粘土
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粘土(ねんど、テンプレート:Lang-en-short[1])は、以下のような意味をもつ言葉。
- 原義は、地層中などから得られ、焼き物の素材にもなる「粘っこい土」のこと。
- 学術・産業上は、「非常に細かい粒子でできた堆積物」として定義される。
- 一般に、塑造やモデリング用に商品化された粘土様の素材のこと。学校教材としても馴染みが深い。
以下、上記 2. を「堆積物としての粘土」、3. を「塑造用粘土」とし、それぞれについて解説する。
堆積物としての粘土
学術・産業上の定義
粘土の定義は、陶工、土壌・農学、セラミック工学、地質学(堆積学)、鉱物学などの分野により必ずしも一致していない。地質学の分野においては、粒径(粒の大きさ)が3.9μm未満の粒子とされ、鉱物学の分野においては2μm以下の粒子とされ、土質力学の統一分類法においては粒径が5μm以下の土とされる。これより大きいものはシルトとよぶ。
化学的・鉱物学的には層状ケイ酸塩鉱物(フィロケイ酸塩鉱物)を主とし、方解石、苦灰石、長石類、沸石類などから成る。
性質
水で捏ねると塊になり、同時に手で延ばしたり、細工することができるようになること、火に耐えるといった粘土の持つ性質は、太古より利用されてきた。科学的な観察、分析が進むにつれて、それまで「粘土」と呼ばれてきたものには化学的吸着、イオン交換、触媒性、水との混合による泥水の形成、粘性、粘着性、可塑性、低透水性など多くの性質が認められるようになった。低透水性については、含有する鉱物の種類や粒径分布によって大きく異なるが、透水性の低さにより地盤の圧密が非常に緩やかに進み、構造物は建設から数年経た頃に不等沈下などの問題を生じる場合がある。
利用
- 水を含んでいるときは柔らかく、熱したり焼いたりすると堅くなり戻らない性質があるので陶器や磁器・煉瓦などに使われる。
- 余分な皮脂や汗を吸着することから、化粧品あるいはその原料としても用いられる。
- メソポタミア文明では文字の媒体として粘土板が使われた。
- 古来、塑像の素材として利用されてきた。
塑造用粘土
上述のように粘土にはすぐれた可塑性があり、立体造形を容易に実現できるため、古くから塑像などの造形に用いられてきた。現代の塑像用粘土の多くは堆積物としての粘土を直接の原料にはしていない。合成素材や、パルプ、石粉、小麦粉などさまざまな原料が使われている。 テンプレート:節stub
さまざまな塑造用粘土
- 油粘土 - 油脂ベースのため乾燥しにくく、繰り返し造形しなおすことができる。
- 紙粘土 - 安価であり、加工しやすい。
- 石粉粘土 - 乾燥後は石のような質感を見せる。乾燥後の彫刻にも適している。
- 小麦粉粘土 - 幼児が誤って口にしても安全。
- シルバークレイ - 銀粉を高い比率で含んでおり、焼成によって銀細工を実現できる。
- 木質粘土 - 木の粉が配合されていて乾燥後は本物の木のようになる。
- 蝋粘土 - 独特の透明感があり、幼児が誤って口にしても安全。手の熱で温めて使用する。
- プラスティシン - カルシウム塩、ワセリン、脂肪酸を合成して製造したパテ状のもの。ウォレスとグルミットで使用されている。
利用
- 初等教育の教材として広く用いられている。
- 各種立体アートや工業デザインの分野における模型の原形(クレイモデル)づくりに広く利用される。
- クレイアニメ。
- その他、人形、ミニチュアアート、ジオラマなどさまざまな立体造形表現において、補助的な材料として用いられることが多い。
脚注
参考文献
関連項目
- 地質学用語など
- 化学用語など
- コロイド / 分散系 / 生命の起源#表面代謝説
- 窯業・アート
- その他