ジーリー

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ジーリー (テンプレート:En) は、ハードSF作家スティーヴン・バクスターSF作品のシリーズ名であると同時に、作品に登場する最高の文明を誇る超種族の名でもある。

作中での描写

ジーリーはこの宇宙が誕生してから最初に発生した知性体であり、バリオン物質(陽子や中性子などから成る通常物質)世界の王として君臨している。<ジーリー・クロニクル>と呼ばれる、『天の筏』から始まる一連の作品群では、人類文明が宇宙へと進出して様々な異星種族から支配を受けつつも銀河有数の文明へと躍進していき、ついにはジーリーに次ぐ高度な文明を築いてジーリーとの対決に至るが、結局は敗北していくという命運が宇宙の開闢から終末までの遠大な年代記として叙述されている。

ジーリーは人類やその他の文明など到底及びもつかない超技術を有しており、シリーズ中における他の知的生命(人類を含む)は、ジーリー種族が宇宙のあちこちに残した遺産を利用して、時にはその技術を盗みつつ、覇権抗争に明け暮れていた。しかし、ジーリーはそうした“下等な”種族の文明抗争など眼中になく、宇宙開闢からのべ数百億年にわたって、バリオン物質世界を崩壊させうる文字通り不倶戴天の宿敵とその存在をかけた闘争を繰り広げていた。

宿敵とは、バリオン物質と背中合わせに存在する暗黒物質世界の覇権者たる、光子超対称性粒子フォティーノを主体としたフォティーノ・バードである。ジーリーはフォティーノ生命体がこの宇宙の寿命を短縮させていることに気付いていた。普通なら、まだ数十億年以上燃え続けるはずの恒星が、ほんの数百万年程度で燃え尽きてしまい、宇宙全体の恒星が死滅の危機に瀕していたのである。フォティーノ・バードは生存のために冷えて安定した重力井戸を必要としており、恒星進化に伴う巨星化や超新星化による重力場変動は望ましいものではなかった。彼らはそのために恒星内部の核融合反応を阻害していたのだ。

ジーリーは対抗として銀河それ自体を投射する銀河ミサイルすら繰り出していた。ところが、フォティーノ・バードはバリオン物質をベースとした知性体ジーリーとは重力以外にほとんど相互作用することなく、ジーリーの超技術をもってしても正面からの対抗は不可能であった。バリオン物質世界の崩壊が避けられない運命であることを悟ったジーリーは、タイムシップを開発して五十億年前の過去へと戻り、自らの進化過程に介入して壮大な事業に耐えられるように改造した。その事業とはこの宇宙の相転移の際に線状欠陥として取り残された宇宙ひもを組み合わせた直径一千万光年の「リング」を構築し、巨大なカーの特異点を発生させて、フォティーノ・バードに脅かされることのない別の宇宙へと脱出を図ることである。

このリングはあまりにも莫大な質量から、周囲の銀河を引き込んで物質を吸収していた。人間が文明を持ってから宇宙を観測した際に発見した、銀河を吸い寄せるグレート・アトラクターの正体はこれである。フォティーノ・バードの存在を知らない人類勢力はジーリーと敵対し、その目的もわからずリングを破壊しようと中性子星を砲弾として投射したが果たせず、逆にジーリーに滅ぼされてしまった。このリングはジーリーらの脱出後にフォティーノ・バードに破壊される。やがてこのバリオン物質世界では星の輝きも消え、ひたすらに冷たく空虚な空間が広がるのみとなった。

ジーリー・クロニクル作品リスト

外部リンク