正規部分群
テンプレート:Hatnote テンプレート:Groups 数学、とくに抽象代数学における正規部分群(せいきぶぶんぐん、テンプレート:Lang-en-short)は、群の任意の元による内部自己同型のもとで不変な部分群である。正規部分群は、与えられた群から剰余群を構成するのに用いることができる。
正規部分群の重要性は、エヴァリスト・ガロアによって最初に明らかにされた。
目次
定義
群 テンプレート:Math の部分群 テンプレート:Math が正規部分群であるとは、テンプレート:仮リンクによって不変、すなわち テンプレート:Math の任意の元 テンプレート:Math と テンプレート:Math の任意の元 テンプレート:Math に対して、元 テンプレート:Math が再び テンプレート:Math に属するときにいう。これを
- <math>N \triangleleft G \quad(\iff \forall n\in{N},\,\forall g\in{G},\, gng^{-1}\in{N})</math>
で表す。任意の部分群について、以下の条件はいずれも今上げた正規性の条件に同値である。このため、これらの条件のどれかを正規部分群の定義としてもよい。
- テンプレート:Math の任意の元 テンプレート:Math に対して テンプレート:Math が成り立つ。
- テンプレート:Math の任意の元 テンプレート:Math に対して テンプレート:Math が成り立つ。
- テンプレート:Math における テンプレート:Math を法とする左剰余類全体の成す集合と右剰余類全体の成す集合とが一致する。
- テンプレート:Math の任意の元 テンプレート:Math に対して テンプレート:Math が成立する。
- テンプレート:Math は テンプレート:Math の共役類の和集合である。
- テンプレート:Math 上定義された群準同型で テンプレート:Math をその核に持つものが存在する。
最後の条件は正規部分群の重要性の一端を示すもので、ある群の上で定義される準同型写像全体の内部的に分類する方法を与えている。たとえば、単位群でない有限群が単純となるための必要十分条件はその群がその上の恒等的でない準同型像の全体に同型となることであり、有限群が完全群となるための必要十分条件はそれが素数指数の正規部分群を持たないことであり、また群が不完全群となるための必要十分条件は、その導来部分群がいかなる真の正規部分群をも補群として持たないことである。
例
- 単位元のみからなる群 テンプレート:Math} と、群 テンプレート:Math それ自身は、常に テンプレート:Math の正規部分群となる。テンプレート:Math} を特に「自明な部分群」と言う。群 テンプレート:Math は、自明な部分群と自身以外に正規部分群を持たないとき、単純群であると言う。
- 群の中心は正規部分群になる。
- 交換子部分群は正規部分群になる。
- より一般的に、テンプレート:仮リンクは正規部分群である。共役写像は自己同型であるためである。
- アーベル群 テンプレート:Math の任意の部分群 テンプレート:Math は正規部分群になる。式 テンプレート:Math が常に成立するためである。一方、非アーベル群だが、任意の部分群が正規部分群である群が存在し、テンプレート:仮リンクという。
- 任意次元のテンプレート:仮リンク(平行移動の集合のなす群)は、テンプレート:仮リンク(平行移動、回転、鏡像などのなす群)の正規部分群である。たとえば、三次元の回転、平行移動、逆方向への回転の結果は、単なる平行移動と見なせる。鏡像、平行移動、反対への鏡像も、単なる平行移動になる。
- テンプレート:仮リンクにおいては、角のピースのみを変更する操作の群が正規部分群となる。
性質
- 部分群の正規性は、テンプレート:仮リンクで保たれる。また、逆像をとる操作によっても保たれる。
- 正規性はテンプレート:仮リンクをとる操作によっても保存される。
- 正規部分群の正規部分群は、もとの群の正規部分群であるとは限らない。すなわち、正規性は推移的ではない。しかしながら、正規部分群の特性部分群はもとの群の正規部分群である。また中心因子の正規部分群はもとの群においても正規であり、特に直積因子の正規部分群は下の群でも正規部分群となる。
- テンプレート:仮リンク2の任意の部分群は正規部分群である。一般に、有限指数 テンプレート:Math をもつ テンプレート:Math の部分群 テンプレート:Math は、その正規核と呼ばれる、テンプレート:Math における指数が テンプレート:Math を割り切るような テンプレート:Math の正規部分群 テンプレート:Math を含む。特に、テンプレート:Math が テンプレート:Math の位数を割り切る最小の素数である場合、指数 テンプレート:Math の任意の部分群は正規部分群である。
正規部分群の束
群 テンプレート:Math の正規部分群全体の成す集合は、集合の包含関係に関して テンプレート:Math} を最小元、テンプレート:Math を最大元として持つ束を成す。テンプレート:Math の正規部分群 テンプレート:Math と テンプレート:Math が与えられたとき、テンプレート:Math と テンプレート:Math の「交わり」が
- <math>N \wedge M := N \cap M</math>
で定義され、「結び」が
- <math>N \vee M := N M = \{nm \mid n \in N \,, m \in M\}</math>
正規部分群と準同型
テンプレート:Math が テンプレート:Math の正規部分群ならば、剰余類の間の乗法を
によって定義することができる。これにより、剰余類の全体を剰余群 テンプレート:Math とよばれる群とすることができる。群 テンプレート:Math と剰余群 テンプレート:Math との間には、テンプレート:Math で定義される(射影、あるいは商写像と呼ばれる)自然な全射準同型 テンプレート:Math が存在する。自然な準同型 テンプレート:Math による テンプレート:Math の像 テンプレート:Math は、テンプレート:Math の単位元である剰余類 テンプレート:Math のみを含む一元集合 {N} である。
一般に、準同型 テンプレート:Math は テンプレート:Math の部分群を テンプレート:Math の部分群に写す。また、テンプレート:Math の任意の部分群の原像(逆像)は テンプレート:Math の部分群となる。テンプレート:Math の自明な部分群 テンプレート:Math} の準同型 テンプレート:Math による逆像 テンプレート:Math を、準同型 テンプレート:Math の核と言い、記号 テンプレート:Math で表す。さらに、核はつねに正規部分群であり、テンプレート:Math の像 テンプレート:Math と、商群 テンプレート:Math はつねに同型である(テンプレート:仮リンクを参照)。実は、この同型対応は テンプレート:Math の剰余群全体の成す集合と テンプレート:Math の準同型像の同型類全体の成す集合との間の全単射を与えている。これと、商写像 テンプレート:Math の核が テンプレート:Math それ自身であることはすぐにわかるから、まとめると テンプレート:Math の正規部分群はすべて テンプレート:Math を定義域とするなんらかの群準同型の核として確かに得られることが示せる。
関連項目
部分群から正規部分群を作る操作
正規性の逆の性質をもつ部分群
正規性よりも強い制約で決まる部分群
正規性よりも弱い条件で決まる部分群
- テンプレート:仮リンク
- テンプレート:仮リンク
- テンプレート:仮リンク
- テンプレート:仮リンク
- テンプレート:仮リンク
- テンプレート:仮リンク
- テンプレート:仮リンク
- テンプレート:仮リンク
- テンプレート:仮リンク
- テンプレート:仮リンク
- テンプレート:仮リンク
環論における類似概念
参考文献
- I. N. Herstein, Topics in algebra. Second edition. Xerox College Publishing, Lexington, Mass.-Toronto, Ont., 1975. xi+388 pp.
- David S. Dummit; Richard M. Foote, Abstract algebra. Prentice Hall, Inc., Englewood Cliffs, NJ, 1991. pp. xiv, 658 ISBN 0-13-004771-6