棒手売
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
棒手売(棒天振とも、ぼてふり)は、商品を天秤棒に担いで売買すること。転じて、そのような商売をする商人を指す。
概要
この様式の商売は、行商のうち比較的狭い範囲を巡回する形態に多く見られる業態である。天秤棒の両端には商品を入れた桶や箱などの容器をぶら下げる。
江戸では、古く屋台の蕎麦、おでん、天ぷらもリヤカーもなく、天秤棒の両端が箱になったものに照明としての行灯が組み込まれ、食器などや食材を収めるスペースが組み込まれたものが巡回していた。蕎麦売りは客に請われると担いだ屋台を降ろし、行灯の明かりで椀に麺とつゆをいれて箸と共に客に渡し、客は立ち食いした。
そのほかには、野菜、鮮魚やアサリ・シジミなどの魚介類、豆腐などの食品などが扱われた。さらには金魚や、飴のような菓子なども似たような形で売り歩かれ、また明治時代に入っては牛乳も桶に入れられ柄杓で各戸の鍋や丼に量り売りされた。
ただこういった形態は一度に持ち歩ける商品も限られ、また売り歩ける面積も限られるため、明治時代から大正・昭和とその姿を減らし、日本国内ではほとんど見ることができなくなった。しかしアジア地域では同じような形態の商人もいまだ多く存在している。
特に道路が未舗装であるなど足場が悪い地域では、車輪を使った台車(大八車やリヤカー)ないし自転車では運搬しにくいが、さりとて手に抱えたり背負ったりするよりも、重心が背骨を軸として足に対して垂直方向に近い位置(肩)にあり、より大量に物資が運べるためである。