DVD-RAM
ファイル:DVD-RAM Datenseite Farbenspiel 1.jpg DVD-RAMメディアの表面 ファイル:Panasonic DVD-RAM001.JPG 記録面の耐久性が改善された事により、カートリッジ無しでも使用できるようになった。 |
DVD-RAM(ディーブイディー・ラム)とは記録型DVDの規格の一つである。DVDフォーラムにより策定され、1998年4月に松下電器産業(現・パナソニック)と日立製作所から最初の製品が発売された[1]。
概要
CDと同様の12cmの直径を持つ、相変化記録方式のディスクメディアである。PDの技術をもとに開発された。初期のドライブはPDも使用可能であったが、容量が増加した「バージョン2.0」対応のドライブからは互換性がなくなった。「バージョン2.1」では8cmディスクも設定された。
コンピュータの周辺機器として、また家庭用録画機器用としても利用されている。
- ディスク外径:120mmまたは80mm
- ディスク厚:1.2mm(0.6mm×2)
- 記録方式:相変化記録方式
- レーザー波長:650nm
- 書き換え可能回数:10万回以上
- 記憶容量(バージョン2.0以降、外径120mm):片面4.7GB、両面9.4GB。なお2層式のものは読み出し専用のDVD-ROM(片面8.5GB、両面17GB)にはあるが、DVD-RAMには存在しない。
特徴
DVD規格の一つであるが、記録密度・ランダムアクセス性向上のために通常のDVDとは異なるアドレス方式やトラッキング方式をとっている。このため、特に対応したドライブでしか読み書きができない。他の書き換え型DVDであるDVD±R/RWが一般のDVD機器で読み書きができるのとは対照的である。ただし、後述するように、それによって信頼性はあがっている。
記録面を見ると、円周方向に他のDVDメディアには見られない細く短い線が微妙に角度を変えながら全面に分布している。これは埋め込みサーボ技術のサーボパターンであり、このパターンを検出することで瞬時にヘッドの位置を認識することが出来、ランダムアクセスの高速化に役立っている。同様の技術はMOやHDD(磁気情報なので肉眼では見ることが出来ない)にも使われている。
DVD±RWの1000回を上回る10万回以上の書き換えが可能である。さらに不良セクタの代替機構、そして書き込み時には自動的にベリファイ(正しく書き込まれたか読み込みをして検証すること。デメリットとして、2倍速の書き込みは1倍速の読み出しと同程度の時間を要する。)が行われ書換型メディアとして高い信頼性を持っている。
またカートリッジ入りメディアも用意されており、ラフな扱いが可能であった。当初はディスク保護のため全てのメディアがカートリッジ入りであったが後に記録面の耐久性が改善され、安価なカートリッジ無しタイプも販売されるようになった。現在ではドライブ、メディア共にカートリッジなしタイプで2倍速から5倍速に対応した製品が主流となっている。
かつてはDVD-RAMで書き込みを行うにはドライバ(UDF)のインストールが必要だったが、Windows XP以降はOS標準でサポートされるようになった(FAT32形式のみ)。また読み書きに専用のライティングソフトは必要とせず、通常のファイル操作で使用できるのも特徴である。このため、バックアップ用途のみならずデータの受け渡し用としても利用される。さらに初期のWindows 95ではHDDだと1つのドライブにつき2GB以下のパーティションしか扱えないというFAT16フォーマットの制限があったが、DVD-RAMの場合はUDFフォーマットが利用できるため、95であっても2.6GBや4.7GBといった大容量を1つのドライブとしてHDD感覚で読み書きできた。こうした環境ではデータ用HDDの代替としても利用価値があった。
メディアとカートリッジの規格
直径 | 容量 | 書込速度 | クラス | |
---|---|---|---|---|
バージョン1.0 | 12cm | 片面2.6GB、両面5.2GB | 1倍速 | 0 |
バージョン2.0で加わった規格 | 片面4.7GB、両面9.4GB | 2倍速 | ||
バージョン2.1で加わった規格 | 12cm | 3/5倍速 | ||
8cm | 片面1.46GB、両面2.92GB | |||
バージョン2.2で加わった規格 | 12cm | 片面4.7GB、両面9.4GB | 6/8/12/16倍速 | 1 |
8cm | 片面1.46GB、両面2.92GB | |||
※バージョン2.0以降の大容量メディアは、バージョン1.0のみ対応のドライブでは読み書きできない。また、6倍速以上のメディアは5倍速以下のドライブでの書き込みができない。 |
ディスクの直径 | カートリッジからのディスクの取り出し | 記録面 | |
---|---|---|---|
タイプ1 | 120mm | 不可 | 両面/片面 |
タイプ2 | 可能 | 片面 | |
タイプ3 | ディスクのみ | ||
タイプ4 | 可能 | 両面 | |
タイプ5 | ディスクのみ | ||
タイプ6 | 80mm | 可能 | |
タイプ7 | 片面 | ||
タイプ8 | ディスクのみ | 両面 | |
タイプ9 | 片面 |
ファイルシステム
ファイルシステムは使用するOSやドライバーソフトに依存する。
- UDF - 他のOSとの互換性に優れる。通常はこれが推奨される。
- UDF1.02 - DVD-ROMの標準フォーマット。記録型メディアにも使用できるが、一度に全体を書き込む必要がある。DVD-Video方式での記録ができるようになる。DVD-RAMではほとんど使われない。
- UDF1.5 - CD-R/RWの登場を機に、UDF1.02にパケットライト機能を追加したもの。パソコン用途でよく使用される。
- UDF2.00 - UDF1.5の拡張版で、DVD-VR方式での記録ができるようになる。DVD-RAMの標準的なフォーマット。アナログ放送用のDVD-RAMレコーダーで使用されていたほか、パソコン用途でもよく使用される。
- UDF2.01 -
- UDF2.5 - 本来はBlu-ray Disc用のフォーマット。AVCREC方式での記録ができるようになる。ハイビジョン対応のレコーダーで使用される。
- UDF2.6 - UDF2.6はBD-Rにファイルの疑似消去や疑似書き換えを盛り込んだ規格。
- FAT - FAT16とFAT32が使える。主にWindows用のフォーマットであり、Windowsを除く古いOSとの互換性に問題がある。Windows XPや、デスクトップ向けLinuxディストリビューションなど、OSに標準搭載されているディスク・ユーティリティがUDFでのフォーマットをサポートしていない場合を除き、DVD-RAMではほとんど使われない。
- HFS、HFS+ - 主にMac用。他のOSとの互換性に問題がある。ほとんど使われないが、2000年頃のPowerMacにDVD-RAMドライブが搭載された事が有り、一部機種では起動ディスクにする事が出来たためメンテナンス用には重宝した。
- ext2 - 主にLinux用のフォーマットであり、他のOSとの互換性に問題がある。DVD-RAMとの相性も良くないため、ほとんど使われていない。
- ISO 9660 - ほとんど全てのOSで読み込みができるが、ファイル名などに制限がある。DVD-RAMではほとんど使われない。
最近のパソコン用としてはほとんどUDF1.5かUDF2.0で使用される。このフォーマットで初期化することでHDD同様、自由に読み書きができる。
パソコンとレコーダーの互換性について
アナログ放送用のDVD-RAMレコーダーでは、DVD-VR方式で記録する。このため、パソコンを使って映像をDVD-VR方式で書き込めばレコーダーで再生することができる。逆に、レコーダーで録画したディスクをパソコン上で再生することもできる。これらを可能にするソフトウェアとしてはパナソニックのDVD-Movie album、UleadのDVD Diskrecorder(DVD MovieWriterにも実装)、ペガシス製のTMPGEncシリーズ等がある。これらは主にタイトル名編集、カット編集、DVD-Videoモード形式への変換などの機能がある。
ハイビジョン放送用のDVD-RAM対応レコーダーでは、AVCREC方式で記録する。これもパソコンで扱えるはずであるが、UDF2.5フォーマットに対応していること、アプリケーションがAVCRECに対応していることが前提となる。
なおDVD-Video(映画などの入ったいわゆるDVD)方式でDVD-RAMに書き込むことも可能であり、対応するアプリケーションも存在するが、市販されているDVDプレーヤーの多くは最新機種も含めてDVD-RAMの認識には未対応のまま現在に至っている。
回転速度
ファイルシステムとして読み書きすることが前提となっているため、回転速度は各ドライブの設計に依存する。ただし実際には低速度メディアではZCLV、高速メディアではPCAVで制御しているドライブが大半である。
シェアの推移
テンプレート:出典の明記 当初規格統一に参加していたソニーやフィリップスなどはDVD-RAMがDVD-ROMとの互換性が比較的低いことなどを理由に、1997年5月になってDVD+RWを対抗する規格として提唱した。これは片面3GB、両面6GBの容量を持ちDVD-ROMと互換性があった。しかしDVD-RAM陣営は1999年6月、これを上回る片面4.7GBのVersion 2.0規格の決定を発表した[2]。ソニー、フィリップス、ヒューレット・パッカードの3社を中心とするDVD+RWアライアンスは対抗規格として同等の容量を持つ「DVD+RW」を策定している。これはDVDフォーラム外での作業であるため、正規のDVD規格としては認可されていない。
DVD-RAM陣営はドライブの製造メーカーとしてはパナソニック、日立LGデータストレージ、東芝サムスンストレージ・テクノロジーなどが、テレビの録画用DVDレコーダーとしてはパナソニック、日立、東芝、日本ビクターなどがあった。2006年4月にはパイオニアも加わった。このうち日立・日本ビクター・パイオニアはカートリッジタイプのディスクは使用できなかった(カートリッジから出せば使用可能。従ってディスクを出せないタイプ1は使用不可)。
DVD-RAMは不要な部分だけを簡単に消せるうえファイナライズの作業が不要であるなど、使い勝手の点で優位性を保っていた。2003年の時点では記録型DVDとしての世界シェアは約10%、日本国内ではレコーダーの普及により約60%のシェアを持っていた。しかしその後日立と日本ビクターが民生用DVDレコーダー事業から事実上撤退し、2007年12月以降はパナソニック・東芝の2社のみとなった。
そもそも、東芝はDVD-RAM陣営であるにもかかわらず再生専用機ではDVD-RAMへの対応を行っていなかった。これは、同社のDVDプレーヤーの大半がオリオン電機などからOEM供給されたものであったためである。自社生産品であるHD DVDプレーヤー「HD-XA1」では対応していたものの、CPRMには対応していなかった。Blu-ray Discレコーダーでも再生のみの対応となっている。パナソニックも車載用機器では対応していなかった。
また海外では当初からDVD-RWに対して劣勢であり、メディアの価格が下がらなかったのもシェアを落とす理由のひとつと言われるテンプレート:要出典。