主体農法
テンプレート:Infobox 主体農法(しゅたいのうほう/チュチェノンポプ)は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)で行われている主体思想に基づいて食糧自給を目指す農法。
概説
元来朝鮮半島北部は日本の統治下で鉱工業地域として開発が進められていた。そのため、ここに建国された北朝鮮では食糧の自給が課題となり、金日成・金正日父子の指導によって進められた。
しかしその実態は、観念的スローガンに疑念を持たずに朝鮮労働党の指導に服従し、精神論のみでやり抜く事を要求するというもので、伝統的な経験農法も科学的知識に基づく近代農法もまったく無視しているため失敗し、北朝鮮の農地とそれを背後で支える自然環境が破壊され、かえって食糧難をもたらしたと言われる。程度こそ違うものの、ソ連や中国もかつて同じような事を行い(中国の場合は大躍進政策を、ソ連ではトロフィム・ルイセンコの指導やアラル海縮小の顛末を参照)、大失敗している。しかし対外的には「大成功だった」と喧伝されたため、過去の過ちから学ぶことなく、北朝鮮も同じ間違いを繰り返す事になった。
例を挙げれば、「食料が足りないなら山林を農地に変えればよい」とする単純な理論を振りかざし、山を切り開いて棚田やトウモロコシ畑を造ることになったのだが、金日成が土留めのない田畑を造ることを指示したがために少し雨が降っただけでその田畑は崩壊したという話がある。このような強引な農法により山は禿山となり、山の土砂が川に流れ込んで水位が上がり、ひいては洪水が多発する原因となった。トウモロコシ畑においては連作障害を引き起こし、増産という目的に反し不作、ひいては食糧難を招くこととなった。また洪水の影響で大量の土砂が海に流れ込み、海岸の生態系が破壊されてしまったため漁業にまで不振に陥ることとなってしまった。
また、化学肥料の機械的大量投与や水田や畑における常識外れと言える高密度の田植え(密植)や種まきを指導したために、一時的に農業生産は上昇したものの土壌の消耗によって農地の生産力が崩壊し、また旧ソ連の援助による化学肥料の供与が絶えたこともあり、多くの農地が砂漠化と呼んでも差し支えないほどの惨状を呈している。しかし、勝手に田植えの方法を改善したりすれば命令に服従しなかったと言う理由で処罰される可能性が大きく、また当然ながら最高指導者に意見できるわけもなく、この惨状はある意味放置されている。
政府の対応
このような惨状に対し、官僚たちは洪水を政策の失敗をごまかす材料に利用して、各国からのコメの支援を仰ごうとしており、テンプレート:要出典
参考文献・脚注
- 津田太愚・つだゆみ『北朝鮮のことがマンガで3時間でわかる本』明日香出版社、2004年。ISBN 4-7569-0738-5
- 李佑泓『どん底の共和国―北朝鮮不作の構造』亜紀書房、1986年。ISBN978-4750589060 - 朝鮮総連重鎮の在日朝鮮人が、祖国の農業発展に尽力したものの頓挫した理由を記載した本。理由のひとつを、この農法としている。