リンダキューブ
テンプレート:Infobox 『リンダキューブ』(Linda³)は1995年10月にNECホームエレクトロニクスより発売されたPCエンジン SUPER CD-ROM²用コンピュータゲーム及びその他機種への移植を含めたシリーズである。
ジャンルは公称では「サイコスリラー&ハンティングRPG」と表記され、一般にロールプレイングゲームに分類される。
ゲームデザインは桝田省治、キャラクターデザインはカナビス、開発は株式会社アルファ・システム。
あらすじ
リンダキューブの物語の舞台はネオ・ケニアと呼ばれる地球に良く似た惑星である。惑星ネオ・ケニアは8年後、回避することが不可能な巨大隕石の落下に見舞われ、壊滅的なダメージを受けることとなる。この星に住む主人公ケンは、恋人であるヒロインリンダと共に、ネオ・ケニアが壊滅するまでの8年の間に、可能な限りの動物を雌雄一対の「つがい」で収集し、箱舟と呼ばれる宇宙船と共にこの星から脱出することとなる。
作品解説
対応機種ごとにタイトルが異なり、内容も完全移植ではなく、それぞれの機種の特色や制限に合わせてアレンジされている。ラインナップは以下の通り。
- リンダキューブ(PCエンジン版)
- リンダキューブ アゲイン(PS版)
- リンダキューブ 完全版(SS版)
PS版は、PCE版から全体的なグラフィックのブラッシュアップ、アニメーション、エンディングの変更、残虐描写の規制(但し、アニメ化された事でよりリアルで生々しい表現となっている)、シナリオの追加、難易度選択などが追加されている。
SS版は、PS版をベースに動物の位置の変更、残虐描写規制の緩和、一部セリフの変更、PCE版の画像の閲覧、「国分名人に挑戦!!」 モード、サウンドトラックなどが追加されている。
特徴
8年と言う制限時間の中で、全120種類に及ぶ動物(現実の動物とは異なる、所謂モンスター)を捕獲する事がゲームの目的である。動物は基本的に戦闘で倒す事で捕獲するが、一撃で敵の最大HPを大きく上回るダメージを与えると飛び散ってしまい、捕獲が出来ない。強過ぎても弱過ぎてもいけないという、強さのバランスを考慮する必要がある。更に動物は全種類オスとメスが存在し、つがいで捕獲しなければならない。各動物は一種類につき雌雄一匹ずつ登録する必要がある。動物は種類や性別によって出現条件や捕獲方法も多種多様であり、プレイヤーは試行錯誤を重ねる事となる。
桝田省治が公式ホームページにおいて述べている通り、『リンダキューブ』は
- 主人公は勇者ではない
- 魔王やそれに類する世界の脅威となる「敵」が存在しない
- 惑星の滅亡を阻止する事が出来ない。
と言うストーリー上の特徴を持ち、一般的な(特に『ドラゴンクエスト』のような正統派ファンタジー系を名乗る)RPGとは全く主人公がなすべき目標が異なり、桝田自身も解説書や公式サイトで何度も強調している。
また、システム面でも
- 8年と言う年月はプレイヤーが遊んでいる時間の経過と共に自動的に進む(セミ・リアルタイム)。また、時が進むにつれて住民の脱出は進み、最後の年にはほとんどの住民がマップ上から姿を消してしまう。
- 装備品や道具などは、店で買う以外に捕獲した動物を加工して作成する。
- ゲーム開始時点から世界の果てまで自由に行ける(シナリオによっては制限がある)。また、明らかにレベルが桁外れの敵とも遭遇可能。
- アイテムの中には季節をまたぐと腐ったり枯れたりするものがある。
- 街以外では走ると体力が減少する。
- 宿屋、商店と言った標準の施設の他、動物を解剖して体内のアイテムを取り出す「解体屋」まで存在する。
と言う点に関しても当時としては過去に例が殆ど無いほどに先進的かつ斬新な作りとなっている。
なお、上記のような特徴になった理由として、桝田省治は直前に係わっていた『天外魔境II』で「王道」のRPG制作に3年携わり、その「王道」を作り続けたストレスからアンチテーゼとしてリンダキューブを作ったと語っている。
シナリオ
A、B、Cの3シナリオ(PS版、SS版ではDシナリオを含めた4シナリオ)が存在し、それぞれ全く違うストーリー展開となる。このうち特にA、Bのシナリオは猟奇的な表現が含まれており、このためにPCエンジン版は18歳以上推奨指定で発売された。桝田は企画当初はシナリオCにあたる部分のみであったが、システム部分の取っ付きが悪かった為に練習用としてシナリオA、Bを追加したと語っている[1]。
- シナリオA「MERRY XMAS」
- ケンの双子の弟・ネクが物語の軸となるシナリオ。動物捕獲数のノルマは30種類。南エリアに行く事は出来ない。ストーリーの都合上、ラスボスは必ずしも倒す必要は無く、最終決戦のイベントを放置してもクリアは可能である。
- シナリオB「HAPPY CHILD」
- エモリ博士と娘のサチコを中心に展開するシナリオ。動物捕獲数のノルマは50種類。西エリアに行く事は出来ない。
シナリオAとBは一般的なRPG同様、シナリオに沿ってストーリーが展開するため進行上の制約が多く、行ける地域も遭遇可能な動物の数も限られている。桝田省治が練習用と位置付けている通り、まずはA、Bのシナリオでストーリーを追いながら本作の要領を掴み、自由度が高いシナリオCで動物集めに専念する事を推奨している。
- シナリオC「ASTRO ARK」
- 本作の肝である動物集めに特化したシナリオ。動物捕獲数のノルマは100種類。120種類全ての動物が捕獲可能であり、全ての地域が解禁されている。但し、シナリオ上の事情により制限期間は1年少ない7年間となっている。
- フリーシナリオである為、ストーリー的な縛りが殆ど無く、自由度は極めて高い。A、Bのシナリオのような凄惨な事件は起こらず、各地に点在するお遣いやちょっとした事件程度のイベントを好きな順番で体験する事が出来る。同時に物語の核心が明かされる重要なシナリオであり、エンディング後にはエピローグも存在する。ラスボスにあたる敵は存在せず、規定数以上の動物を集めて箱舟を動かせばクリアとなる。
- A、Bをクリアせずに始める事も可能だが、別シナリオで悲惨な末路を辿った人物が幸せになっていたり、別シナリオの台詞や演出のセルフパロディが盛り込まれるといったサービス的な要素が有り、先のシナリオと比較してコメディ要素が強くなっている。シナリオ選択画面でこちらを先に選択しようとすると「ABを先にクリアしよう」と忠告が入るため、前述の通り練習の意味も含めて先にA、Bをクリアしておく事が推奨される。
- シナリオD「LAST YEAR」
- PS版、SS版にて条件を満たすと出現する。シナリオCと同様に全ての動物に遭遇可能だが、イベントが存在せず、制限期間が僅か一年しかない所謂タイムトライアルモードとなっている。動物捕獲数のノルマは100種類。短い期間で厳しいノルマに挑戦出来るようにレベル、所持金などが高い状態からスタートする。
登場人物
キャラクターによっては、シナリオにより登場しない場合や、外見・経歴などが大きく異なる場合がある。
- ケン・チャレンジャー:矢尾一樹
- 本作の主人公。リンダの幼馴染で彼女と共に「箱舟計画」の遂行者となる。彼もリンダの事が好きだが、昔からリンダに手ひどい目に合わされてきたこともあって、リンダ程に積極的な性格ではない。
- 主人公である為喋る機会は少なく、台詞があるのはプロローグとエンディング、一部のイベントのみである。
- リンダ:高山みなみ
- 本作のヒロイン。緑髪の美人(PCE版では赤髪、イラストはピンクっぽい色に見える)で、幼馴染のケンには好意を持っており、積極的にアタックしている。反面性格にはやや問題があり、猪突猛進で口が悪く、ケンに暴力じみたアプローチを行うこともしばしば。コブラツイストや犬の調教等の技が得意で、狩猟時に大いに役立つ。
- シナリオによっておかれる立場が変化するため、そのたび違う苗字が設定される。
- ベン・マクドナルド:内海賢二
- ネオケニアレンジャー隊(生物を密猟者から保護する役割を有するほか、警察組織のような側面も持つ。また、「箱舟計画」のサポートも行う。)の隊長。ミームとは古くからの知り合いで、リンダやケンとも彼らが幼い頃から見知った仲。典型的な中間管理職で慢性的な胃痛に悩まされている。口は悪いが「箱舟計画」の遂行者となった二人を気にかけ、色々とサポートする。葉巻を吸っているが、秘書からは臭いと不評。
- ミーム・チャレンジャー:青木和代
- ケンの母。豪快な性格で肝っ玉が座っている。得意な料理はバナナミートパイ。
- ヒューム・バーニング:PCE版神谷明/PS、SS版二又一成
- リンダの父。豪快な性格をした大柄の黒人で、パラサイドのハンター隊長ゴメスと双璧をなす凄腕のハンターとして有名。リンダとアンを心から愛している。
- シナリオAのみリンダの外見が自分とかけ離れていることに不安を感じており、現在はアンと離縁している。
- アン・バーニング:PCE版増山江威子/PS、SS版江森浩子
- リンダの母。旧姓はアウレア。ビースチャン(原住民)。物静かで穏やかな性格。
- エリザベス・グリーン:くればやしたくみ
- 製薬会社「グリーン製薬」の女社長。40代前後の外見をした淑女だが、実年齢は不明。高慢な性格。クリスマスが大好きで、邸宅内には無数のクリスマスの飾り付けを施し、グリーン製薬社員の制服はサンタ服にしている。
- ミカ・パンハイム博士:辻親八
- エリザベスの右腕的存在である老年男性。彼女とは男女の関係にあり、自身に使う精力剤を度々開発している。
- ヤタロウ・エモリ博士:青野武
- ホスピコの病院に勤める医師。新型の治療装置「人工子宮」を開発するなど、生化学分野では突出した技術力を持つ。チョビ髭がトレードマーク。娘のサチコを溺愛している。
- サチコ・エモリ:佐久間レイ
- エモリ博士の娘。リンダとは対照的に物静かで優しい少女。
- ネク:矢尾一樹
- ある事件で姿を現すケンにそっくりの青年。自分の事を「ケンの双子の弟」と言うが…。
世界と用語
世界
- 惑星ネオケニア
- 星間連邦の植民惑星。豊富な自然を持ち、あらゆる動物が存在するため、観光地にもなっている。この世界の年号であるAMD(アフター・マザー・デス)1900年に植民が始まったが、発見直後からAMD1999年に超巨大隕石が直撃することがわかっていたため、初めから移住計画は100年と決められていた。陸地は東・西・南の3つのエリアに区切られている。
- 地球
- 人類の母星であるが、宇宙開発によって人類はあちこちの惑星に散っていったため、すでにその座標さえ特定できなくなってしまった。
- 東エリア
- ハーディア
- レンジャー隊の本部がある。レンジャー隊は仕事が厳しい上に安月給であるため、「ハーディア」という名が付いた。
- ミナゴ
- ビースチャンの保護自治区。彼らの教会がシンボル。町の名前は既に絶滅した鳥の名前から来たというが、不吉な事件が多いため「ミナゴロシ(皆殺し)」から来たという説もある。
- オズポート
- ネオケニアの出入口である軌道衛星オズサットへの転送装置がある町。大きなショッピングセンターに空港ビルもあるが、公園はホームレスの溜まり場になっている。
- ホスピコ
- 巨大な病院とその待ち合わせ用の施設からなる医療都市。敷地内には「人間の寿命を一人で2年ずつ延ばした」と呼ばれる3人の科学者の研究室がある。
- パラサイド
- ドーム都市建設計画が放棄されて、その跡地にならず者や密猟者が建設した町。一種のスラム街で、特に町の中心にあるジャンクパレスは迷路のようになっている。
- ネブール
- 闇商人たちによって作られた町。連邦で取引が禁止されている動物の売買も行われている。
- 西エリア
- バトルパーク
- 西エリアの要衝に作られた町。ハンターたちの交通の拠点である。また、巨大な闘技場テントも特徴。
- エターナ
- グリーン製薬の社長宅を中心とする町。社長の趣味で一年中クリスマスの飾り付けが行われている。「エターナル(永遠)」から来た名前だが、シナリオAではその名の「真意」を知ることになる。
- リナバレー
- エターナの隣町。鉱山の町で、排水には強酸が含まれている。
- コシカタ
- ビースチャンの保護自治区。彼らの教会がシンボル。十数年前に当時の町長が突然、住民を大量虐殺する事件が発生し、廃村となっている。しかし、Cシナリオでは宝くじ成金のポリスカという老人によって復興されている。
- Gファクトリー
- グリーン製薬の工場都市。ただし、ロボットによって操業されているため、ほとんど無人。
- 南エリア
- ドギファ
- 富豪のオーマン家によって築かれた町。地下闘犬場がこの町のシンボル。
- ラグナロッジ
- 生体工学の権威であるエモリ博士の巨大な私邸。そのため公共施設が一切存在しない。
- ローズガーデン
- 植物学の権威であるフローラ博士の植物園を中心とした都市。彼女によって品種改良されたバラが名物だが……。
- ガレックス
- 動物研究都市だったが、数十年前に大爆発事故を起こして以来、完全な廃墟となっている。
用語
- ビースチャン
- ネオケニアの先住民。ネオケニアの発見まで人類とは何の接点もなかったが、人類と生物学的特長・言語体系が寸分の違いもない。しかし、彼らは緑の髪で、身体能力や繁殖力は人類よりも高く、人類との混血においては彼らの遺伝子が優性に働くという違いもある。また、動物たちを自分たちの祖として崇拝する。民族名はBeast(獣)とian(人を表す接尾語)の合成語である。
- 人類
- 現生人類と同じ。しかし、この世界では出生率の低下・死亡率の増加が顕著となっており、種の生命が尽きかけている。ネオケニアへの移住計画は、ビースチャンとの混血を通じて人類という種を維持するという意味合いもある。
ソフト回収について
- PCエンジン版
- PCエンジン版は初回出荷版において不具合が発覚し、ソフトの店頭回収と購入者への交換対応が実施された。
- 具体的には、本来28トラック収録されるべきCD-ROMに27トラックまでしか収録されておらず、シナリオBにおいてBGMとして使用される28トラック目のCD-DAにアクセスする際にフリーズしてしまうというもの。
- 非公式ではあるが回避方法は存在する。
- プレイステーション(ゲームアーカイブス)版
- 2007年9月27日、プレイステーション版がゲームアーカイブスとして配信開始されたが、権利関係の問題により数時間で中止となった。
- その後、ゲームアーカイブス配信のための契約が締結され[2]、2008年9月10日に再び配信が開始された。
脚注
外部リンク
- リンダキューブアゲイン公式ホームページ(桝田省治ホームページ内)(2013年10月6日現在、閲覧不可)