このわた
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このわた(海鼠腸)は、ナマコの腸(はらわた)の塩辛である。寒中に製した、また腸の長いものが良品であるとされる。尾張徳川家が師崎のこのわたを徳川将軍家に献上したことで知られ、ウニ、からすみ(ボラの卵巣)と並んで日本三大珍味の一つに数えられる。
主な産地は伊勢湾、三河湾であった。今では、瀬戸内海や能登半島など各地で作られている。
製法
ナマコから脱腸器で腸を抜き取り、これを海水でよく洗い、内部にある泥砂をとりのぞき、ざるにあげて水気をきる。 腸1升に上等塩2合ないし3合をくわえ、かきまぜ、さらに水気をきり、一昼夜 桶または壺に貯蔵する。 ナマコ100貫から腸8升が、腸1升からこのわた7合ができる。
ふつうは塩蔵されたものが市販されるが、生(なま)ですすっても、三杯酢に漬けても美味である。酒によくあうとよろこばれる。このわたに熱燗の酒をそそいだものは、「このわた酒」という。
「このわた汁」は、このわたをまな板の上で庖丁で叩き、椀に入れ、極く淡仕立ての汁を注ぐ。こうすればこのわたの真の味を賞し得るという。また味噌仕立てにもされ、三州味噌を庖丁で細かく切り、水で溶き、鰹節、昆布を入れて3時間置き、裏ごしに掛け、汁を火にかけて味を調え、このわたを加え、さっと煮る。