アストンマーチン・V8
V8は、アストンマーチン・ラゴンダが1972年4月-1989年10月に製造したスポーツカーであり、Sr.1-Sr.5までのモデルが存在する。主任技師マレックがアストンマーチン引退間際に全力をあげて設計したDBS (DBS V8) の発展型モデル。
前モデルの「DBS V8」と一目見て異なるのは、ヘッドライト部分を含めたノーズ部分のデザインである。
1971年にアストンマーチンの経営権がデビッド・ブラウンからカンパニー・ディベロップメンツに代わったからV型8気筒エンジンにはDBシリーズの名は冠せられていないが、基本設計は旧DBシリーズの直系にあたる。
英国スポーツカー伝統のシューティングブレークも存在し、1977年からは高性能モデルの「V8ヴァンテージ」も生産された。
機構・スタイル
エンジンは、その名の通り5,340ccの水冷90°V型8気筒エンジンを搭載。V8エンジンにDOHCという当時としてはかなり贅沢な設計で、最高回転6,250rpmという高回転型エンジンに仕上げられている。初期型はボッシュ製のフューェルインジェクション、後期型はダウンドラフトツインチョークウェーバーキャブレター4基で燃料を供給。当時のアストンマーチン・ラゴンダは、ロールス・ロイスと同じくエンジン出力を公表しない主義を取っていたため正式な出力は不明だが0-400mを14.3秒で走り1,800kgの巨体を最高258km/hまで引っ張るところから280 - 340英馬力と推測されている。高性能モデルV8ヴァンテージの最終型が搭載する580Xエンジンは430英馬力を出すとも言われている。
当時最高級のパワーステアリングが搭載されており、変速機はクライスラー製トークフライト3速ATと、ZF製5速フルシンクロMTが同じ価格で用意されていた。現代車に比べればペダルはかなり重いが、ガーリング製4ポット・キャリパーとベンチレーテッドディスクをロッキードAP製のバキュームサーボでアシストしたブレーキは耐フェード性も高く、信頼性の高い制動力を持っていた。
内装は子牛5頭分のコノリーレザーによる。パネルにはスミス製の6つのメーターとルーカス製のアンペアメーター(Sr.4からはボルトメーター)計7連がW型に配置されている。Sr.3までは結晶塗装のパネルにメッキリングのメーターが輝き、Sr.4からはメッキリングが廃止され、代わりに風合いのあるウッド製のパネルとなる。
スーパーレジェッラ工法による、細い鋼管にアルミパネルを手作業で溶接したボディは、22層もの塗装が施されている。大きなV8エンジンを収めたロングノーズと、古いイタリア車風のバックラインを持つが、ボディは大きめ。
スペック
- 車重:1,800kg
- 全長:4,590mm
- 全幅:1,830mm
- 全高:1,330mm
- 最低地上高:120mm
- ホイールベース:2,605mm
- トレッド:1,500mm/1,500mm
- エンジン:水冷90°V型8気筒DOHC
- 排気量:5,340cc
- 変速機:クライスラー製トークフライト3段自動変速(トルクコンバーター)またはZF製フルシンクロ5段手動変速
V8サルーン 1972年~1989年 1,984台
V8ヴァンテージ(ハイパワー) 1977年~1989年 361台
V8ヴォランテ(オープン) 1978年~1989年 849台
V8ヴァンテージ ヴォランテ 1987年~1990年 115台