万有引力定数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2014年1月31日 (金) 13:54時点におけるトマス秋茄子 (トーク)による版 (Wikipedia:表記ガイドに準拠)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先: 案内検索

テンプレート:物理定数 万有引力定数(ばんゆういんりょくていすう)あるいは重力定数(じゅうりょくていすう)とは、重力相互作用の大きさを表す物理定数である。アイザック・ニュートン万有引力の法則において導入された。記号は一般に G で表される。

ニュートンの万有引力理論において、質量がそれぞれ m1, m2 の2つの物体が、距離が r 離れているとき、これらの間に働く万有引力 Fgテンプレート:Indent となる。このときの比例係数 G が万有引力定数である。

アルベルト・アインシュタイン一般相対性理論においてはニュートンの重力理論は修正、拡張される。一般相対性理論の基礎方程式であるアインシュタイン方程式においても比例係数として重力定数が現れる。

万有引力定数の2010 CODATA推奨値は テンプレート:Indent である[1]。 カッコ内の数値は表された最後の桁を単位とした数値の標準不確かさを表す。 上記の定数は 1 kg の質量の2つの物体が 1 m 離れた時の引力を単位ニュートン(N)で表した値と等しく非常に小さい値である。たとえばそれぞれが質量 1000 kg の物体が 1 m 離れて引き合う力は約 6.7 テンプレート:E N であり、大体地球上で 6.8 mg の質量の物体に働く重力に等しい。

また、万有引力定数をプランク定数真空光速で換算した量は テンプレート:Indent である[2]

キャヴェンディッシュによる測定

万有引力定数を定めるには、互いに質量のわかっているものの間に働く万有引力を精密に測定せねばならない。万有引力定数はキャヴェンディッシュによる1798年の鉛球実験(キャヴェンディッシュの実験)に基づいて初めて計測された。これは針金で吊るした棒の両端に二つの鉛球をつけ、固定した別の鉛球との間に働く力を計測するものであった。この実験はもともと地球の密度を求めるためのものとして考案されたもので、万有引力定数が求められたことによって、既知の重力加速度と地球の半径から地球の質量そして密度がはじめて求められた。この実験で求められた万有引力定数は テンプレート:Nowrap であり、現在知られている上記の値と比較しても相当に高精度なものであった。

精度の低さ

万有引力は非常に弱い力であるとともに、周囲の物質による影響が除去しにくいために測定が非常に難しい。上に示したCODATA 2010の値にも、1.2テンプレート:E標準不確かさ がある。この不確かさは、様々な重要な物理定数の中では最も大きい[3][4][5]。このような測定精度の低さのためCODATA推奨値も時代と共に以下のように変遷している[6]。CODATA2010推奨値も、CODATA2006推奨値と比べて6.6テンプレート:E も小さく[7]、基礎物理定数としては変化が著しい。

万有引力定数のCODATA推奨値の変遷[8]
推奨値 G / m3kg-1s-2 標準不確かさ
1973 CODATA[9] 6.6720(41)テンプレート:E 6.1テンプレート:E
1986 CODATA 6.672 59(85)テンプレート:E 1.3テンプレート:E
1998 CODATA 6.673(10)テンプレート:E 1.5テンプレート:E
2002 CODATA 6.6742(10)テンプレート:E 1.5テンプレート:E
2006 CODATA 6.674 28(67)テンプレート:E 1.0テンプレート:E
2010 CODATA 6.673 84(80)テンプレート:E 1.2テンプレート:E

万有引力定数の精度が4桁程度しかないことは、連星パルサーの質量の測定精度などにも影響する。また、ミリメートル以下の範囲でニュートンの万有引力が精度良く確かめられていないことから、小さなスケールでは重力理論の変更を考慮する余地が残されていて、近年、小さなスケールで余剰次元を持つ5次元膜宇宙モデル(ブレーンワールドモデル)が盛んに研究されている。

その他の値

国際測地学協会では1999年に万有引力定数の値として G = 6.67259(30)テンプレート:E m3s-2kg-1 を用いることを定めている[10]NASAでもこの値を採用している[11]

2007年には原子干渉計を用いた測定による万有引力定数として、G = 6.693(21)テンプレート:E m3s-2kg-1 という、それまでの測定結果とは著しく異なった値がサイエンスに報告された[12]

万有引力定数と質量の積

万有引力定数の測定精度が低いのに対し、G太陽質量 M を乗じた日心重力定数(Heliocentric gravitational constant)や、地球質量 M を乗じた地心重力定数は精度よく計測されている。 これらの値は各々、

<math>GM_\odot = 1.327\;124\;420\;99(1\;00) \times 10^{20} \; \mbox{m}^3 \; \mbox{s}^{-2}</math>
<math>GM_\oplus = 3.986\;004\;418(8) \times 10^{14} \; \mbox{m}^3 \; \mbox{s}^{-2}</math>

である[13]

従って、地球質量の精度は万有引力定数の測定精度に依存し、CODATA 2006による地球質量は M = 5.9722(6)テンプレート:E kg と計算され[13]、国際測地学協会の協定値では M = 5.9737(3)テンプレート:E kg と計算される。NASAでは M = 5.9736テンプレート:E kg としている[14]

一般相対性理論とアインシュタインの重力定数

アルベルト・アインシュタイン一般相対性理論においては、重力場を記述するアインシュタイン方程式の中に万有引力定数 <math>G</math> が現れる。アインシュタイン方程式は、

<math>G_{\mu\nu} = {8 \pi G \over c^4} T_{\mu\nu}\,</math>

と表される。<math>G_{\mu\nu} </math>は時空の曲率を表すアインシュタイン・テンソル、右辺の<math>T_{\mu\nu} </math>は物質分布を示すエネルギー・運動量テンソル、<math>\pi</math> は円周率、<math>c</math> は光速である。 右辺の定数をまとめて<math>\kappa = {8 \pi G \over c^4}</math> として、これをアインシュタインの重力定数と呼ぶ人もいる。

出典

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

関連項目

外部リンク

  • CODATA Value
  • CODATA Value
  • 例えば、プレプリント p82, TABLE XLVIII Comparison of the 2010 and 2006 CODATA adjustments of the values of the constants by the comparison of the corresponding recommended values of a representative group of constants
  • プレプリント pp.73-78
  • プレプリント p.59, FIG. 6 Values of the Newtonian constant of gravitation G in Table XXIV and the 2006 and 2010 CODATA recommended values in chronological order from top to bottom
  • "Older values of the constants"
  • プレプリント p.4, B. Brief overview of CODATA 2010 adjustment, 4. Newtonian constant of gravitation G
  • 1982年から2010までの主な測定結果については、プレプリント p.48, TABLE XVII Summary of the results of measurements of the Newtonian constant of gravitation relevant to the 2010 adjustment. が参考になる。
  • Cohen and Taylor
  • 『理科年表2009』
  • "Astrodynamic Constants"
  • Fixler, Foster, McGuirk, and Kasevich
  • 13.0 13.1 "Selected Astronomical Constants" ただし値は時刻系の違いに依存し、示された値は太陽系座標時 (TCBBarycentric Coordinate Time) を用いて表されたものである。
  • "Earth Fact Sheet"