通志
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通志(つうし)は南宋の鄭樵が書き、高宗の紹興31年(1161年)に本となった。形式は断代史を批判して通史である『史記』をまね、三皇から隋唐各代までの法令制度を記録する政書、十通の1つ。全書200巻、考証を3巻付け加え、紀伝体としての帝紀18巻、皇后列伝2巻、年譜4巻、二十略51巻、列伝125巻を包括しているが、中でも二十略が最も高く評価される。『通典』『文献通考』とならんで三通と評される。
二十略
二十略は紀伝体における「書」・「志」といった分野をより拡充したものである。これは『史通』の影響を受けたもので、従来の政治史や人物伝に偏りがちな歴史の記述・論評を、様々な学術分野の発展の様子に重きを置いたものにしたいという抱負から生まれた。以下に概要を述べる。
- 氏族略 - 姓氏の来歴
- 六書略 - 漢字の成り立ち
- 七音略 - 七音と等韻図
- 天文略 - 天文学
- 地理略 - 地理
- 都邑略 - 特に歴代の都城
- 諡略 - 諡号
- 器服略 - 古代の祭祀における青銅器のありかた
- 楽略 - 詩に基づく楽制
- 芸文略 - 学術書の発展・差異
- 校讐略 - 書籍校訂の歴史
- 図譜略 - 書籍の図版
- 金石略 - 金石学
- 災祥略 - 災害と瑞祥のしくみ
- 昆虫草木略 - 昆虫植物学
- 礼略 - 礼、とくに五礼(『周礼』より)
- 職官略 - 官職の歴史
- 選挙略 - 人材登用の歴史
- 刑法略 - 刑罰の用い方
- 食貨略 - 経済活動の歴史
本書に成った後、撰者の鄭樵は、枢密院編修に任ぜられた。後世、有用であるとして、二十略の部分だけを版行して『通志略』と題することも行なわれた。その反面、全体の半ばを占める列伝は不必要であるとして、評判が悪かった。本書を再評価したのは、清の章学誠である。