カルガモ
カルガモ(軽鴨[1]、Anas poecilorhyncha)は、鳥綱カモ目カモ科マガモ属に分類される鳥類。
分布
- A. p. haringtoni ビルマカルガモ
- 中華人民共和国(雲南省)、ベトナム、ミャンマー、ラオス[2][a 1]
- A. p. poecilorhyncha アカボシカルガモ
- インド、スリランカ[3][4]。
- A. p. zonorhyncha カルガモ
- 大韓民国、中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、日本、ロシア東部[2]
- 日本では主に本州以南に周年生息(留鳥)する[4][5]。和名は「軽の池」(奈良県橿原市大軽周辺とする説もあり)で夏季も含めて見られたカモであったことに由来すると考えられている[1]。
形態
全長53-63センチメートル[4]。翼開長83-91センチメートル[3]。全身の羽衣は黒褐色[3]。
- A. p. haringtoni ビルマカルガモ
- 翼長オス24.5-26.8センチメートル、メス23.7-25.5センチメートル[2]。
- 上嘴基部の赤い隆起は小型、もしくはない[2]。
- A. p. poecilorhyncha アカボシカルガモ
- 翼長オス26-28センチメートル、メス25-26.8センチメートル[2]。次列風切の光沢は緑紫色で、次列風切や三列風切外縁(羽縁)の白色部が明瞭[2]。
- オスは上嘴基部に赤い隆起がある[2]。
- A. p. zonorhyncha カルガモ
- 翼長オス25.4-27.6センチメートル、メス24.3-26センチメートル[2]。次列風切の光沢は青紫色で、次列風切や三列風切羽縁の白色部が小型で不明瞭[2]。
- 少なくとも亜種カルガモはオスの腹部の羽衣が濃褐色で、羽毛外縁(羽縁)の淡色部が小型になり胸部との差異が明瞭[6]。尾羽基部を被う羽毛(上尾筒、下尾筒)が光沢のある黒[6]。メスは胸部と腹部の羽衣の差異が不明瞭で、上尾筒や下尾筒が黒褐色で羽縁が淡色だったり淡色の斑紋が入る[6]。
分類
3亜種に分かれるが、マミジロカルガモを本種に含める説もあった[4]。
- Anas poecilorhyncha haringtoni ビルマカルガモ
- Anas poecilorhyncha poecilorhyncha Forster, 1781 アカボシカルガモ
- Anas poecilorhyncha zonorhyncha カルガモ
生態
湖沼、河川などに生息し、冬季になると海洋にも生息する[4][5]。渡りは行わないが、北部個体群は冬季になると南下する[2][4]。
食性は植物食傾向の強い雑食で、種子、水生植物、昆虫などを食べる[5]。狩猟で撃ち落とされた本種で、3.2-6.6センチメートルのオイカワを30尾食べていた例もある[7]。水面でも陸上でも採食を行う[4]。
繁殖形態は卵生。亜種カルガモでは集団繁殖地(コロニー)を形成することもある[2]。水辺に巣を作る[2][4]。基亜種は7-9個、亜種カルガモは10-12個の卵を産む[2]。亜種カルガモの抱卵期間は26-28日[2]。少なくとも基亜種においてはオスも育雛を行った例がある[2]。雛は孵化してから2か月で飛翔できるようになる[4]。
繁殖地が高密度になると、雌が同種他個体の子を殺す(子殺し)ことが報告されている[8]。このときには、他種(オカヨシガモ)の雛も殺している[8]。親が自分の子を殺す場合もあるテンプレート:要出典。
繁殖期前期(交尾から栄巣地の探索程度まで)はつがいで行動するが、メスが抱卵・育雛を行っている間、オスは概ねオスだけの群れを形成する。繁殖期が終わると、まずメス親とヒナとの関係が消失する。その後は不透明であるが、越冬期前には、雌雄で構成される大群を形成する。
人間との関係
本種は雑食性の性質が強く、植物質のエサ以外にタニシなども好んで食べ肉に臭みが出るので日本ではマガモのように賞味される機会は少ないものの、マガモより食味が極端に落ちるようなことはなく、植物食の傾向が強い時期の肉は、マガモと並んでうまいとされる。
また日本では1984年以降、数年間に渡って東京都千代田区大手町にある三井物産のプラザ池から皇居和田倉堀へ引っ越す本種の親子をメディアが取り上げ、ブームとなったことがある。2013年現在[9]においても、同社では同池に営巣する本種を観察しそれを記録するためのカルガモレディなる女性を雇用している[10]。
日本のカルガモはアヒルとの種間雑種が存在しているとされる[11]。アヒルの原種はマガモであり、3代も野生で放置されると飛翔するほどになるが、日本のカルガモもアヒルと交雑することで、元々は狩猟の対象であり、ヒトを恐れていたはずのカルガモも前述のようなヒトを恐れない行動をとるようになっていったと考えられている。照明の多い都市部では夜間に飛翔する個体もある。
外形に関する遺伝形質はカルガモの方が強いため、見た目はカルガモでも性格はアヒルに近いものが現れたと分析される[12]。
1994年(平成6年)1月13日から2014年(平成26年)3月31日まで販売された90円普通切手の意匠になった[13]。
参考文献
関連項目
外部リンク
テンプレート:Sister テンプレート:Commons&cat
テンプレート:Reflist- ↑ 1.0 1.1 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社、2008年、109頁。
- ↑ 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 2.13 2.14 2.15 黒田長久、森岡弘之監修 『世界の動物 分類と飼育 (ガンカモ目)』、財団法人東京動物園協会、1980年、58-60頁。
- ↑ 3.0 3.1 3.2 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版、2000年、118頁。
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 4.7 4.8 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥類I』、平凡社、1986年、180頁。
- ↑ 5.0 5.1 5.2 環境庁 『日本産鳥類の繁殖分布』、大蔵省印刷局、1981年。
- ↑ 6.0 6.1 6.2 今村知子、杉森文夫 「今村知子、杉森 文夫:羽色に基づく繁殖期のカルガモの雌雄判別 山階鳥類研究所研究報告 Vol.21 (1989) No.2 P247-252
- ↑ 水野千代 「カルガモの魚類捕食に関する事例報告」『Strix』vol.24、日本野鳥の会、2006年、201-203頁
- ↑ 8.0 8.1 テンプレート:Cite journal
- ↑ 5年ぶりのヒナ誕生を確認 三井物産本店のカルガモ - 朝日新聞、2014年5月25日閲覧
- ↑ 「カルガモ日記」三井物産
- ↑ この日本のアヒルは一時期、夜店で売られていたものが野生化したと考えられる。
- ↑ 藤本和典著、『生物いまどき進化論』、技術評論社、2009年12月10日初版第1刷発行、ISBN 9784774140568
- ↑ テンプレート:Cite web (ただし、発売開始の出典とはならない。)
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