祝詞
祝詞
祝詞(のりと)は、神道において神徳を称え、崇敬の意を表する内容を神に奏上しもって加護や利益を得んとする文章。通常は神職によって独自の節回しによる朗誦が行われ、文体・措辞・書式などに固有の特徴を持つ。
解説
祝詞(のりと)の語源は「のりとごと」(宣之言・宣処言・宣呪言)であるとする説が従来もっとも一般的であったといえる。
神職などの奉仕者が祭神に祭祀の意義や目的を奏上する言葉(人間が神に対してみずからの祈願するところや、神を称えるこころを表現するために記した文章)を意味するものであるが(奏上体)、古くは祭祀の場に参集した人々に宣り下される言葉でもあった(宣命体)。「のりと」の「のり」には「宣り聞かせる」という意味が考えられることから、宣命体の祝詞が本義を伝えるものであると考えることもできる。
折口信夫は古代祝詞の用例から「〜と宣る(宣ふ)」と結ぶノリト型と「〜と申す」と結ぶヨゴト型の別のあることを探り出し、高位にあるものが下位にあるものへ祝福を授けるための言葉がノリトすなわち「宣り言」であり、その礼として下位にあるものが高位にあるものを称え服従を誓う言葉がヨゴト(寿詞)であると解した。
すなわち現今云うところの祝詞は、折口のいわゆるヨゴト(寿詞)の系譜に属する祈願の言葉がたまたま「祝詞」の名を取ったものであるということもできる。祝詞の語源・本義に関する右の両説は現在でも容易に決着がつけがたい。
祝詞と名づけられた文章のもっとも古い例は、『延喜式』巻八に収録する29篇と藤原頼長『台記』別記所収「中臣寿詞」の計30篇である。以上はすくなくとも奈良時代以前にまで遡りうる貴重な文献であり、古代の祝詞の姿を現在に伝える重要な資料である。延喜式所収の29篇の祝詞は以下のものである。
- 祈年祭
- 春日祭
- 廣瀬大忌祭
- 龍田風神祭
- 平野祭
- 久度古關(祭)
- 六月月次(祭)
- 大殿祭
- 御門祭
- 六月晦大祓
- 東文忌寸部献横刀時ノ呪
- 鎮火祭
- 道饗祭
- 大嘗祭
- 鎮御魂齋戸祭
- 伊勢大神宮
- 二月祈年(祭)
- 六月十二月月次祭
- 豊受宮
- 四月ノ神衣祭
- 六月ノ月次祭
- 九月ノ神嘗祭
- 豊受宮同祭
- 神嘗祭
- 斎内親王奉入時
- 遷奉大神宮祝詞
- 遷却祟神祭
- 遣唐使時奉幣
- 出雲国造神賀詞
- 中臣寿詞
このうち1 - 7は各神社の祭礼ごとの祝詞、8 - 15は宮中祭祀にかかわる祝詞、16は伊勢神宮にかかわる祝詞、17 - 20は補遺である。以上のうちに特徴的なのは「〜と申す(白す)」と結ぶ奏上体が大半を占めるのに対して祈年祭、六月月次祭(大祓)、大嘗祭・神嘗祭においては「〜と宣る(宣ふ)」とする宣命体がとられていることでこれらの祭儀が発生や形式においてそのほかの祭儀と性格を別にしていたことを思わせるものである。
その目的によって様々な種類があり、現在でも大和言葉が用いられている。基本的に祝詞は祭儀の度に作文するが、決まった祭儀(初宮詣、結婚式など)では同じ祝詞を用いることが多い。また、祭儀の前に行う修祓での「祓詞」(はらえことば)や大祓での「大祓詞」(おおはらえことば)も言葉が決まっている。
近年では祝詞例文集が数多く登場している。それを作文の上で参考にするのは問題ないが、頼りすぎて表現が固定化され本来の祝詞の意義からは外れているという指摘もある。
神職が(神社本庁傘下の神社に於いて)奏上する場合、座に着き二拝し奏上した後に二拝二拍手一拝する。無論作法はこの限りではない。
現代の祝詞
神主が神前で神々にむかって言上するときの言葉。地鎮祭、結婚式、葬場祭、解体(建物を解くこと)時、新車清祓、ほか、色々な行事の際に祝詞をあげる。神主は場合に応じ祝詞を作文する。[1]
文献
- 菅田正昭 『よくわかる祝詞(のりと)』 2010年 創土社 ISBN 978-4-7988-0206-0
脚注
- ↑ 菅田[2010:218-238]