彫刻刀
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彫刻刀(ちょうこくとう)とは彫刻、版画、などにおける木工作業において比較的微細な切削加工を行うための刃物である。日本の伝統的なものは鋼(硬鋼)と地金(軟鉄・軟鋼)とを合わせた構造になっていて研いだ時に鋼の部分が刃先になるようになっているが、教材用の安価なものや海外のものには無垢の鋼材でできたものもある。通常刀身は直線状の木製の柄に取り付けられているが、柄と刀身が一体のもの(共柄という)もある。
柄の素材は朴や檜が多く、まれに桜などもある。通常貼り合わせて柄にするが、なかには横に柄を上半分と下半分にスライドさせ、刃の長さを調節できるものもある。また安価なものには、柄を貼り合わせずに刀身を打ち込んだだけのものが多い。
概要
使用時は主に手で力を加えて使用するため、刃厚が薄く、やや鋭角な刃を付ける。木槌や金槌で叩いて使うことを前提に作られている物は鑿と呼ばれて区別される。叩かないものでありながら鑿のような刃厚で丸軸のものは「小道具」という。 図工の教材用として市販されているものは、形状の異なる4~7本ほどがセットになっていることが多い。刃を研ぐための砥石が付属していることもある。
種類
彫刻刀には、幅広い用途に適合するにように非常に多くの種類がある。
刃先の形状による分類は次のようになる。
- 平刀、合透(あいすき)、スクイ
- 直角の形の刃がついているもの。広い面を薄く削り出したり、角を丸くしたりする。
- 小刀(こがたな)、印刀、切り出し刀
- 斜めになった刃がついているもの。切込みを入れたり、広い面を薄く削り出したり、もっとも広く用いられる。刃の向きによって、左右の区別がある。
- 剣先
- 剣の先のように先端が尖り、両刃になっているもの。教材用としてはあまり見かけない。
- 丸刀(がんとう・まるとう)
- 断面がU字型で、凹面を削るために使用される。版画に用いた場合には、幅が広く丸みのある線を描くことができる。アールの深さによって、極浅丸、中浅丸、並丸、深丸などの種類がある。また鋼がアールの外側に付いた「外丸」もある。
- 三角刀
- 断面がV字型になっているもの。素材に深い溝を彫るために使用される。版画に用いた場合には、細く鋭い線を描くことができる。角度は普通は60°だが、30°、45°、90°などの角度もある。
- 曲がり各種
- 上記の彫刻刀の刃先が少し反りあがった形になっているもの。柄がつかえるような凹面の加工などに用いられる。曲平刀、曲丸刀、曲印刀、曲三角刀などがある。
- 生反(なまぞり)
- やりがんなのように裏が反りあがり、両刃になっているもの。本来は、使用者が求める反り具合に加工し焼きを入れて使用するため、焼きの入っていない状態(=なま)で市販された。そのため生反という。cs:Dláto
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