チネチッタ (川崎市)
チネチッタ(CINECITTA')は、神奈川県川崎市川崎区小川町にある株式会社チネチッタが運営するシネマコンプレックスである。イタリアの首都・ローマにある同名の映画撮影所から命名。イタリア語の原義は映画都市。
「チッタ」はイタリア語で「町」を意味するcittà(英city)に由来。「CITTA」の後にアポストロフィが付いているのは元々は、アクセント付き文字が文字化けしやすい日本語環境に配慮したものである。だが、固有名詞の一部となっており、「CITTA'」で正式表記なのか、あくまで便宜的な表記なのかは曖昧である。
目次
概要
チネチッタを運営する株式会社チネチッタの親会社である株式会社チッタエンタテイメントの歴史は長く、1922年(大正11年)に東京日暮里で創業している[1]。創業当時の社名は美須興行、創業者は美須鐄(チッタエンタテイメントの代表取締役美須孝子の祖父にあたる)。のちにカワサキ・ミスと改称[2]。チネチッタは1936年頃に川崎映画街の最初の映画館として『川崎銀星座』を開業した[1]。その後、1939年までの間に川崎に同系列の映画館が6館開業し映画館街を形成した。第二次世界大戦中に空襲によりほぼ全ての映画館を焼失したが、戦後は川崎銀星座を手始めに映画館街を再建するとともに同一地区内にボウリング場なども建設し[1]、かつて松竹蒲田撮影所があった蒲田に同一資本が開設した映画館街とともに、それぞれミスタウン(美須の町)と呼ばれていた[3]。
1987年に、これまで別個の建物だった複数の映画館を1つに収容したビルを建設し、チネチッタと改称、現在のシネマコンプレックスに近いものとなった。チネチッタが開館した直後からそう呼ばれていたわけではないが、株式会社チッタエンタテイメントの公式サイトでは「日本初のシネマコンプレックス」としている[1][4]。
その後、関東地方では同様の施設が増加したため、対抗するためにボウリング場、旧クラブチッタ等を閉鎖し改築を開始。2002年11月にチネグランデを除くすべての映画館としての施設の改築を完了し、ラ チッタデッラ (LA CITTADELLA:イタリア語で砦) と改称して新装オープンした。翌年9月に、元の映画館が収容されていた建物は物販、サービス店舗が入居する建物への転用工事が完了し、現在に至る。ラ チッタデッラは、大小12のスクリーンと各種店舗を擁するマッジョーレ (MAGGIORE) 及び店舗のみが入居するビバーチェ (VIVACE) の2つの建物で構成されている。デザインコンセプトはイタリアのヒルタウンをイメージしたものであり、福岡・キャナルシティ博多や東京・汐留のデザインも担当したアメリカのJPI社がデザインを担当した[2]。映画館としての部分は、以前と同じくチネチッタと呼ばれているが、ラ チッタデッラ = チネチッタではなく、チネグランデを含む映画館としての部分のみを特にチネチッタと呼んでおり、名称の定義は意外に複雑である。旧クラブチッタ (CLUB CITTA') というライブハウスは1987年の改築時に完成したが、他の施設と同様に2002年1月に他の施設に先行して改築移転されている。
改築計画は当初3期を予定していた[2]。第1期がマッジョーレとクラブチッタの建設・移転、第2期がビバーチェの建設、第3期が店舗を有する高層マンションの建設となっており、六本木ヒルズやラゾーナ川崎プラザのような商業施設と居住区(レジデンス)が同居又は近隣に併設する大規模な複合施設を計画していた。しかし、2014年現在も第2期までで計画が止まっており第3期は着工されていない。
なお、川崎には他のシネマコンプレックスが進出しており、2003年9月12日に川崎DICEの開業と同時にTOHOシネマズ川崎(9スクリーン、全1,902席)が、2006年9月28日にはラゾーナ川崎プラザの開業と同時に109シネマズ川崎(10スクリーン、全1,957席)がオープンした。それにも関わらず、チネチッタは年間動員数、興業収入で、2003年・2004年・2005年・2006年の4年連続全国第1位となった。
全国1位の興行収入を記録する映画館であるために東京・大阪の映画館以外では珍しく舞台挨拶などのチネチッタ独自のイベントが催されることが多い。
スクリーン
マッジョーレ (MAGGIORE) 内のスクリーン
マッジョーレ (MAGGIORE) 内には12のスクリーンがあり、劇場出入口はチネ1~チネ7が2階、チネ8~チネ12が4階にある。チケットはマッジョーレ1階の窓口で購入する。各スクリーンの規模及び設備等の詳細は次のとおり。[5]
チネ1 (CINE1)
チネ2 (CINE2)
チネ3 (CINE3)
チネ4 (CINE4)
チネ5 (CINE5)
チネ6 (CINE6)
チネ7 (CINE7)
チネ8 (CINE8)
チネ9 (CINE9)
チネ10 (CINE10)
チネ11 (CINE11)
チネ12 (CINE12)
別館のスクリーン
マッジョーレとは別の建物にあるスクリーン。チネグランデがそれにあたる。
チネグランデ (CINE GRANDE)
チネチッタの全面改装前とほとんど変わっていない。入口にあるチケット売場ではチネグランデで上映される映画のチケットのみ購入でき、映画の日、年末年始、夏休みなど繁忙期のみ使用される。なお、マッジョーレ(MAGGIORE)1階の窓口でもチネグランデのチケットを購入できる。2003年頃には25階建のマンションへ建て替える計画があったが[2]、実現していない。2011年1月10日を以って閉鎖された。同年4月には解体され、現在はフットサルのコート及びクラブハウス、隣接するカフェとなっている。
詳しくはこちらを参照
チネBE (CINE BE)
川崎駅ビルである川崎BE(現在のアトレ川崎)にかつて存在していたスクリーン。駅と直結した環境にあるため利用者は多かった。しかし2003年ごろに現在の体制が完成したことにより営業終了。階段の踊り場に入り口が設けられていた。
付随設備・施設
映画館に付随する設備及び施設は次のとおり。ここでは、チネチッタが直接運営又は管理するものをとりあげている。
- チケット売場
- マッジョーレ1階にある。チネチッタの全劇場のチケットを購入できる。座席はすべて指定席(完全入れ替え制)で、窓口のスタッフに座席の希望を言える。前寄り、中程、後ろ寄り、通路寄り、列番号などおおまかな指定も可能であるし、他の観客にすでに指定されていなければ具体的に座席番号を指定することもできる。
- チネット自動発券機
- マッジョーレの1階のチケット売場の近くと2階の劇場入口のロビーにある。CINE-T (チネット) と呼ばれるサービスを利用してインターネットで事前購入(予約)したチケットを発券する装置。予約番号を入力するとチケット売場で渡されるチケットと同様のものが発券される。
- 飲食売店
- 各種ドリンク、ビール、ポップコーン、ホットドッグ、菓子類など映画館では定番の飲食物を販売する[6]。チョコレート・クロワッサンなど一部オリジナル・メニューもある。売店は全部で4つある。マッジョーレ内2階フロントロビー、2階場内ロビー、4階場内ロビー及びチネグランデ内である。なお、メニューはチネグランデの売店でのみ販売されていないものがあるが、他はいずれの売店でも同じである。
- チッタグッズショップ
- 各種映画のパンフレット、キャラクターグッズ、前売券、ポスター、ポストカード、DVD、CDなどを販売する。2階フロントロビー脇にある。
サービス
チネチッタが提供するサービスは次のとおり。
CINE-T(チネット)
インターネットで事前にチケットを購入できるサービス。決済完了後に発行される予約番号を現地に設置されている発券機に入力することで入場チケットを得ることができ、チケット売場に並ぶ必要がない。鑑賞を希望する日から2日前の0時から、上映開始の1時間前まで購入可能である[7]。以前は上映開始の2時間前までだった。映画の日、レディスデー、レイトショー、ナイトショー、学割、シニアなどの各種割引料金での購入も可能である。そのため、混雑が予想される映画の日、連休、話題作の公開初日などに有効である。ただし、学割などは入場前に身分証明書の提示を求められる。チケット代金はクレジットカードによる決済であるため、クレジットカードが必須である。手数料は無料。なお、このサービスを利用する場合には、前売券を使用できない。
TAKE5(テイクファイブ)
チネチッタのポイントカードである。映画を1本鑑賞するたびに1ポイントたまり、ポイントがたまると映画を1本無料で鑑賞できる。ただし、日曜、祝祭日、先行ロードショー等の特別興行時にはポイントを使用して鑑賞できない。以前はポイントがたまると無料招待券を発行してもらい、発行翌日以降に招待券で鑑賞する形をとっていたが、現在ではポイントカードを提示してそのまま鑑賞できる。TAKE1からTAKE5までの5ステージあり、TAKE1 TAKE2及びTAKE3では5ポイントで1本、TAKE4及びTAKE5では4ポイントで1本無料になる。TAKE5まですべてのポイントを得るためには、無料で鑑賞した分を除いて23本の映画を鑑賞する必要がある。有効期限は最初のポイントを得てから1年間である。通常料金による鑑賞のほかに、レイトショー、ナイトショー、前売券による鑑賞などでもポイントを得られるため、効率的にポイントをためることも可能である。ただし、映画の日又はレディスデーによる割引を受けているときにはポイントは付与されない。
TAKE5を使用した場合に、各ステージで無料鑑賞分を含めると映画1本あたりの実質的な鑑賞料がいくらになるかを次の表にまとめた。この表では、実費鑑賞のときは常に同じ方法で鑑賞したものとし、無料鑑賞分もその鑑賞方法のチケットと同等の価値があるものとして計算した(招待券(ポイント)は昼間でも使用できるので1,800円分の価値があるとも言えるが、実質鑑賞料を引き下げて数字の魔術的な誤解を招くのは消費者の立場から適切ではないのでその仮定は排した)。この表から、常にレイトショーで鑑賞した場合に年間19本以上鑑賞する場合には、映画の日の料金(1,000円)を下回ることがわかる。すなわち、常に夜間のみ映画を鑑賞し、年間19本以上鑑賞する人は映画の日を利用するとかえって料金が高くなると言える(しかも映画の日はポイントがつかない)。
TAKE1 | TAKE2 | TAKE3 | TAKE4 | TAKE5 | |
---|---|---|---|---|---|
鑑賞本数(無料分含む) | 6 | 12 | 18 | 23 | 28 |
実費鑑賞本数 | 5 | 10 | 15 | 19 | 23 |
通常料金(1,800円) | 1,500 | 1,500 | 1,500 | 1,487 | 1,479 |
前売券(1,300円) | 1,083 | 1,083 | 1,083 | 1,074 | 1,068 |
レイトショー(1,200円) | 1,000 | 1,000 | 1,000 | 991 | 986 |
映画半券サービス
映画を鑑賞したチケットの半券を利用してラ・チッタデッラにある各種店舗で優待を受けられるサービス。映画を鑑賞する前でも利用できる。映画鑑賞時に切り取られる方とは反対側についている黒い部分を店員に切り取ってもらって利用する。優待の内容は各店舗で異なるが、代金の割引がもっとも多く、飲食店ではドリンク1杯無料など。以前は映画を鑑賞したその日のうちに使わないとその半券でサービスを受けることはできなくなってしまっていた。また、利用したくてもレイトショーやナイトショーを鑑賞する場合は店舗がほとんど閉店してしまっていて利用の機会が少なくなることから、当日使用の制限は廃止され、半券サービス用の黒い部分が切り取られていなければいつでも利用できるようになった。ただし複数の半券を同時に使用することはできない。
チネピット(駐車場)
チネチッタが提供する駐車場。立体駐車場が1つ、平面駐車場が2つある。映画を1本鑑賞すると3時間無料になる。また、各種店舗を利用した場合もその利用料金に応じて駐車料が割引になる(最大5時間)(一部例外あり)。
- チネピット (CINEPIT) (立体)
- 収容台数:320台
- 営業時間:平日・日祝日 AM 8:30~AM 0:30 土曜オールナイト AM 5:00迄
- チネピット (CINEPIT) (平面)
- 収容台数:25台
- 営業時間:24時間
- チネピット (CINEPIT2) (平面)
- 収容台数:40台
- 営業時間:24時間
ラ・チッタデッラ・シンフォニー
マッジョーレ入口前にある噴水によるショー。円形に配置された無数にある噴出口から最大で高さ数mに水を吹き出し、名作映画のテーマ曲と色とりどりの照明とともに多彩な水の演技を見せる。毎正時と毎時30分ごろに実施され、実演数分前になると日本語と英語で予告が放送される。強風で噴水の水が大きく飛び散る場合は実演を見送ることがあるが、通常時も実演前に「風で水が飛び散ることがある」という注意が放送される。噴水は平面的で仕切りも凹凸もなく、普段水が張られていることもないため、噴水の直上を即席のステージにしてライブなどを上演することもある。
飲食店
- スターバックスコーヒー
- その他数十店舗が入居。
関連施設
脚注
関連項目
外部リンク
- LA CITTADELLA公式サイト
- CINECITTA'公式サイト
- チネチッタ - 「港町キネマ通り」サイト内(2001年1月取材のもの)
- 川崎の「チネチッタ」 観客数・興行収入で3年連続日本一 - YOMIURI ON LINE「ジブリをいっぱい」(2006年2月7日)