積分方程式
積分方程式(せきぶんほうていしき、Integral equation)は、数学において、未知の関数が積分の中に現れるような方程式である。積分方程式と微分方程式には密接な関係があり、そのどちらでも問題を定式化することができる場合もある。
積分方程式は次の3種類の分類方法がある。この分類によれば、8種類の積分方程式が存在する。
- 積分の上限および下限が固定の場合、フレドホルム積分方程式と呼ばれる。また、積分の上限・下限の片方が変数の場合、ヴォルテラ積分方程式と呼ばれる。
- 未知の関数が積分の中にのみ現れる場合、第一種積分方程式と呼ばれ、未知の関数が積分の中にも外にも現れる場合、第二種積分方程式と呼ばれる。
- 既知の関数 f (下記参照)が恒等的に 0 の場合、同次積分方程式と呼ばれ、f が 0 でない場合、非同次積分方程式と呼ばれる。
4種類の積分方程式(同次・非同次方程式をまとめた)の例として以下のように書ける。 ただし φ は未知の関数、f は既知の関数、K は既知の2変数関数で積分核と呼ばれる。λ は未知の係数で、線型代数学における固有値と同じ役割をする。
- 第一種フレドホルム積分方程式:
- <math> f(x) = \int_a^b K(x,t)\,\phi(t)\,dt </math>
- 第二種フレドホルム積分方程式:
- <math> \phi(x) = f(x) + \lambda \int_a^b K(x,t)\,\phi(t)\,dt </math>
- 第一種ヴォルテラ積分方程式:
- <math> f(x) = \int_a^x K(x,t)\,\phi(t)\,dt </math>
- 第二種ヴォルテラ積分方程式:
- <math> \phi(x) = f(x) + \lambda \int_a^x K(x,t)\,\phi(t)\,dt </math>
積分方程式は多くの応用において重要である。積分方程式に出会う問題としては、弦や膜、棒における放射エネルギー変換や振動などが挙げられる。振動問題は微分方程式によって解かれることもある。
固有値問題の一般化としての積分方程式
ある種の斉次線型積分方程式は、固有値問題の連続極限とみなすことができる。固有値問題は、<math>\mathbf{M}</math> を行列、<math>\mathbf{v}</math> を固有ベクトル、<math>\lambda</math> を対応する固有値として、
- <math> \sum _j M_{i,j} v_j = \lambda v_i^{}</math>
と書くことができる。
添字 <math>i</math>、<math>j</math> を連続変数 <math>x</math>、<math>y</math> で置き換えて連続極限を取ると、<math>j</math> に関する総和は <math>y</math> に関する積分、行列 <math>M_{i,j}</math> とベクトル <math>v_i</math> はそれぞれ積分核 <math>K(x,y)</math> と固有関数 <math>\varphi(y)</math> に置き換えられて、線型斉次第二種フレドホルム積分方程式
- <math> \int \mathrm{d}y\, K(x,y)\varphi(y) = \lambda \varphi(x)</math>
が得られる。
一般に、<math>K(x,y)</math> は超関数であってもよい。超関数 <math>K</math> が <math>x=y</math> でのみ台 (support) を持つ場合は、微分方程式の固有値問題に帰着される。
参考文献
- 日本数学会 『岩波数学辞典(第3版)』 岩波書店、1985年。ISBN 4000800167
- 吉田耕作『積分方程式論』岩波全書、1950。ISBN 4000212834