戸になっている。
- 直射日光が差し込まないよう、扉は北半球では北向きに、南半球では南向きに設置されている。
- 熱の跳ね返りを防ぐため、芝生など土の上に設置されている。
- 通常、地上1.2~1.5mの高さに設置する。世界気象機関の規則では、地上1.25~2.0mの高さで測定することになっている。
実際の気温との誤差
百葉箱内では、実際の気温よりも年平均気温では約0.1℃、最高気温の年平均値では約0.2℃、晴れて風が弱い日における日中の最高気温では約1℃高めに観測されるという特徴がある[3]。
脚注
- ↑ 森田さんのお天気ですかァ? お天気Q&Aテンプレート:リンク切れ - 百葉箱について
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 温暖化と都市緑化Q&A - 「Q1.4 地上観測データの補正量の大きさは?」A1.4 気温の項を参照
外部リンク
- テンプレート:Cite journal
- 百葉箱 理科ねっとわーく(一般公開版) - 科学技術振興機構