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二十七宿(にじゅうななしゅく)とは、星宿の分割法の一つである。江戸時代初期(1685年)に全廃された。月の見かけの通り道である白道を、27のエリアに等分割したものである。名称ももちろんこの数字に由来している。
発祥を完全に異にする二十八宿と区別するため、単に古法という場合がある。
概要
インド占星術・天文学でいうナクシャトラである。天体の位置を表すのに使われる。その流れをくむ宿曜道の基本要素となっている。
なお、中国で使われている二十八宿とは発祥が異なるが、大蔵経に含まれる摩登伽経において、下記の通り二十八宿と同じ漢字名が割り振られた。なお、二十八宿にあり二十七宿にはない宿は、牛宿である。
ちなみにこの27という数字は、月の天球に対する公転周期である27.32日に由来する。
一日の間に、月は一つのエリアを通過すると言うわけである。
歴史
古星法の元祖であるインドで、宿曜経、智論などが二十七宿に属していた。
日本では平安時代頃より、日本の暦(宣明暦)の暦注の一つであった。江戸幕府天文方渋川春海による貞享2年(1685年)の改暦によって、全廃された。
かわりに取り入れられたのが、中国を起源とする二十八宿である。改暦後の貞享暦は別名を大和暦ともいい、日本人(渋川)が独自で開発した暦法として知られるが、星宿に関しては反対に中国流を取り入れたのである。
明治改暦により、暦注そのものが廃止された。のちに暦の発行が民間に解禁されてからは、二十七宿・二十八宿どちらを使用しても咎められることがなくなっていた。
1941年に高野山大学出版部が発行した森田龍遷著『密教占星法』によると、「二十七宿が正当でこちらを使用するべき」といろいろな文献を上げて解説されている。寺院仏閣が発売している多くの暦は、この著書に基づいて二十七宿で記載されていることが多い。
中国(日本)の旧暦(太陽太陰暦)における月日がわかれば、自動的に二十七宿が決定される。
中国旧暦9月1日 |
氐
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中国旧暦10月1日 |
心
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中国旧暦11月1日 |
斗
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中国旧暦12月1日 |
虚
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中国旧暦正月1日 |
室
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中国旧暦2月1日 |
奎
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中国旧暦3月1日 |
胃
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中国旧暦4月1日 |
畢
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中国旧暦5月1日 |
参
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中国旧暦6月1日 |
鬼
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中国旧暦7月1日 |
張
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中国旧暦8月1日 |
角
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各月の朔日の宿は以上の通りであり、あとは日の分だけ進ませれば良い。
なお、同一の月の中では宿をひとつずつ進めていくが、(旧暦で)翌月に移行するときには上表に従うため、宿をジャンプしたり同じ宿が続いたりすることがある。以上の手法は、単に「古法」とも呼ばれることがある。
この二十七宿は歳時記や日常生活にも多く影響を及ぼしている。例えば年末の煤払いを12月13日に行うのは、上表の通り、旧暦12月13日の二十七宿が、よろずのことに吉とされる「鬼」であったからである。暦の「鬼」の日の暦注下段には鬼宿日(きしゅくび)あるいはきしく日と特記される。鬼宿日は「七箇の善日」の一つである。
ちなみに、インドの暦では必ず以下の対応がある。
満月のとき、月が以下の宿にあると |
インド暦月日は
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クリッティカー |
クリッティカー月15ティティ日
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ムリガシラー |
ムリガシラー月15ティティ日
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プシャー |
プシャー月15ティティ日
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マガー |
マガー月15ティティ日
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ウッタラ・パールグニー |
パールグナ月15ティティ日
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チトラー |
チャイトラ月15ティティ日
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ヴィシャーカー |
ヴィシャーカー月15ティティ日
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ジェーシュター |
ジェーシュター月15ティティ日
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シュラヴァナ |
シュラヴァナ月15ティティ日
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プールヴァ・バードラパダー |
バードラパダー月15ティティ日
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アシュヴィニー |
アシュヴィニー月15ティティ日
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上の二つの表は、中国旧暦15日が満月である限り(そうなる場合が多い)、全く同じことを言っている。
ティティの15日は必ず満月である。そして
氐日から14日後 |
昴
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心日から14日後 |
觜
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斗日から14日後 |
鬼
|
虚日から14日後 |
星
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室日から14日後 |
翼
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奎日から14日後 |
角
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胃日から14日後< |
氐
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畢日から14日後 |
心
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参日から14日後 |
箕
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鬼日から14日後 |
女
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張日から14日後 |
室
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角日から14日後< |
婁
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という関係が必ず成立するからである。なお、チャイトラ月が中国暦の2月に当たる。
インド暦では、シャカ族の暦の伝統を受け継ぐ暦ではチャイトラ月が新年(1月)となるが、すべての地方の暦でそうなっているわけではない。
二十七宿は、インド占星術の十二宮と密接な関係がある。ただし、西洋占星術の十二宮とは直接の関係はない。だから、西洋占星術の星座をそのまま当てはめてはいけない。ソフトウェアStargazerの宿曜経の実位置モードは、この過ちを犯している。
占い
二十七宿の直日の吉凶と、直日に生まれた人(その宿を本命宿とする人)の性格は以下の通り。
漢訳名 (梵名) | 直日の吉凶 | 直日に生まれた人の性格 |
畢宿、長育宿 (アシュヴィニー)</td><td>農作業、田畑や住宅の修理や橋や道の修理、用水路を造る事など土木工事関連に吉。 借金や出費、(穀物などでの)納税に凶。</td><td>財産や子供に恵まれる。聡明で施しを好む。性格は頑固な所があり口数は少ない。ゆったりとした動作。礼儀にかなった身のこなしをしている。</td> |
<tr><th>觜宿、鹿首宿
(バラニー)</td><td>舎屋の建造、部屋の内装の整え、結婚、星の災いを除く為の修法などに吉。</td><td>徳行高く慎み深い。薬に頼りがち。普段は無口で、軽はずみな行動はしない。人の為を思い法を重んじる。</td></tr>
<tr><th>参宿、生眚宿
(クリティッカー)</td><td>財産を得る事、地面に穴を掘る事、乳製品を造る事や油を搾る事、酒の醸造等に吉。また、あらゆる剛猛の事に吉。</td><td>猛悪。怒りっぽく口が悪い。事を為すにあたっては、決心は固く怯む事が無い。</td></tr>
<tr><th>井宿、増財宿
(ローヒニー)</td><td>慈善を行うと良い結果になる。また神を祀る事、結婚・結納に吉。
薬の服用に凶。</td><td>金銭の出入りが激しい。尊敬・称賛を受ける事を好み、立身出世欲が強い。病気がちだが子供には多く恵まれる。軽率で人情味に欠ける面もある。</td></tr>
<tr><th>鬼宿、熾盛宿
(ムリガシラー)</td><td>あらゆる事に吉。特に名誉や長寿を求める事、官位を受ける事、宗教への入信や奥義を学ぶ事に吉。</td><td>最も恵まれた生まれ。見た目も端正で心にも邪な所が無い。妻妾に恵まれる。</td></tr>
<tr><th>柳宿、不観宿
(アールドラー)</td><td>逆賊の征伐、敵城を攻めるなど、剛猛の事に吉。</td><td>外見は眠たげな顔つきだが、反面内心は強情で怒りっぽく、
人を欺く事がある。施しを好む反面、他人の物を奪う事もある。物事に熱中しやすい。</td></tr>
<tr><th>星宿、土地宿
(プナルヴァス)</td><td>建物の修理、種蒔きに吉。ただし五穀の種蒔きには不向き。</td><td>奴僕や家畜、財産に恵まれる。知性的で評判が良いが、悪知恵も働く。神を祀る事を好む。</td></tr>
<tr><th>張宿、前徳宿
(プシャー)</td><td>慶事に吉。結婚、住宅の修理、官職を受ける事、衣服を作る事、師僧から奥義を学ぶ事などに吉。</td><td>妻妾は多いが子供は少ない。言葉づかいが巧みで人の心を掴み、人に愛される。自分自身ではあまり財産を築けないが、(相続、暖簾分けなどで)財産を譲り受ける。智恵は回るがあまり実行には移さない。</td></tr>
<tr><th>翼宿、北徳宿
(アシュレーシャー)</td><td>あらゆる事に吉。特に不動産・土木、農業などに関する事によい。</td><td>乗り物に乗る事や音楽を好む。言葉遣いは穏やか。</td></tr>
<tr><th>軫宿、象宿
(マガー)</td><td>急速の事に吉。また、外国など遠方への旅、衣裳の修理、技芸を学ぶ事、結婚、田畑の開墾などに吉。</td><td>財産を築く。よく旅をし、乗り物に乗る事を好む。性格は嫉妬深い所がある。器用で物事を手際よくこなす。あまり病気はしない。</td></tr>
<tr><th>角宿、彩画宿
(プールヴァ・パールグニー)</td><td>晴れがましい事全般に吉。豪華な衣裳を作る事など。また、行軍、観兵式、軍功のあった将兵に褒賞を与える事などに吉。</td><td>教典などをよく学ぶ。動物を多く飼う。手先が器用で人情に厚い。子供は男子三人に恵まれる。</td></tr>
<tr><th>亢宿、善元宿
(プールヴァ・パールグニー)</td><td>象や馬など家畜の調教、結婚、交流、種蒔きなどに吉。</td><td>人に先んじ、言葉が巧み。資産を形成し家を繁栄させる。</td></tr>
<tr><th>氐宿、善格宿
(ハスタ)</td><td>穀物や果樹の種蒔き、酒の醸造に吉。
建物の増改築、乗り物を動かす事に凶。</td><td>神仏を祀る事を好む。善良で王侯や君主の寵愛を受ける。財産に富む。知性的。</td></tr>
<tr><th>房宿、悦可宿
(チトラー)</td><td>結婚などの慶事に吉。また宗教への入信や奥義を学ぶ事に吉。</td><td>威厳がある。子供や財産に多く恵まれ、家を栄えさせる。</td></tr>
<tr><th>心宿、尊長宿
(スヴァーティ)</td><td>王侯が物事を行う事に吉。神仏に祈る事や官位を受ける事、象や馬などの家畜を調教したり乗ったりするのに吉。
散財や借金に凶。</td><td>運がよい。多くの人々に愛され、君主に厚遇される。悪を挫き善を奨める性格。</td></tr>
<tr><th>尾宿、根元宿
(ヴィシャーカー)</td><td>沐浴や呪術、住宅の修理、薬の調合、入信儀式などに吉。</td><td>食べ物や財産に恵まれる。性格は頑固、闘争を好む所がある。他の人から財産を得る。</td></tr>
<tr><th>箕宿、前魚宿
(アヌラーダー)</td><td>池や溝を掘るなど水に関する事に吉。また花や薬草の種蒔き、田畑の修理、酒の醸造に吉。</td><td>商才があり金儲けが得意。利他の精神が有り、他人の為に苦労を厭わない。酒飲みで女好き。やや病気がち。</td></tr>
<tr><th>斗宿、北魚宿
(ジェーシュター)</td><td>衣服の新調、木の手入れ、乗り物や武器を造る事、倉庫を建てるなど不動産に関する事に吉。</td><td>乗馬や野山を行く事を好む。また、神仏を祀ったり願い事をするのを好む。善き友に恵まれる。器用で才能があり金持ち。</td></tr>
<tr><th>女宿、沙栴宿、耳聡宿
(ムーラ)</td><td>公共事業など公の事に吉。また、技芸を学ぶ事、髪を整える事、按摩などに吉。
衣服の新調に大凶、死に至る場合もあるとされる。また、争いごとに凶。</td><td>病気になりにくく健康に恵まれる。施しを好み、法と秩序を重んじ勤勉。祖先を敬う。</td></tr>
<tr><th>虚宿、貪財宿
(プールヴァ・シェーダー)</td><td>あらゆる急速の事に吉。また学問を修め、沐浴をし、子授けの祈祷を受けるのに吉。また僧や神官への布施、城を築く事、兵士を配する事、衣服を新調し着飾る事などに吉。</td><td>食べ物や財産に困らない。王侯君主の寵愛を受け、また神を祀るのを好む。一生幸せに過ごせる。</td></tr>
<tr><th>危宿、百毒宿
(ウッタラ・シェーダー)</td><td>薬の服用や調合など、病気への対処に大吉。池を造る事や麻の種蒔き、行商に出る事、造船や酒の醸造などに吉。</td><td>酒色に耽る事がある。物怖じしない性格で打たれ強く、怒りっぽい所もある。人づきあいはあまり長続きしない。また、医学や薬学に適性あり。</td></tr>
<tr><th>室宿、前賢迹宿
(シュラヴァナ)</td><td>剛猛の事に吉、罪人の取り調べや逃亡者を捕らえる事などに吉。
それ以外の事には凶。</td><td>猛々しく怒りっぽい性格。略奪を好む。無慈悲。</td></tr>
<tr><th>壁宿、北賢迹宿
(ダニシュター)</td><td>都市を築く事、結婚、長寿や福徳繁栄を祈って修法を行うのに吉。
南の方角に行く事は凶。</td><td>王侯君主の寵愛を受ける。子供に多く恵まれる。慎み深い性格で、布施を好み神々や先祖を敬う。学問をよく修める。</td></tr>
<tr><th>奎宿、流潅宿
(シャタビシャー)</td><td>倉庫や畜舎を建てる事、家畜を数える事、酒や乳製品を作る事、着飾る事、遠方に出かける事に吉。</td><td>家業を受け継いで成功し、財を成す。金の出入りが激しく遊び好きだが、最終的にはさらに財を得る。布施を好む。子孫や 家畜などの財産に恵まれ、教典にも精通している。</td></tr>
<tr><th>婁宿、馬師宿
(プールヴァ・バードラパダー)</td><td>あらゆる急速の事に吉。また薬の服用や馬などの家畜の調教などに吉。</td><td>多芸多才。病気になりにくく、また医術の才有り。土地や使用人を多く持つ。君主に真面目に仕える。施しを好み、人づきあいはそう悪くないが、親密になる事はない。</td></tr>
<tr><th>胃宿、長息宿
(ウッタラ・バードラパダー)</td><td>あらゆる剛猛の事に吉、逆賊の征伐や悪巧みを暴く事など。また王侯が善行を行うのに吉。</td><td>頑固者で短気、性悪。酒や肉を好む。嘘つきで、他人の物を奪い乱暴者で敵が多い反面、子孫や使用人、部下に多く恵まれる。</td></tr>
<tr><th>昴宿、名称宿
(レヴァティー)</td><td>調理等で火を使う事、家畜を数える事、薬の調合、畜舎を建てる事、悪人や逆賊を征伐する事、頭髪を剃る事などに吉。
旅行などには凶。</td><td>善行を心がけている。学問に励み、身なりもきちんとしている。強情な所があり、弁舌に巧み。多くの子供に恵まれる。</td></tr>
</table>