繊維
繊維(せんい、テンプレート:Lang-en-gb-short、テンプレート:Lang-en-us-short)は、動物の毛・皮革や植物などから得られる自然に伸びた、または人工的に伸ばされた細くしなやかで凝集性のある紐状の素材のことである。現在では化学などの技術によって人工的に作られたものも数多い。
概説
繊維とは、元来は布を織る材料となる糸の素材のことである。布になるためには、それが細長く、柔軟で、なおかつ耐久性に優れることが求められる。また、その太さは相当に細いものであってほしい。そのような構造への加工は高度な技術であるため、古くは元からそのような状態にあるものが利用された。現在では様々なものを繊維状に加工することが行われている。
どのようなものが繊維として古いものであるかは断定が難しい。おそらく動物の体毛、植物の樹皮から得られる繊維が古いものであろう。現在も植物の葉や皮をそのままに衣料として利用する例もあるから、そのあたりが起源なのであろう。動物の長い毛は直接に繊維として利用されたし、一部の植物はその皮層に長い繊維細胞を持ち、引き裂くだけでたやすく繊維状のものが手に入る。毛皮や皮も繊維を含むが、これらはむしろ直接に布状の構造が得られるものとして利用された。
言葉の意味
上記のように、繊維は元来は糸のように取り出せるものを指す。ここから、人工的に作り出した糸状の構造およびその素材を化学繊維または人造繊維という。それらは当初は天然繊維の代用として開発された。
形態上の基本的性質としては、細長いもの、すなわち幅(太さ)に対して長さがきわめて大きいものといえる。いわゆるアスペクト比の値としては1:1000が、その目安といわれている。
さらに、繊維は丈夫なものである。つまり、自然に放置しておいても分解しにくく、動物によって消化されにくい。このような成分を繊維質というが、その素材は動物繊維と植物繊維では大いに異なる。動物繊維の場合、ほとんどは特殊なタンパク質であり、植物繊維の場合、セルロースなどの多糖類である。ここからこのような成分のものをも繊維というようになった。食物繊維はこのような用例であり、実際には繊維状をしていないものをも含んでいる。
このような生物の繊維は、細胞レベル、あるいはそれ以下の構造であり、実際にはその構造は顕微鏡下でしか観察できない。また、顕微鏡レベルでしか繊維状の構造を確認できないものもあり、それらも繊維といわれる。フィブリン(繊維素)等がこれに当たる。
一方、生物体内の糸状の構造を指して繊維という例もある。その中には、繊維質ではないものもある。筋肉の構成要素である筋繊維、あるいは神経繊維がその代表的な例であり、これらにおける糸状の構造は細胞そのものである。
なお、生物体内の繊維に関しては線維という表記がなされることがある。これは医学分野に始まったもので、2000年頃には正式な表記として認められている。生物学の分野でも細胞生物学的な分野ではこちらを用いることも多くなっている。しかしそれ以外の分野、および一般には今も繊維の方が正式な表記と考えられる。各種の線維腫や線維症は、病変によって細胞が壊死した痕を線維が置換し本来の機能を果たせなくなった状態であり、多くの場合は切除や移植によってしか治療できない。
繊維の性質
繊維は、特に細長くなった固体である。このような構造は、強く引き延ばした場合か、ある特定の方向に分子が積み重なることで作られる。いずれにしても、そのために構成する分子の向きが揃う(配向)など、普通の固体の状態より強くなる例が多い。しかも絶対的に細いために柔軟である。また、生物素材では内部に空洞を持って管を作るなど、さらに複雑な構造を持つものもある。
これを緩く組み合わせた布などの場合、軽くて柔らかい上に、繊維の間に多量の空気を含むことから断熱効果が高い。衣服として使われる所以である。密に組み合わせた構造では、柔らかさは失われるが、単に固めたものに比べると柔軟で丈夫な構造となる。
天然繊維
化学繊維
いわゆる化学繊維の始まりは、ナイロンである。これは絹糸の代用を目ざして作られ、ストッキングにおける需要を完全に塗り替えた。これを機に高分子有機化合物による合成繊維は様々なものが作られるようになった。他方、金属やガラスなど元来は繊維の状態に加工できなかった物質から作られた繊維は、より多様な用途に用いられるようになった。
主な繊維メーカー
かつての繊維メーカー
- クラシエホールディングス(旧カネボウ。2005年限りで繊維から撤退)
- 上毛撚糸(現・価値開発。現在は不動産業が主力)
関連団体
報道機関